
悪質クレーマーや迷惑行為、詐欺やあおり運転、問題発言、腐敗した組織の不祥事などが報道されると、
- 「許せない」
- 「親の顔が見たい」
- 「被害者が可哀想だ」
と、大多数が思うでしょう。これは自分もそうですし、人としてあるべき善い感情です。
しかしながらネット・SNSを中心に、そこから実名や住所・会社など、個人情報を特定して晒(さら)し、拡散・炎上させる制裁行為があります。
いわゆる『ネット私刑(ネットリンチ)』と呼ばれる行動で、実名情報を晒す場合は『実名晒し』、これらの個人情報特定を行う人たちを『特定班』と呼びますね。
また最近ではニュース関連を検索すると、
- 〇〇炎上の犯人は誰?
- 〇〇事件の容疑者を特定!
- 〇〇の本名、顔写真、経歴は?
- 〇〇の素性がヤバイ!
- 〇〇の問題行動や炎上まとめ
と、このような事件やゴシップの内容を我先にと話題にしたり、肯定するような見出しのブログ(トレンドブログ・まとめコピペブログ)も珍しくなくなりました。
しかし、ネット私刑(私刑行為)というのは、法律的にも本質としても大変問題が多い行動です。
- 「ネット私刑は何が問題なのか」
- 「ネット私刑の本質はなにか」
このあたりを今一度再考するきっかけになれば幸いですし、当記事は該当者を叩くことが目的ではなく、客観的観点から問題を理解して学ぶことにあります。
そこを前提としてお読みいただけますと幸いです。
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法的観点からの私刑行為


私刑は法律で
定義されている
まず結論から申し上げると、私刑行為自体が違憲(いけん)行為とされます。
【日本国憲法第三十一条】何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。(原文ママ)
e-Gov法令検索
個人情報や実名を勝手に晒すのは「法に反する問題行為」であり、必要・賛成という人は、「問題・犯罪には制裁の名目で法を犯してもいい」と、おかしなことを言っている形になります。
相手がたとえ犯罪者であっても、個人なら『侮辱罪』や『威力業務妨害罪』『名誉・信用毀損(きそん)罪』などが適用されることもあります。
特定班・賛成派の主張
2015年には日本人の6割は私刑行為に理解を示すデータがあるように、私刑行為を支持したり、特定班をやる人たちの主張は、
- 「みせしめや犯罪抑止力として、特定や私刑の制裁は必要」
- 「警察や司法が動かないからだ」
- 「国民の知る権利を阻害しているから」
- 「だったらぼかしや黒塗りをするな」
- 「マスゴミ(マスコミ)・週刊誌だって同じことをしている」
このような反論が多々見られます。
「知ること」と「制裁・叩き行為」は別問題ですし、私刑が許されるのはフィクションの世界だけです。

晒すことで犯罪抑止力になる統計データは見たことがなく、仮に警察・司法やマスコミ・週刊誌などに問題があるにしても、「だから代行していい、同じようにやっても問題ない」は子供の発想です。
ネット私刑の本質は負の連鎖


向ける感情・対象が
違うだけ
ネット私刑を肯定しようと、理論武装しようが大義名分を掲げようが、
- 「クズクレーマーは死ね!」
- 「犯罪者のクズは死刑にしろ」
- 「叩かれて当然でしょ」
- 「自業自得だろ」
- 「特定して追い詰めろ!」
向ける感情・対象が違うだけで、本質は悪質なバッシング・誹謗(ひぼう)中傷の正当化であり、負の連鎖にしかなっていません。
相手の疑惑・非には徹底的に晒して叩き、やりすぎたり間違っていたら知らんぷりって、それこそバッシングや誹謗中傷をする人と同じ思考状態です。
これは「ネット私刑をする・支持する連中を許さない」と彼らを晒す人も同じ。やっていることは同じなのに、本質を見ないから同類になっている。

仮に根拠があったとしても、人格否定や法を経ていない情報を晒して叩けば、どのような相手でも関係なく、それは悪質なヘイト行為ですし、相手を利用して正当化しているだけなんですね。
合法だったら正義とは主張しませんけど、かといってそのようなモラルの低い行為は慎(つつし)まなければなりません。
自己矛盾になっている

バッシングや誹謗中傷はダメ。でも私刑などの制裁は許される。
こう思う人、支持する人、そういった風潮に疑念や違和感も抱かない人が、あまりにも多いんですね。
正しいと思うのであれば、なぜ法のプロセスを経ないで個人情報を勝手に探して公開したり、当事者に攻撃的な言葉や行動を投げつける必要があるでしょうか。
ここをしっかりとした、納得できるエビデンス(論拠)で説明している人は見たことがないですし、本質は変わらない部分を少し考えればわかるように、これって自己矛盾しています。
要は「他人に厳しく自分に甘い」ということであり、世の中からバッシングや誹謗中傷が一向になくならないのは、そういうところだろうと実感させられます。
有名人の一般人晒し上げ問題


晒し上げも
ネット私刑と同じ
SNSでは、有名人が一般人の書き込みを引用(リツイート)して晒し上げたり、オープンに返信して暴言を吐くことがあり、こちらも本質はネット私刑と同じです。
- 【某歌手】盗撮した相手のアカウントを名指しでツイートし、拡散させる。
- 【某お笑い芸人】一般人が相方の苦言を書いたので、煽(あお)って応酬。
- 【某歌手】ツイートの一部分だけに反応し、ファンたちが当事者へ誹謗中傷。
- 【某元子役】上記のツイートを見て、当事者への誹謗中傷に持論展開して加担する。
これって、「影響力とファンを悪用し、バッシングや誹謗中傷で報復したり、罪のない相手でも晒して集団でリンチ」をしているんですね。
いじめグループのリーダーが、取り巻きを使って攻撃させるようなものですし、もし問題行為なら晒したり攻撃するのではなく、水面下で対応したあとに報告するのが社会人です。
自分を棚に上げる人の言葉は響かない
当人たちの「有名人だって人権はあるし、自分の身を守っている」の主張は、確かにバッシングや誹謗中傷に声を上げる自体は間違っておらず、こちらも「有名税」なんて言葉は好きではありません。
しかし、このような有名人の言動・行動を見ると、
- 配慮に欠く発言や晒し上げで、信じたファンが一般人を攻撃する。
- 自分の言動やファンの暴走に対し、適切な対応をしない。
- それがきっかけで有名人が炎上する。
- 「私への誹謗中傷には法的処置をとります! 思いやりを持って!」
バッシング・誹謗中傷に立ち向かう姿勢は立派でも、その前に起きた行動・リスクを考えられない、リテラシーの低さを反省しないんですね。
「有名人も人間だ。誹謗中傷・バッシングを許さない」の前に、まず自分の行動が火種になっているか、思慮が足りないから起きたのか、ここを自己分析・反省するのが先です。

リテラシーの低い人がネット・SNSをやる恐ろしさ
このように、ネット私刑は一般人だけの問題ではなく、有名人もやらかしているケースがままあります。
CHECK!
リテラシーの低い人は想像力と論理的思考力が乏しいため、私刑を私刑、誹謗中傷に誹謗中傷で返すなど、無自覚に自分を棚に上げた行動をする傾向が強い。というか、一般人も有名人も関係なく、正しい批判ができない、言動に責任を持てないといったリテラシーの低い人は、ネット・SNSへ安易に手を出してはいけないと思うんですよね。
ネット・SNSは包丁と同じです。間違った使いかたをすれば人を傷つけます。

リテラシーの低い人はこのように、自分が正義でなんでもかんでも誰かや社会、国のせいにして自己正当化をしたり、思慮の浅い拡散や、悪意のない攻撃をする恐ろしさがあります。
さまざまな行動原理・心理説


あくまで仮説
なぜ特定班という存在や、ネット私刑や晒し行為などを賛成してしまうのか。考えられる行動原理・心理説としては、以下のケースが挙げられます。
- 【歪んだ正義感説】一方的な「許さない」の感情で、相手を叩く人。
- 【メタ認知・自己肯定感の問題説】自分を客観的に見られず、満たされていない人。
- 【脳の疾患・性質・ホルモン説】脳腫瘍(しゅよう)、脳の反応など。
- 【発達・精神障害説】アスペルガー症候群、統合失調症など。
なおこれはあくまでも、医学観点・経験上からの「考えられる要因」「傾向」による仮説であり、決めつけやレッテル貼り、ヘイトの目的で書いているわけでないのはご容赦願います。
歪んだ正義感説


他人に厳しく
自分に甘い
一番言われるのは、問題の当事者を許さないと思う、正義感からの行動だというものです。
『スマイリーキクチ中傷被害事件』から考えてみましょう。20世紀末から21世紀初頭にかけ、「ある凶悪事件の犯人」と濡れ衣を着せられ、10年近くも心ない誹謗中傷を受け続けた事件です。
スマイリーキクチ中傷被害事件|Wikipedia
ネット私刑をやった人たちの動機
何人かが警察に検挙され、彼らの動機を見ると、
- 「ネット・暴露本にだまされた」
- 「最初にデマを書いた奴が悪い」
- 「みんなやってるだろ」
- 「人間関係など私生活でつらいことがありムシャクシャしていた」
- 「離婚してつらかった。キクチは中傷されただけで、自分のほうがつらい」
- 「ほかの人は何度もやっているのに、なぜ一度だけの自分が捕まるのか」
- 「キクチは芸能人だからよいが、自分は一般人で将来もあるから嫌だ」
彼らの意見を見て、正義による制裁や被害者を考えていると思いますか?
真っ当な良識を持っているのなら、
- 「なんて自己中心的な!」
- 「被害者のことはどうでもいいんだね」
- 「行動に責任を持つ意識はないのか」
- 「人のせいにして保身ばかり」
- 「動機が幼稚で子供っぽい」
このように感じる人が多いのではないでしょうか。
なおこの加害者たちは、キクチ氏に対し最後まで謝罪をしなかったそうです。

加害者に共通する特徴
キクチ氏自身も自著で述べているように、
CHECK!
ネット私刑をした人には、「情報の精査・自分で考える・情報を疑う能力」が欠けている(=リテラシーが低い)。彼らをよく見ると共通してリテラシーが低く、日常や社会などの不満などが主な要因になっていたのがわかりますし、行動を反省する姿勢が乏しいんですね。
正義というより「自己満足」
彼らにとって正義感とは二次感情に過ぎず、
- 日ごろから日常や社会、自身に不満・不安があり、心が満たされていない。
- はけ口が欲しい(一次感情)。
- 事件を許せないと感じる感情と、発散したい感情が混ざる(二次感情)。
- 直情的に制裁行為を行い、一時的な快感(発散)を得る。
- しかし一過性で、また溜まって繰り返す。
少なくとも、この事件における行動原理はこう表せます。
「日本人のレビュー(コメント)がひどい理由」の記事 でも述べたように、行為に参加する6〜7割は「許せない・失望からやった」が動機で、根底も日常や社会の不満・不安だったそうです。
ネット中傷の三段活用…最後は「死んで証明しろ」【スマイリーキクチさん・上】|弁護士ドットコム
中傷被害を乗り越え「ネットの力をプラスに活かしたい」【スマイリーキクチさん・下】| 弁護士ドットコム
『人はなぜ、他人を許せないのか(株式会社アスコム)』|中野信子 著
『極論を振りかざす「極端な人」の正体(光文社新書)』|山口真一 著
メタ認知・自己肯定感の問題説


客観視できない
受け入れられない
『歪んだ正義感説』の補足・延長線上の話で、メタ認知や自己肯定感が低い人もまた、同じく歪んだ正義感にかられやすくなります。
- 【メタ認知】自分を客観視する能力。
- 【自己肯定感】自分の心と向き合い、認めて自信にする意識。
自身を客観的に見られなかったり、コンプレックス持ちな人であればあるほど、処罰感情・不寛容といった感情的・衝動的行為を働く可能性が高くなるそうです。
心が満たされた人は攻撃的にならない
攻撃的なデマやネット私刑、誹謗中傷を流した加害者や、実名晒しを行った特定班たちの体験談で共通するのは、
- 「居場所がない」
- 「日常がつまらない」
- 「歪んだ幼少期を送った」
- 「いじめられっ子だった」
- 「友人や仲間がいない」
- 「仕事で認められない」
と、明らかに「心が弱く貧しい・満たされていない人」がやっていたことです。
叩いたり制裁すれば支持者・共感者ができるので、その嬉しさからエスカレートするパターンもあるみたいですね。
自分を認めて充実した人生を送る人は、赤の他人に制裁を与えようとか、犯人探しや暴力的な言葉をぶつけません。

問題を語るにしても、冷静に物事を判断できるものです。
これはまとめサイトのコメント欄やYahoo!コメント(ヤフコメ)、アンチスレ(悪口掲示板)に書き込むのが日常的な趣味みたいな人にも同様の特徴が見られます。
負け組・社会不適合者がやっている?
一昔前は、「ろくな職にもつかず才能もなく、匿名空間でストレス発散している、ヒマ人でレベルが低い社会不適合者」と言われることも多かったですね。
しかし今では誤りであり、「定職に就いて見た目は普通の人が多く、むしろ高年収・高学歴も少なくない」と、キクチ氏や山口氏は自著に述べています。
デジタルの怖さを知らない子供・学生が、ネット・SNS上の極端な主張・論調に感化され、リスクやモラルの想像力・リテラシーがないまま、無自覚にやっている場合もあるみたいですね。
脳の疾患・性質・ホルモン説


知っていれば
つき合いかたは変えられる
たとえば認知症や脳に腫瘍ができると、元々おとなしかったのに攻撃的、口が悪くなる事例は、経験がある人ならわかると思います(脳の腫瘍は映画『グリーン・マイル』でもありますよね)。
また、感情を司る脳の扁桃(へんとう)体が大きく、論理思考の前頭葉が(相対的に)小さい人は、直情的な感情で動き、攻撃的になりやすくなることが言われています。
前頭葉が働いていないのは、発達障害だったり、普段から論理的思考をしていない人のみならず、うつ病や老化でも起こりうるとされています。
女性の場合なら、ホルモンなどの影響で、意図せず攻撃的になってしまったりする『PMS(月経前症候群)』や『更年期障害』のケースもありえますね。
女性ホルモンとPMS(月経前症候群)|DRAGユタカ
更年期障害|公益社団法人 日本産科婦人科学会
発達・精神障害説


自分の行動を
自覚する努力は必要
書き込みに直接影響が出やすい発達・精神障害は、
アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム:特に積極奇異型・尊大型と呼ばれるタイプ)|ブレインクリニック東京
統合失調症|厚生労働省
これらが挙げられ、医学的見地から言われている傾向として、
- 【1ビット思考】0か100の極端思考で考え、感情コントロールもできない。
- 【絶対に正しい】「私は正しい」の認識が強く、他人に厳しく自分に甘い。
- 【無自覚なダブルスタンダード】実際はその加害者と同じという自覚がない。
- 【被害者意識が強い】被害者アピールや粘着・ストーカー行為まで行う。
- 【結論バイアス】ひとつの意見で全否定したり、耳障りのいい情報しか集めない。
- 【拡大解釈】「だろう」「傾向」を、「決まっている」「全員」と断定的な意味にすり替える。
- 【言葉選びが下手】配慮がない発言や、口が悪く攻撃的。
- 【反省・謝罪・改善しない】自分の非を認めない。そのため同じ失敗を繰り返す。
- 【知識が偏(かたよ)る】調べかたに偏りがあり、独善的・偏った知識になる。
- 【文脈が読めない】行間や文脈が読めず、見当違いな持論展開をする。
「こういう症状・障害・病気だから」で努力できない言い訳にするのは論外で、それは同じ障害で悩み、生きづらさを持ちながらも頑張る人たちまで、信頼性や心証が悪くなるだけです。
さきほど『正義中毒』という話を触れましたが、経験上、こちらは『正義潔癖症』と言ったほうがいいかもしれない側面もあります。
自分が正義と思っているというか、白黒ハッキリしないと気がすまない、潔癖レベルの勧善懲悪(ちょうあく)なんだよね。

実際、「ネット私刑が許せないから、自身が敵認定した相手を晒してネット私刑をしている」という、自称発達障害の人とやりとりしたことがあります。
自身が正しいと信じて疑わずに自分を棚に上げ、都合のいい理論武装で気に入らない相手を徹底的に叩いたり晒さないと気がすまない、正義潔癖症という感じでしたからね。
私は正義感と潔癖性というのは似たところにあって、目に見えているものをある法則に従い整った状態にせずにはいられないという心理だと感じる。画面についた指紋がどうしても許せないのと、違うことを言っている相手が許せないのが一緒に見える。
— Dai Tamesue 爲末大 (@daijapan) November 15, 2015
あくまで知識の話


決めつけではなく
参考程度に
……重ねるとおり、これらは「考察による可能性・仮説」です。
「知識」の話や見解であって、医者じゃないのに傾向で相手を病気や障害と決めつけるのは、ネット私刑と同じく許される行為ではなく、該当者全員が行為に賛同しているわけでは決してありません。
別の考察や体験談については、以下の記事などにありますので、ご興味があればご覧ください。
ネット私刑のビジネス・娯楽化


まとめサイトやツイッターは
特にひどいよね
この私刑感情を利用して広告収入を得ているのが、上述した犯人特定・経歴・顔画像などを掲載する、時事・事件系といったトレンドブログ・まとめコピペブログ(キュレーションサイト)です。
彼らも「お金を稼げる不労所得ビジネス」として加担するも、2019年の高速道路あおり運転にて、拡散された女性が全く無関係だと判明すると、謝罪も訂正もせず消した運営者が多く見られました。
不労所得によるお金稼ぎ自体は悪ではないものの、相手を不当に傷つけて利益を得ようとする「拝金主義に毒された人間の愚行」は、社会通念的に問題でしょう。
なおトレンドブログ運営者の体験談によると、彼らは世の中のため、正義のためにやっているのではなく、金稼ぎに使えるネタとしか思っていないケースが多いとのことです。
ネットの“ぬれぎぬリンチ”深刻化 「いつか犠牲者出る」被害者の恐怖 加害者にならないために|西日本新聞
「ドラクエをやってるイメージ」で月収100万円 “トレンドブログ”運営者が語る、その実態とは|BuzzFeed News
新型ウイルスでもネットに拡散 トレンドブログを追跡した|NHK NEWS WEB
需要があるからなくならない
残念ながら、そういった内容でアクセス数が伸びたり拡散されるのは、低俗(ていぞく)なゴシップ好き、犯人の情報を求める層が一定数いるからでもあります(需要がなければ書かない)。
「自業自得」「疑われるのが悪い」「クソ野郎だから叩いてOK」と言いながら、処罰感情を悪用する人たちの金稼ぎに利用され、踊らされているさまは、本当にリテラシーが低いと言わざるをえません。
ネット私刑を必要・賛成と考えるならば、冤罪(えんざい)被害が発生した場合、
- 「真犯人特定への仕方のない犠牲」
- 「冤罪は運が悪かった」
- 「間違ってたら謝らずに消せばいい」
このような無責任がまかり通っている状態はどう説明するのでしょうか。それで「正義感・許せない心から、断罪・制裁するために私刑は必要だ」と言われても、説得力がありません。
いじめ相手をいじめている
次に同年に起きた神戸の教師いじめだと、加害者教師の謝罪文を赤ペン先生のように添削 したり、動画を生配信して学校を突撃 したり……
「いじめ教師(組織)を許さない」ではなく、「いじめ教師(組織)のいじめに面白がっている」状態へと変わっています。
やっていることは加害者・当事者と本質は同じで、「いじめ相手をいじめている」だけなのがわかると思います。それこそ負の連鎖だし、自分を客観的に見られていないんですね。
数百年前の人類と変わっていない?


人は過ちを繰り返す
私刑という行為は昔からあり、いわゆる『村八分(村内でのいじめ)』『魔女狩り』などが該当し、文明もモラルも発達した21世紀では、これらがネット私刑として形を変えたとも言えます。
絵画や歴史の教科書でも、容疑者や罪人をいたぶったり処刑するのは庶民の娯楽で、古代ローマ時代のコロッセオは、「罪人や剣士を殺し合い、観客は安全圏から面白がっている」ものでした。
「安全圏から、誰かを煽って攻撃されるさまを娯楽にしている」という意味では、本質は同じものです。
CHECK!
科学技術が進歩しても、人間の知性は進歩していないし、知性の総量は今も昔も変わらない。こう言われても仕方がない状況ですね。
陰謀論・カルト宗教にハマる心理と似ている?
低俗なゴシップや事件に反応し、ネット私刑などに熱心な人は、陰謀論やカルト宗教にハマる人と似ている傾向があります。
自分に信念とリテラシーがなく、心に弱さと闇がある人たちは、集団主義や帰属意識、勧善懲悪な極論に安心感を得ようとする生き物であることは、歴史や世界の例でも明らかです。
それを悪用するのが陰謀論・カルト宗教ですし、陰謀論者や狂信的な信者って自分は模範的で正しいことをする「いい人」だと信じて疑わず、聞く耳を持たないし、ときには攻撃的になるものです。
ある意味では、ネット私刑は『正義教』だともいえますね。
最後に:ネット私刑は必要?


本質を見ないから
なくならない
冒頭のとおり、問題行為や事件・不祥事に対して「許せない」「被害者が可哀想」と思う自体は人として正しい反応です。
しかしながら昨今見かけるネット私刑の数々は、
- 【リテラシーが低い】調べる力・考える力・疑う力が乏しい。
- 【正しい批判ができない】批判と批難の区別すらできていない。
- 【正義感は二次感情】正義感を盾にするが、根底は本人の個人的問題が多い。
- 【誹謗中傷中毒】特定・晒し・叩きが発散・快楽行為になっている。
- 【ビジネス・娯楽化】ネット私刑そのものがビジネス・娯楽と化している。
- 【自己保身】被害を受けた当事者への謝罪はなく、自己保身、証拠隠滅を図る。
と、さまざまな問題を抱えていて、日本国憲法第三十一条にも抵触する行為です。
CHECK!
ネット私刑(特定行為・ネットリンチ)の本質・実態は、「バッシング・誹謗中傷の正当化」であり、負の連鎖である。しかしネット私刑に賛同する人・支持する人・当事者たちはそう思っておらず、
- 「正当な批判で誹謗中傷ではない」
- 「メディアや週刊誌だって同じだろ」
- 「司法や警察が情報を隠すからだ」
- 「正しいことをやって何が悪い」
このように主張するケースがほとんどです。
まるで「私は今まで法を犯したことはない優秀な模範生であり、世間的にも善良な人間だ」と言わんばかり。ただ私刑をしている時点でその姿勢は崩壊しているんだけど……

しかしそれは「いい人ぶっている」だけで、晒して叩くというモラルに反する行為をしてまで、犯罪抑止のメリットがあるのか、そこを納得できるエビデンスで説明する人は見たことがありません。
また、この問題は自分を含め、誰でも被害者になるし、加害者にもなります。
だからリテラシーを持って、思慮深く行動しないといけないんですね。

その本質を理解していないから、ネット私刑による数々のデマ・風評被害・誹謗中傷などで検挙者が出ても、結局同じことを繰り返すのは周知のとおりです。
本質を学ぼうとしないから同じことを繰り返すし、反省もできません。
仮に私刑が許されるのはフィクションの世界だけです。

そういった感情を悪用して利益を得るのがトレンドブログ(まとめコピペサイト)であり、やっていることは村八分や魔女狩り、殺し合いの見世物をやっていた時代と変わらないんですね。
個人情報を晒そうとするトレンドブログには正義というものはなく、都合のいいお金稼ぎの手段で私刑が選ばれているだけでしかありません。
私刑感情にかられてトレンドブログを見る人がいる限り、トレンドブログは「金のなる木」でありなくならない。

本質を見なければ負の連鎖は止まらない
ネット私刑をする人、特定班と呼ばれる人の傾向を調べると、
- 「心に闇を抱えている」
- 「日常や社会に不満がある」
- 「精神・発達障害がある」
などのように、正義感は建前で実際は社会や個人の闇を感じる部分があるんですね。正しい批判(ロジカルシンキング)ができず、ゴシップや事件に過度な関心を示しているのも特徴です。
赤の他人様へ感情的に時間を費やすより、自身の価値を上げるほうが有意義な時間活用であり、物事を冷静に判断できます。
なぜ世の中からバッシングや誹謗中傷が一向になくならないのか。この私刑に対する考えかたを見ても、容易に察することができます。
誹謗中傷・バッシングは「無実の人を攻撃的に叩く」ではなく、「誰かを攻撃的に叩く行為そのもの」に問題の本質があります。

怒りを覚える自体は人として正しくても、自分を受け入れ、冷静な思考力・自制心やリテラシーを学ぶことを、一人ひとりが能動的にやらなければなりません。
ネット私刑の本質と問題を理解しないと、健全で平和なネット・SNS社会には到底ならないでしょう。

「ネット私刑をする奴らを許せない」と叩く人も問題
当記事をネット私刑賛成・支持派を煽ったり、叩く目的で引用される方を定期的に見かけますが、該当者を叩くことが目的ではなく、客観的観点から問題を理解して学ぶことにあります。
「ネット私刑をする奴らを許せない」と攻撃的な態度をとるのは、立場が違うだけで根っこの部分はどちらも同じレベルで、他人に厳しくて自分に甘いし、本質を見ていません。
「叩いたり晒すネット私刑する人を、同じように叩いて晒している」って笑えない皮肉……

記事でも言及しているように負の連鎖であり、「問題を述べること」と「叩くこと」は別問題です。物事を語るにしても、リテラシーを持って思慮深く行動をするようにお願いいたします。

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