2023.03.09 2023.03.24

【絵描きが語る】AIイラストの自作発言、「AI学習禁止」が問題になる理由【AI絵】

雑記,オリジナル,創作

2022年あたりから、AIが作成したイラストが投稿されるのが当たり前になりつつある一方、AIイラストをあたかも自分が描いたかのように扱う人も問題になっていますので、

  • 「AIイラストの自作発言による問題点」
  • 「AI絵を絵描きはどう思うのか」
  • 「AI学習禁止の文言について」

このあたりの話を軸に述べていきます。

  • 個人の見解です

    ほかの方の意見もご参照ください

AIイラストとは

背景

AIイラストの定義

AIイラストは文字どおり、「AI技術によって描かれたイラスト」のことをさし、『NovelAI』や『AIピカソ』などが挙られます。

2020年に手塚治虫の作風をAIが学習して作成された『ぱいどん』という作品が話題になったこともありましたね。

ただし『ぱいどん』は、人の手による修正もある程度おこなわれています。

フキダシ1

AIイラストは『拡散モデル』とよばれる、膨大な画像データにノイズをかけてあやふやにして学習し、生成するものが主になっています。

そのためよく言われる「AIイラストは既存物を組み合わせているだけ(=コラ画像)」というのは、誤解を招く表現で正しくないそうです。

自分もそこまで詳しくはないのであしからず。

フキダシ2

AI手塚治虫『ぱいどん』はコンテンツ産業にとってどんな意義があった? クリエイターがAIに求めたこと|リアルサウンド ブック

イラスト生成AIに対するよくある誤解|Qiita

AIイラストのモラル・権利問題

背景

無自覚なんだろうなと

しかしAIイラストには問題点があります。

たとえば、AIイラストは2023年現状の法律だと、著作権の定義にあたる「創作的表現」とは言いがたいため、著作権が発生する可能性は低く、権利関係がわからない状態になります。

ただ、AI絵を自分である程度加筆すれば「創作的表現」になり、著作権は発生するというのが現状の認識のようですね。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。(原文ママ)

著作権法 | e-Gov法令検索

しかし作家の作風を模倣するAIイラストや、AIイラストをあたかも自分が描いたかのように誤認させるなど、そういった行動はトラブルになりかねません。

実際、『mimic』は顔の作風をまねるAIイラストのため悪用され一時は騒動になったり、権利関係などの都合から、AIイラストの自作発言をバーチャルVTuberが注意喚起するケースも見られます。

またpixivだとAIイラストが多数投稿され、純粋に絵描きが描いたイラストが流れてしまうこともあり、pixiv検索のアクセス解析を見ても、AIを除外して検索される方が多いですね。

このように、AIイラストにはモラルと権利に関する問題が見られます。

フキダシ1

「創作的な表現」アイデアと表現の違い|弁護士法人横浜パートナー法律事務所

AIが描いたイラストの著作権はどうなる?|Tokkyo.Ai

最近話題のAIイラストについて調べてみた|税理士の進捗管理なら株式会社AQUARIZE

不正利用への懸念で物議をかもしたイラスト生成AI「mimic」が再始動 運営が語る“炎上”の原因とは|ねとらぼ

「AIイラストを自作発言しないで」VTuberが続々と注意喚起=YouTubeの権利関連に懸念か|オタク総研

絵描きが見れば自作発言はウソだとわかる理由

背景

すごく気になる…

技術としては進化を期待している一方、絵描きである自分から見るとAIイラストは違和感のある部分が多いです。

それはつまり、「絵描き(また細かい部分に気づきやすい人)から見たら自作発言はウソだとすぐにバレる」ということでもあるため、理由をひとつずつ述べていきます。

ただしこれは2023年現在の状態であるため、将来的にはこの違和感が低減される可能性があることは留意願います。

細かい描写ができていない

AIイラストは顔や体のポージング、自然風景こそしっかり描けているものが多いですが、一方で細かい部位の表現は2023年現状の技術ではできません。

細かい部位というのは、

  • 手や足の指
  • 口内の描写
  • まぶたや眉毛の表現
  • 人工物(小物)のデッサン

このあたりは見る人が見ればすごく違和感を感じます。

自分は口内の描写をしっかり描くタイプの絵描きだから、AI絵の口内描写(舌・歯・口蓋〈こうがい〉)はすごく大ざっぱなんだよね。

フキダシ2

指の本数が多かったり少なかったり、関節がありえない方向に曲がっているのも、AIイラストに見られがちでわかりやすい特徴です。

ちなみに手と足は表情豊かなだけに描くのが難しい部位で、ここを見れば絵描きの技量がわかる場所です。それこそ老若男女の手足が秀逸(しゅういつ)に描ける人はほぼプロです。

AIイラストは「クセ」がない

AIイラストは総じて絵は美しくキレイだとしても、クセがなさすぎてパターン化されているため、よくも悪くも没個性であるためにすぐバレます。

個人的にも、

  • 「ミリタリーへの愛情がスゴい」
  • 「人体を上手く崩していて秀逸」
  • 「ものすごく手フェチな人だなぁ」

など、そういった個性やこだわり、作風を探す面白みに欠けます。

ゆえに自作絵発言は「バレるウソをついている」のと同じで、そんなことをされていい気分をする人は少ないですし、場合によっては人間性を疑われることもあります。

絵は絵描きの研究成果物

雑記,オリジナル,創作
左が2010年 右が2023年

絵というのは、絵描きが積み上げてきた研究成果物です。

絵が上手い人は解剖学やデッサン・色彩学など、技術的な勉強を何年・何十年もしているんですね。だからそれだけ個性やこだわりも出やすくなるし、その個性を楽しむのもイラストです。

絵が上手い人ってある意味研究者でもあるよ。

フキダシ2

絵描きは職人気質(とは言うものの、ぶっちゃけ変人が多い)なところがありますし、苦労もせず機械が作った絵で自慢されてもいい気分をしないということです。

ゆえに上述のとおり「AIイラストは既存絵を組み合わせたコラ画像に過ぎない」を信じる絵描きも未だ多く、自分も当時は勉強不足であったため、しっかり調べないとなと猛省しましたね。

AIイラストは着せかえ人形と同じ

背景

普通はやらない

AIイラストを自作絵として発表するというのは、

CHECK!

AIイラストを自作絵として発表するのは、着せかえ人形で「これがオリジナルキャラです」と言っているようなもの。

キャラクタークリエイションで作成したアバターをオリジナルだとは言わない……と言うほうが伝わるかな?

フキダシ2

そこから手直しや描き足しで新たな価値を創生するのならまだいいにしても、完全AI任せのものを自作絵とするのは、これらと本質的に同じです。

AIイラストを逃げの言い訳に使う人もいる

また絵が下手だからと、AIイラストにくら替えして自作発言をする人を見かけたことがあり、AIイラストを使って逃げの言い訳にしているのは残念に思いました。

絵のみならず何に対してもそうで、自分から時間を作って学ぶ姿勢を見せないと上達なんて無理です。

技術自体は否定しない

背景

技術は素晴らしい

語弊がないように伝えておくと、AIイラストの技術自体は個人的に成長を期待している立場です。

テレビなどでは昔からそうで、

  • 90年代末、家庭用パソコンを根暗な人がやるものかのように紹介
    → 今となってはパソコンは普通に利用されている。
  • コロナ発生時、中国の飛散防止ビニール製パーテーションをネタとして笑う
    → アクリル板やビニールパーテーションは日本でも日常になる。
  • 3Dプリンターでできた家をお粗末だと苦言する
    → 3Dプリンターハウスは新たな建築ビジネスで競争が加熱している。

このように、工夫や技術そのものを見下したり笑うことは知見と科学への冒とくで、あとで自分の首をしめて恥をかくだけですからね。

まだAIイラストは発展途上ですし、技術が進めば「絵の個性・こだわり」の部分は難しいにしても、ほかにある現状の問題点は少なくなっていくと思います。

いろいろ言いましたけれど、自分はこの記事で一番言いたいのは技術の否定ではなく、AIイラストをあたかも自分で描いたかのように主張する行為であることは、留意いただけますと幸いです。

プロフィールに「AI学習禁止」を記載する絵描きについて

背景

見るがままやってない?

AIイラストで忘れてはならない話として、

  • 「AI学習禁止です」
  • 「AI絵の使用ダメ」

このような文言をプロフィールに書く絵描きが数多くいます。

ただこの注意書きは申し訳ないですが、

絵をネット・SNSに公開する意味・リスクを理解しないなど、ネットリテラシーが低い。特に二次創作の絵描きは一方的に自分の権利ばかり主張しているのは首をかしげる。

フキダシ2

という感想を抱きます。

支援サイトやSkebを見ても、創作ガイドラインを確認せず有料二次創作をやる人が多く、著作権上は自身の著作物になるとはいえ、モラルの観点だとそれで自分の権利を主張するのは疑問です。

言葉が悪くすみませんが同じ創作+二次創作絵描きとして、彼らのような絵描きは「ずうずうしい」と思わざるをえません。

深く考えていないというか、「話題になっているからとりあえず言っておこう」感覚なのでしょうけれど、自分を棚に上げて他人に厳しく自分に甘いのは、人としてよろしくありません。

これは法的な問題ではなく、絵描きのモラルの問題です。

フキダシ1

CHECK!

百歩ゆずってAI学習禁止を表明するなら、AIイラストがどのように作られるかを知り、自他ともに権利を尊重する姿勢を見せる思慮とリテラシー力、そして人としてのスジを通すのが前提。

これについては以下の記事でも述べていますので、あわせてご参照いただければ幸いです。

最後に:AIイラスト自体は素晴らしい技術

背景

節度とモラルは守ろう

絵というのは絵描きの研究成果物であり、それがないAIイラストはよくも悪くも没個性で、表現者のこだわりや細かい描写は現状難しいため、絵描きが見ればすぐにAI絵だとわかります。

ゆえに、職人工芸品と工場生産のプロダクト品が目的によって住み分けができているように、絵描きが描いたイラストとAIイラストは住み分けされ、成り代わることはないと思います。

そのためAIイラストが悪と言いたいわけでも、AI技術の進化で絵描きの立場がおびやかされる……とも思っていません。

「AI学習禁止」は自分を棚に上げていると思われる

AI学習禁止をかかげる絵描きは数多いですが、百歩ゆずって、

  • AIイラストがどう作られているか
  • ネット・SNSに絵を載せるということ
  • (有料)二次創作ならガイドライン厳守

これらをすべて理解し、実行していることが前提ではないでしょうか。

それをしないまま、

  • 「なんとなく嫌だ」
  • 「周りが表明しているから自分もやろう」
  • 「SNSで話題になっているから」

と、深く考えずに「AI学習禁止」をかかげ、それで創作ガイドラインが不明な二次創作で有料行為をしてるのを見ると、疑問に思わずちゃんと調べないし、他人に厳しく自分に甘い人だなと感じます。

それは意識が高いとは言わないよ。ただの「意識高い系」でしかない。

フキダシ2

もちろん悪質な場合は毅(き)然とした対応は必要ですが、まずは相手の権利を確認して尊重し、不特定多数が見る場所に掲載するという本質を把握した上で言うのスジではないのかと。

これは法的な問題ではなく絵描きのモラルの問題ですし、有料二次創作をしている人ほど、自分を棚に上げて自己権利を主張するような、リテラシーが低すぎる絵描きが目立ちます。

自分で不勉強さや思慮の低さをアピールするのは、二次創作絵描きの肩身を狭くして迷惑や風評被害を振りまいていることを真摯(しんし)に自省し、考えていただきたいものです。

心当たりがある人はしっかりできた上で言っているのか、自身の絵のブランドのためにも再考したほうがいいでしょう。

なお自分がAI学習禁止をかかげることは現状ありません。住み分けが可能な分野で技術の進化自体は素晴らしいし、悪質ではない社会通念上の範囲内なら見守る姿勢です。

AIイラストは自作絵にはならない

とはいえ、AIイラストをあたかも自分で作った制作物だと発表することで、相手を誤認させたり、権利関係を明確にできないのは問題です。

ちゃんと「これはAIイラストです」と言っているのならともかく、それを申告しないで自作絵として発表するのは、その絵を見た多くの人や、技術を積み上げた絵描きにも失礼なんですね。

AI絵を自作と称する人は、着せかえ人形をオリジナルキャラクターだと言っているのと同じで、描けないことによる逃げの言い訳のみならず、繰り返すようにトラブルになるリスクがあります。

また絵を描く場合と比較して圧倒的に制作時間が短いことから、pixivなどで大量投稿されて「絵描きが描いたイラスト」が流れ、埋もれてしまうも考えものです。

AIイラストは悪ではありませんが、節度とモラルを守り、「AIイラストだと明記し、AIを利用したお遊び」という意識は忘れないようにしましょう。

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    • 赤竹ただきちTadakichi Akatake
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    とはいえ、記事に関心を持っていただけている自体は嬉しいんだけどね。複雑な気持ち。

イラストレーター・コーダー+WEBデザイナー・ライターの京都生まれなウサギ好き。

絵は多様な作風を描くことを強みにし、外国人でも絵でわかるマンガや、ウサギと口内描写にはこだわりを持つ。

コーディングとWebデザインは両方可能。案件によっては「デザインしつつコーディング」の荒業もおこない、SEOを意識したマークアップも得意。

「自省・リテラシー向上・正しい批判」をライフワークとし、当サイト記事も「中学生でもわかりやすい、気づき・理解・学びを得る」を全体テーマとして執筆。

これは微力ながら閲覧者に考える・学ぶ助力のほか、自身も学ぶ目的も含み、「下手でも自省し学ぶことを忘れない人」は、年齢・性別問わず好きなタイプ。

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