ゲーム作品において、2010年の『ソニックカラーズ』から2017年の『ソニックフォース』まで、ソニックの性格がアドベンチャー時代のころと変わり、アメリカンな性格になったことがあります。
その原因を脚本を担当したケン・ポンタック(ケンポン)氏にあるとし、
- 「ソニック知らん人に脚本書かせるな」
- 「ケンポンを採用するのはやめろ」
- 「ケンポンの書くソニックは嫌い」
- 「ケンポン脚本は本当にひどい」
日本のみならず、アドベンチャー系列が好きな一部海外ファンからも批難され続けてきました。
しかし、ものづくりの観点から言えば、
ケンポンソニック問題でケンポン氏を責めるのは大きな間違い。
ここを伝えられればと思いますし、2024年に当事者のひとりであるウォーレン・グラフ氏から、ケンポンソニックにはセガとソニックチームの闇深い、大人の事情があったことが告発されました。
この記事はケンポンソニックを擁護(ようご)したいとかそういうことではなく、
CHECK!
脚本の話と脚本家の話は全く別物であることを理解すべき。という点を、今回の告発をきっかけにしっかり理解してほしいなと思います。
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ケンポンソニックとは
ケンポンソニックは、2010年のカラーズから2017年のフォースまであったアメリカンな性格のソニックで、これらの脚本を担当したのはケンポン氏であったため、そのように言われています。
実際はケンポン氏とウォーレン氏の共同執筆。日本だとケンポン氏の名前が挙がることが多い。
正確には2019年のチームソニックレーシングまでですが、日本語版はアドベンチャー寄りな性格になっています。
精神年齢が高いアドベンチャー系列のソニックとは異なり、とにかくコミカルかつ軽率な行動でミスをするなど、年相応な性格になっています。
このように性格の落差が激しいため、特にアドベンチャー系列のソニックが好きな人からはマイナスに見られていました。
カラーズの終盤でテイルスをエレベーターに入らせるシーンはカッコいいですけどね。
ある意味先祖返りで、昔のカートゥーン作品はケンポンソニックに近い。というよりそれ以上。
ケンポン氏はソニックをよく知らない人であり、そういった事情をインタビューで語ってしまったこともあって、ますます火にくべる薪になったのは否めないですね。
ソニックの性格が変わった理由
セガとソニチの
闇深い大人の事情
ここからが本題で、なぜソニックの性格が変わってケンポンソニックになったのかは、カラーズ発表時の飯塚氏のインタビューや、2024年のウォーレン氏の告発から把握することができます。
「『マリオ&ソニック』が成功して、潜在的だった若いユーザー層を獲得することができました」
「しかし若いユーザーだけではなく、それも含めたあらゆる層にアプローチしていきたいと考えています」
(中略)
「(アドベンチャー系列は)暗くシリアスな雰囲気が多かったですが、私が思うソニックはのんびり・楽しい雰囲気という認識です。マリオ&ソニックへの反応でそれを再認識しました」(意訳・要約)
Sonic Colours Producer, Takashi Iizuka – Interview|SPOnG.com
また、本作では『ソニック』シリーズ初となる、アメリカ人によるシナリオライターを起用されているとのこと。これにより、アメリカ人にもユニークに感じられるストーリー展開になっている。
『ソニック フリーライダーズ』と『ソニック カラーズ』に見る、世界的人気シリーズの可能性はさらに広がる【E3 2010】|ファミ通.com
Correction, Ken and I wrote a million drafts for each game. Each draft got a ton of character and story notes from Sega/Sonic Team. Every word we wrote, every character trait, and every story point was given to us by them or based on the Sonic Game Bible. We had very little say. https://t.co/HxpTofK4eo
— Warren Graff (@warrengraff) January 13, 2024
これらの情報から要約すると、
CHECK!
『マリオ&ソニック』の成功から、若い世代やファミリー層にソニックをアピールする路線に変更したため。なお脚本家に発言権はほとんどなかった。という、大人の世界の闇深い事情を察することができます。
ワールドアドベンチャーからフォースまでシンプルな物語だったのは、アドベンチャー系列で世界観を複雑化した(=初心者・新規が入りにくい)ためで、そう考えればスジはとおりますよね。
明るくコミカルな世界観も、「ソニックって暗くシリアスな世界より、楽しくのんびりした世界じゃないの?」という考えがあったこともわかります。
ビジネス展開の弊害
こういったビジネス重視の行動でファンからひんしゅくを買った例は他にもあり、
- 【ボーカル曲禁止令】2013年から2017年までボーカル曲が廃止される。
- 【英語の削除】本編ソニック(フォース)から英語が消えて架空文字になる。
上記もビジネス展開から起きた変更なんですよね。
ボーカル曲を廃止した時期があるのは、海外スタッフの音楽の価値観が各国で違うことへの懸念、本編(ソニックチーム関与)作品で架空文字になったのも、似たような理由と考えられます。
なんでボーカル曲を使わなくなったんだ!
英語表記は初代から続くソニックシリーズの伝統だろ!
その結果、ファンからこういった声が飛んでしまうことになるんですね。
ボーカル曲禁止令は日本ソニックチームのインタビューで明かされていますし、フォースから中国市場の展開もスタートしていますから、なおさらグローバルに気を遣っている感じでしょう。
昔のポケモンはゲーム・アニメなどで日本語・英語があったのに、グローバル展開で架空文字に変わったのと同じだね。
結局は海外スタッフの行き過ぎた配慮と思い直してボーカル曲解禁、英語も本編や完全新作でなければ使われています。
『ソニックフォース』完成記念インタビュー 中村Pらに聞く“王道ハイスピードアクション”を求めての道のり|ファミ通.com
マリオ&ソニックの存在
『マリオ&ソニック AT 北京オリンピック』は全世界1,000万本以上売れたソフトで、その流れでマリオが好きな層をソニックにも取り入れたいと思うのは、ビジネスだと自然な流れでしょう。
だからカラーズから、ソニックをマリオのように誰でも受け入れやすくしたということですね。それを決めたのはセガとソニックチームで、脚本家に発言権はほぼありませんでした。
これはつまり、たとえカラーズの脚本をアドベンチャー2担当の前川司郎氏や、フロンティアの話を執筆したイアン・フリン氏にしようが、ケンポンソニック化しただろうということです。
ファミリー向けにしたい → その脚本をよく執筆している人を探す → ケンポン氏とウォーレン氏を採用……だろうね。
チームソニックレーシングやフロンティアからアドベンチャー系列のソニックに戻したのは、クラシックソニックの復活でファミリー路線をそちらに移して住み分けをした判断だと思います。
『ソニックドリームチーム』みたいなファミリー向け作品もありますから、モダンソニックのすべてがそうなったとは断言できないにしろ、「住み分けを明確にした」のは英断ですね。
そういった意味で考えると、クラシックソニックシリーズはアドベンチャー好きの人たちからすると救世主かも。
脚本と脚本家の話は違う
混同するから
的はずれになる
ここまで読んでもらえれば、脚本と脚本家の話は全く別問題であることが理解できると思います。百歩ゆずって同人ゲーム作品のシナリオに苦言しているならわかるんですけどね。
商業作品のゲームというのは、脚本家が独断でシナリオを作ることはありえません。必ずプロデューサーや監修者が脚本に目をとおす品質チェックがあります。
今回のケンポンソニックは脚本家のせいではなかった問題は、ウォーレン氏の告発で明らかになったものの、ものづくりの仕組みを把握していれば告発がたとえなかったとしても、
この脚本でOKとったんだな……なぜプロデューサーや監修者は問題ないと判断したんだろう?
このように考えられますし、探究心の強い人ならインタビューも探す意識に持っていけます。
自分はゲーム業界関係者でも精通しているわけでもありません。でもゲーム会社は世の中の会社と仕組みは変わらないわけですから、会社に勤めていれば自然に把握できるという認識です。
最後に:背景を知る努力
情報からひも解いた
推測話
以上、なぜケンポンソニックに変わったのか、脚本と脚本家の話は別物であり、脚本家を叩くのは間違いだということを解説しました。
ケンポンソニックになったのは言葉が悪いながら、セガとソニックチームが『マリオ&ソニック』の成功に味をしめ、マリオのようなファミリー路線へ変更したからと考えられます。
もちろんセガやソニックチームが上記を公式発表しているわけではありません。飯塚氏の開発者インタビューや、告発の内容から推測した話であることはご留意ください。
ただウォーレン氏の書き込みが海外で相当話題になったのに、セガ公式から削除を申請されないし弁解もないところを見るに、全くの的はずれなことを言っているわけではないと思うんですね。
一般的な企業なら、マイナスイメージになる企業告発系は何かしら策を講じるものです。
それもせず静観するのは、セガ広報のリテラシーが低いか、その事実を認めているのか、一個人の意見として気にしない強者の風格かですね。
それでも「セガやソニックチームは素晴らしかった」と言えるってスゴい。予防線を張っているだけかもしれないけど。
まるでセガやソニックチームを悪者にするかのように聞こえるかもしれませんがそうではありません。ビジネス的な観点で考えれば、ファミリー路線は考えられたひとつの選択肢です。
真摯(しんし)に反省してファミリー路線をクラシックソニックへゆずって、ソニックの住み分けをおこなったのは素晴らしい対応だと思います。
失敗することよりも、失敗から何を学んで、どう活かすかを考えることが大切。住み分けは英断。
ファミリー向けに対する価値観
『Sonic Underground』など初期カートゥーン作品のソニックなら、ケンポンソニックが可愛く見えるソニックはありますよね。
— Out of Context Sonic Underground (@NoContextSonUnd) May 8, 2020
アメリカンで軽率な行動をするソニックはケンポンソニック特有のものではなく、過去にもそういったソニックがいたことがわかります。
2024年現在の3Dアニメ(トゥーン・プライム)でも同様の性格は見られますから、海外のファミリー向けに対する価値観の違いでしょう。
アメコミヒーロー作品によくある、「ヒーローは決して完璧超人じゃないし、失敗から学ぶ大切さ」を説くのと同じかも。
ソニックは作品で性格が変わる
一方でソニックは「生意気だが優しい」の軸にして性格が作品ごとで変わります。ケンポンソニックもその軸はしっかり守っているので、
さまざまなバットマンやスパイダーマンがいるように、「数ある世界」のソニックという認識。ケンポンソニックが好きな人もいるだろうからね。
というのが個人的な見解になります。
フロンティアは「ケンポンソニック作品も正史」なものの、フォースは英語がない世界という公式発言と矛盾しますから、似た出来事はあったが完全にはつながっていないと考えていますね。
脚本家のせいは大きな間違い
同人作品ではないのだから、脚本家が勝手な裁量で性格設定をしたというのはありえません。
必ずプロデューサーや監修者がチェックをするもので、セガのような大企業、しかもソニックはセガのマスコットキャラクター(=セガの顔)なんですからなおさらです。
自分もケンポンソニックには思うところはありますけれど、この記事や過去レビューを見ればわかるように、ケンポンソニックに苦言してもケンポン氏は否定してません。
レビューでは概要の説明が必要な場合を除いて、『ケンポンソニック』って表現を意図的に避けていたからね。
別にウォーレン氏の告発がなくても、ものづくりの仕組みを知っていれば想像できることですからね。今回の告発で彼らに謝罪する海外ファンは多く、そこは救いかなという感じです。
ソニックを語るときのみならず、物事を述べる際は背景や状況を確認することは大切という良い教訓ですし、考えるきっかけになれば幸いです。
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