2022年あたりから、AIが作成した生成イラストが投稿されるのが当たり前になりつつある一方、AIイラストをあたかも自分が描いたかのように扱う人も問題になっていますので、
- 自作発言による問題点
- AI絵を絵描きはどう思うのか
- AI絵の二次創作について
このあたりの話を軸に述べ、記事の後半では、
AIイラストの学習行為は作品への著作権侵害行為だ! 世界中でもその流れになっているんだからAI絵は規制すべき!
じゃあ二次創作はどうなんだよ。どっちも権利元の著作物を盗んでいるから一緒じゃん。
AIイラストを完全悪のように扱い、親の仇(かたき)のごとく極端な主張をネット・SNS上で拡散したり、「AI学習禁止」と書く絵描きの問題。
そして生成AI(≒二次利用)と二次創作を混同して、筋違いの反論を書く人。このふたつの問題点や是正を述べていきます。
-
個人の見解です
ほかの意見もご参照ください
AIイラストとは
AIイラストの定義
AIイラストは文字どおり、「AIの生成技術によって描かれたイラスト」のことをさし、『NovelAI』や『AIピクターズ』などが挙られます。
作品制作に生成AIを使うという意味では、2020年に手塚治虫の作風をAIが学習し、それをもとに人間の手で作成された『ぱいどん』が話題になったこともありましたね。
キャラクター原案・プロット作成はAI、残りの部分は人間の手を使うという、制作の補助ツールでAIを用いた感じですね。
ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界|講談社コミックプラス
AI手塚治虫『ぱいどん』はコンテンツ産業にとってどんな意義があった? クリエイターがAIに求めたこと|リアルサウンド ブック
イラスト生成AIに対するよくある誤解|Qiita
AIイラストのモラル・権利問題
世界でも社会問題に
なりつつある
しかしAIイラストには問題点があります。
たとえば、AIイラストは2023年現状の法律だと、著作権の定義にあたる「創作的表現」とは言いがたいため、著作権が発生する可能性は低く、権利関係がわからない状態になります。
ただ、AI絵を自分である程度加筆すれば「創作的表現」になり、著作権は発生するというのが現状の認識のようですね。
「解釈次第では、AIイラスト作成サービスを『自身の創作アイデアを表現するツールの一種』と言えるかもしれない」という意見もあった。
【著作権法 第二条】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。(原文ママ)
e-Gov法令検索
チャットGPTに聞いたところ、「著作権はツール製作者・企業に属する可能性もあるし、創作的表現ではないため発生しない可能性もある」という感じだったね。
実際にあったトラブル
ゆえに下記の行動をすることはトラブルになりかねません。
- 作家の絵・作風を模倣
- 自作絵だと誤認させる
- 二次創作的作品の有償販売
実際、『mimic』は顔の作風をまねるAIイラストのため悪用され一時は騒動になり、権利関係などの都合から、AIイラストの自作発言をバーチャルVTuberが注意喚起するケースも見られます。
生成AIには文字情報から生成するタイプ(t2i)のほか、特定の絵を原型にしてAI生成をするタイプ(i2i)も存在して、模倣・盗用問題を言われるのは後者が多いですね。
作品が模倣されたことを被害報告するクリエイターも見られますからね。
ちなみに絵描きの絵柄・作風はアイデアであって創作的表現ではないから、著作権の適用外という話もあるらしいよ。
pixivだと作成時間が短いせいか、AIイラストが大量投稿されて純粋な絵描きのイラストが流れることもあり、pixiv検索のアクセス解析を見てもAIを除外して検索される方が多いですね。
言葉は悪いながら、ちょっとした検索汚染状態。閲覧者側からすれば「絵師の作品? AI?」と疑心暗鬼にもつながりかねない。
作品キャラクター絵をAIで作成し、二次創作として有料リクエストや支援サイト投稿、グッズ販売など、加筆を特にせず有償行為をする人もいます。
このように、AIイラストはモラルと権利への問題が見られます。
追記
2023年6月現在、pixivは検索からAI作品を除外できる設定が追加、Fantia・FANBOXはAI絵の投稿を現状禁止、SkebもAIイラストのリクエストを納品不可にしています。「創作的な表現」アイデアと表現の違い|弁護士法人横浜パートナー法律事務所
AIが描いたイラストの著作権はどうなる?|Tokkyo.Ai
最近話題のAIイラストについて調べてみた|税理士の進捗管理なら株式会社AQUARIZE
2022年11月末、今からAI画像生成を触りたい未経験者向け記事|note
AI絵の自作発言はウソだとバレやすい理由
すごく気になる…
技術としては進化を期待している一方、絵描きである自分から見るとAIイラストは違和感のある部分が多いです。
CHECK!
絵描き(細かい部分に気づきやすい人)から見たら自作発言はウソだとバレやすい。なぜ自作発言のウソがバレやすいのか、理由をひとつずつ述べていきます。
ただしこれは2023年現在の状態であるため、将来的にはこの違和感が低減される可能性があることは留意願います。
細かい描写ができていない
AIイラストは顔や体のポージング、自然風景こそ描けているものが多いですが、一方で細かい部位の表現は2023年現状の技術ではできません。
細かい部位というのは、
- 手や足の指
- 目のハイライト
- 口内の描写
- まぶたや眉毛の表現
- 人工物(小物)のデッサン
- 線画部分の入り抜き
このあたりは見る人が見ればすごく違和感を感じます。
自分は口内をしっかり描くタイプの絵描きだから、AI絵の口内描写(舌・歯・口蓋〈こうがい〉)はすごく大ざっぱなんだよね。
人間だからできる表現
自分で言うのも恐縮ながら、口内描写は児童期から成人期までの歯の本数の違い、口腔・咽頭の解剖学的構造までを網羅した上でデフォルメする高等表現をしていると自負しています。
デッサン部分は将来的に改善されていくでしょうが、こういった超マニアック知識を絵に最適化する作業は、人間だからこそできる業(わざ)です。
足の裏をくすぐれば足指が丸まる、熱いものを触れば耳たぶを触るなど、人体の反射描写もAI絵で見たことはないね。
ほかにも前髪とまゆ毛・まつ毛の境界線がゆがんでいたり、指の本数が多かったり少なかったり、造形の途切れなども、AIイラストに見られがちでわかりやすい特徴です。
ちなみに手と足は表情豊かなだけに描くのが難しい部位で、ここを見れば絵描きの技量がわかる場所です。それこそ老若男女の手足が秀逸(しゅういつ)に描ける人はほぼプロです。
耳の描写も絵描きのクセが出やすい場所。作品名は忘れたけど、登場人物が耳の描きかたで誰が描いたのかを把握するシーンがあった。
いい感じの手抜きが難しい
絵は適度に「手抜き」をすることが必要です。
たとえば遠景は大ざっぱに描き、近景の人物や小物をしっかり描き込むと、遠近感が出るだけではなく、絵の中が整理されて見やすい絵になります。
AI絵にも手抜きの表現は可能ですが、人間的感覚が必要な箇所であるせいか、かなり線がゆがんでいびつだったりと、「キレイな手抜き」ができていないパターンが多いです。
美術学校の学生時代、「キミは適度な手抜きを覚えなさい」と先生に言われたことを覚えているよ。
クセや遊び心がない
AIイラストは総じて絵は美しくキレイだとしても、クセがなさすぎてパターン化されているため、よくも悪くも没個性ですし、遊び心がありません。
個人的にAIイラストで一番違和感を感じる部分がここだと思う。パッと見が上手くても、内面性がなくて絵的につまらない。
AIイラストは良く言えば「トレンドを踏まえた模範絵」、悪く言えば「没個性のつまらない絵」で、文字どおり機械的なんですね。
個人的にも、
- 「ミリタリーへの愛情がスゴい」
- 「人体を上手く崩していて秀逸」
- 「ものすごく手フェチな人だなぁ」
- 「よく見たらこういう状況なのか」
- 「デザイン意図の作り込みが細かい」
など、そういった個性やこだわり・作風、状況を探す面白みに欠けます。
人物の性格や経緯がわかる「意味がある遊び心」を入れて、一度見て二度おいしい絵を描きなさい。
これも美術学校の先生に言われたことで、オリジナルキャラクターをつくるとき、スチル(場面)絵を描く際は必ず心がけています。
さきほど述べたマニアック知識の部分と同様に、ここもAIには描くことができない、自身の内面や意図・こだわりを作品に反映できる人間の絵描きだからこそできる芸当です。
ニューイヤー用に描き上げたキャラクターですが、もちろん造形に意味を持たせています。
— 赤竹ただきち / Tadakichi Akatake (@MyutaUsagi) January 1, 2024
✅露出が多い
→ 背中から翼=実質多腕=運動エネルギーが多い=体温冷却のために露出(飛行の軽量化もかねて)
✅ 髪型+褐色+見開いた目
→ アホ毛とミディアムヘア+褐色+目の形で活発な少女
✅ 青い眼
→… pic.twitter.com/1BamkVQ3sd
プロは小物ひとつにも、しっかり意味を込めていますからね。
「なぜこのヘアピンか」「髪型・髪色の意味」「アクセサリーの暗喩(あんゆ)」など、ものすごく計算してキャラクターを描くよ。
絵は絵描きの研究成果物
だからこそ自作絵発言は「バレるウソをついている」のと同じで、そんなことをされていい気分をする人は少ないですし、場合によっては人間性を疑われることもあります。
絵は絵描きの研究成果物であり、上手い人は解剖学やデッサン・色彩学など、技術的な勉強を何年・何十年もしているから個性やこだわりも出やすく、それを楽しむのもイラストです。
絵描きがAIイラストに否定的・反感を買う人が少なくないのは、作風(研究成果)を模倣されることに危惧(きぐ)するのもそうですが……
絵描きは職人気質(とは言うものの、ぶっちゃけ変人が多い)なところがあり、苦労もせず機械が作った絵で自慢してもいい気分をしない部分も大きいと思います。
絵が上手い人ってある意味研究者でもあるよ。ピカソみたいな超天才は1%もいないし、鍛錬をするから絵は上手いんだよ。
ピカソが8歳の頃に描いたデッサン pic.twitter.com/H56S16Lwtf
— 兎です。(FAKE) (@Soviet_Usako) February 22, 2022
AIイラストの二次創作について
AIの二次創作は
二次創作なのか?
次に前半で触れた、pixivやSNSで見かけるAIで作成した二次創作イラストを述べていきます。
重ねるように著作権とは創作的表現が前提にあることや、二次創作の定義は各人・権利者で細部が異なるものの、
- 【二次創作】権利元の作品から、創作性が高い作品をうみだす非営利的な行為。
おおむね共通する定義はこちらになり、それを当てはめるのであれば、
CHECK!
AIが描いた二次創作は、二次創作ではない(二次創作の定義を満たしていない)。こう言えるだろうと考えています。
「創作性が高い」を満たすのが必要
権利元の創作ガイドラインでも「創作性が高い」が前提の場合が多く、ゆえにそれを満たさないAIの二次創作は二次創作とは言いがたく、『二次創作的』が適切な言いかたかもしれません。
生成AIって仕組みを考えれば『二次利用』だし、権利元はAIイラストの普及で、ガイドラインを書き換えないといけなくなるね……
そのため個人的には、著作権の定義も満たしていない可能性があることも含め、AIの二次創作的な作品を支援サイトや、有料リクエストで有償行為をするのはオススメしません。
トラブルが発生した場合も、人間が作った場合と比べて格段にややこしくなってしまいますね。
技術自体は否定しない
技術は素晴らしい
語弊がないように伝えておくと、AIイラスト・生成AI技術自体は成長を期待している立場です。
テレビなどでは昔からそうで、
- 「90年代末、家庭用パソコンを根暗な人がやるものかのように紹介」
→ 今となってはパソコンは日常的に利用されている。 - 「iPhoneが登場した当初は一過性のブームで続かないと言われる」
→ きっかけにスマホが世界で普及し、むしろ従来のガラケーは廃れた。 - 「コロナ発生時、中国の飛散防止ビニール製パーテーションをネタとして笑う」
→ アクリル板やビニールパーテーションは日本でも日常になる。 - 「3Dプリンターでできた家をお粗末だと否定する」
→ 3Dプリンターハウスは新たな建築ビジネスで競争が加熱している。
このように、工夫や技術そのものを見下したり笑うことは知見と科学への冒とくで、あとで自分の首をしめて恥をかくだけですからね。
いろいろ言いましたけれど、自分はこの記事で一番言いたいのは技術の否定ではなく、AIイラストで創作性をアピールしたり誤認させる行為であることは、留意いただけますと幸いです。
AI学習禁止表記やAI規制運動について
見るがままやってない?
ここからは、ネット・SNSで見かける生成AI論争の問題点について述べていきます。
まずAIイラストで忘れてはならない話として、
- 「AI学習禁止です」
- 「AI絵の使用ダメ」
このような文言をプロフィールに書く絵描きが数多くいるものの、ちゃんと0か100の極論で考えず、しっかり理解して注意書きを書いているのかという部分に疑問を抱きます。
特定の絵を取り込んでイラストを生成するタイプ(i2i)、文字情報で生成するタイプ(t2i)を全部ごっちゃにして、AI生成NGと言う曖昧(あいまい)な絵描きが目立ちますね。
AIに学習されることを嫌がるより、「AIがマネできないほど意味を詰め込んだ高度な絵を描こう」と思ってほしいけどね。
著作権上における学習行為
それだけにとどまらず冒頭で述べたように、
AIイラストの学習行為は作品への著作権侵害行為だ! 世界中でもその流れになっているんだからAI絵は規制すべき!
こういった「規制」という名ばかりの排斥(はいせき)運動をして、過激で極端な内容を拡散させる絵描きもいて、同じ絵描きとして彼らの行為は称賛できるものではありません。
著作権上では、利益を不当に侵害するケースを除き、思想や感情の享受を目的としない(または軽微利用)場合、学習をする自体は問題がないと定義されています。
【著作権法30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)】
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
(原文ママ)
著作権法|e-Gov法令検索
作風を模倣して誤認や販売させる行為は問題になるも、学習自体は保証されているので、「AI学習禁止」は無知で言っているか、マイルールの範疇(はんちゅう)を出ないんですね。
現状、定義が曖昧なため、生成AIの解釈をどうするかの動きが出始めていますから、将来的に改正などで、線引きが明確になるでしょう。
第47条の5でも、目的上必要な限度を守っている軽微利用であれば、享受目的でも問題はないとされています。
もし学習行為を全面禁止したら、検索エンジンやフィードアプリがすべてダメになるよ。
AIによる画像生成は「著作権侵害」にあたるのか|東洋経済オンライン
AIで生成したものの著作権はどうなる? 注意したいポイント|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
絵描きの行動矛盾
こちらの記事でも述べたように、「AI学習が嫌ならネット・SNSに載せるな」じゃなく「そういう世界で現実」ですし、言っていることは「トイレはキレイに使いましょう」と変わりません。
また上記文言・主張を掲げて二次創作をする絵描きほど自分を棚に上げていて、権利元の見解を確認せず掲載、創作ガイドラインを無視して有料行為をする人があまりにも多いんですね。
権利元の二次創作ルールを調べず・守らないのは敬意を払わないのと同じ。それでAI全否定や自己権利主張はずうずうしくない?
これは法的な問題ではなく、絵描きのモラルの問題ですね。
「権利元に迷惑をかけない配慮」と彼らは言うけど、見解を無視して公開・有償OKと勝手に決めているのも矛盾しているね。
一部分だけしか見ないのは思考を停止させる
技術そのものを頭ごなしに叩くのは、物事の悪い部分しか見ようとない視野の狭い人がすることで、技術の全否定は結果的に恥をかくだけです。
CHECK!
AIイラスト・生成AIは悪ではなく、モラル問題が本質。自動車や携帯電話、ネット・SNS、ドローンなどでもあったことであり、いつの時代も繰り返されている。これは権利侵害に泣き寝入りしろと言っているのではなく、悪い面と同じぐらい良い面にも目を向けて、どう活用するかを考えていくのも大切です。
二次創作をしているのであれば、自分の権利ばかり主張するよりも前に、まず相手の権利を尊重するのが最初にすべきスジではないでしょうか。
生成AIを「盗用AI」と全否定するクリエイターのずんだもん動画を見たことがあり、モラル問題を技術否定に論点すり替えていたね。
動画内ではAI推進派を晒して批難していますが、ずんだもんは特定の個人・団体の批難する目的は禁止されています。
このように本質を探求できない、敬意・権利と声高に言いながら権利元のルールを守らないクリエイターは意外に多い。結局は「私が気に入らないから」なんだよ。
VOICEVOX ずんだもん、四国めたん、九州そら、中国うさぎ音源利用規約|東北ずん子・ずんだもんPJ 公式サイト
生成AIと二次創作の違い
目的や定義も
全くの別物
じゃあ二次創作はどうなんだよ。どっちも権利元の著作物を盗んでいるから一緒じゃん。
これもネット・SNSによくある反論ですが、著作権を知っていればこのような意見を出すこと自体がありえません。
こちらもちゃんと調べずに印象論で語っているだけの可能性が高いです。
法律や専門家の意見を引用して意見した気になっているのもダメね。その先を見てほしいもの。
生成AIと二次創作は全くの別物
- 【二次創作】ガイドラインがあったり、創作性が高ければ著作権が発生する。
- 【生成AI】ガイドラインは未整備。創作性は現状の法律上認められにくい。
先述のとおり生成AIで作成した絵は、公式・作家の絵を参考ではなく流用する点から、『二次利用』に該当します。二次創作と二次利用が別物なのは、こちらの記事で説明しました。
繰り返すように、二次創作と二次利用(生成AI)は全くの別物です。
AI絵を否定しながら権利元のルールを守らず、ガイドラインを無視して二次創作をするモラルの低い絵描きは問題ですが、二次創作と二次利用を混同し、トンチンカンな反論をする人も同様です。
「うどん料理とパン料理って全く同じでしょ。どっちも原材料一緒じゃん」と言っているようなものです。論点が違いますよね。
結局は双方とも正しく調べる意識がないんだよね。調べずに言ったり引用して意見した気になって議論モドキをする悪循環。
最後に:AIイラスト自体は素晴らしい技術
節度とモラルは守ろう
絵というのは絵描きの研究成果物であり、それがなくトレンドを反映するだけのAIイラストは、よくも悪くも没個性です。
- 表現者のこだわりが描かれているか
- マニアック知識が反映されているか
- 絵に意図が細かく含まれているか
- 遊び心で一度見て二度美味しいか
上記はAIには到底マネすることができない、人間の絵描きだからこそできる業です。AIイラストは「ただの上手いだけの絵」でしかなく、そこに作者の内面性や意図・こだわりは反映されません。
キツネ娘の次はタヌキ娘🍃
— 赤竹ただきち / Tadakichi Akatake (@MyutaUsagi) October 29, 2023
日本系キャラは足の小指を短めに描くものの、その理屈だと胃袋を描くときも意識しないといけない。
日本人(農耕)とアメリカ人(狩猟)で胃の形が違うと最近知ったので😅
女性はL字の胃が多いと、昔依頼者さんに教えてもらったんだけど、スゴいね人体❤️#イラスト… pic.twitter.com/94Q2TwoGPR
デッサン崩れは学習で将来的に改善されても、精神性の表現はそれこそAIが自我を持たないかぎりは難しいと思います。絵描きは絵の設計・独創性をより求められていくことでしょう。
ゆえに、職人工芸品と工場生産品が目的によって住み分けができているように、絵描きが描いたイラストとAIイラストは住み分けされ、成り代わることはないと思います。
AI絵はキレイでトレンドを踏まえているけど、つまらない絵だと思う。小物や動作に意味・必然性やコンセプトを感じないから。
絵描きがAIを活用すれば鬼に金棒
そのためAIイラストが悪と言いたいわけでも、生成AI技術の進化で絵描きの立場がおびやかされる……とも思っていません。
むしろ『ぱいどん』の前書きで書かれていたように、
このプロジェクトが「人間の創作活動を支援するツールとしてAIを利用する」という、新たな可能性切り拓(ひら)いた試みであることは間違いない。
ぱいどん|TEZUKA2020プロジェクト
こういった状況に進むのが一番の理想です。
絵描きが構図探求・トレンドの研究にAIを活用すれば鬼に金棒です。もちろん使うか使わないかは個人の自由ですけれど、色合いや構図の探求に悩む時間を制作に回せますからね。
つまらない絵と言ったけれど、AIは作画・構図探求ツールとして助かっているよ。写真と同じく部分部分のキメラ化で活用している。
AIイラストの問題点
とはいえAIイラストを、
- 作家の絵・作風を模倣
- 自作絵だと誤認させる
- 二次創作的作品の有償販売
こういった権利関係を明確にできず、トラブルになりかねない行為は問題です。
ツールを正しく理解しない、使わないから起こる問題ですね。
クリエイティブを軽視して生成AI絵を自作として発表・自慢するって、その絵を見た多くの人や、技術を積み上げた絵描きにも失礼なんですね。
版権物を生成AIで作成して二次創作的な作品を使って有償販売するのは、創作ガイドラインを守らない有料二次創作よりも格段に権利関係がややこしい事態になってしまいます。
そして意図的に作家の絵を模倣して自作発言・AI作品自慢は論外です。中にはi2iで作成した画像で絵描きに赤ペン先生気取りをする人もいるそうで、早急なルール整備が必要になるでしょう。
自分が偉くなったわけでもないのに先生気取りをするって、どういう思考回路なんだろう…?
絵は長年培ってきた研究成果物
絵というのは一朝一夕で上手くなるものではなく、自分自身も学生時代は1日12時間の絵描き作業・デッサン・練習、解剖学の勉強を何年もずっと続けていたぐらいです。
絵というのは絵描きの研究成果物で、上手い絵描きほど研究に誇りを持っています。
絵描き側からすれば、研究に最低数年、何時間もかかる制作をインスタント食品感覚で作品発表、しかも生成技術に自分たちの研究技術が含まれているかも……ですからね。
百歩ゆずってAIイラストをするにしても、その元をうみだした先人の絵描きたちの技術をないがしろにしたり見下すのは筋違いであり、ちゃんと敬意を持つべきです。
絵描きの過激なAI排斥運動は賛同しないも、気持ちはわからなくもない。中身のない作品で自慢されても反応に困るね。
自作にはならないしバレやすい
生成AIのイラストはよくも悪くもクセや遊び心がなく描写に歪みがあり、細かいコンセプトや場面・アイテムの意図を含むことができない点からも、AI絵だと高確率でわかります。
AIイラストは手足の指などの体の細かなパーツは今後改善されていくにしても、作者のフェチズムや内面性、表情・情景の曖昧な描写、マニアックな知識、状況説明を求める絵は難しいでしょう。
AI絵を自作と称する人は、着せかえ人形をオリジナルキャラクターだと言っているのと同じで、「それは創作なのか」と疑問に感じます。
絵を描く場合と比べ圧倒的に制作時間が短く、大量投稿で「絵描きが描いたイラスト」が流れる事態も発生しています。
「AI学習禁止」は自分を棚に上げていると思われる
絵描き側にも問題があり、AI学習禁止を表明する絵描きは数多いですが、
- AIイラストがどう作られているか
- AI生成には主に2種類(t2i・i2i)あること
- 著作権上の学習行為はどうなっているか
- ネット・SNSに絵を載せるということ
- (有料)二次創作ならガイドライン厳守
百歩ゆずって、上記すべてを理解した上で言うことが前提で、それをしない・理解しないまま、
- 「なんとなく嫌だ」
- 「周りが表明しているから自分もやろう」
- 「SNSで話題になっているから」
と、深く考えずに「AI学習禁止」をかかげ、それで創作ガイドラインが不明な(有料)二次創作をしているのを見ると、ちゃんと調べないし他人に厳しく自分に甘い人だなと感じます。
ぶっちゃけ、AI全否定派の絵も退屈な作品が多い。「カッコいい・可愛く描いただけ」が目立ち、フェチズムや意味づけが乏しい。
もちろん悪質な場合は毅(き)然とした対応は必要だとしても、まずは上記5点がしっかりできていることが前提ではないでしょうか。
AI規制という名の排斥運動や、AI絵に触れた人に噛みつきまわっては一方的に絵描きの権利を押しつけがましく強要する人に関しては、同じ絵描きでも同意しかねます。
気持ちはわからなくないけど正直やりすぎ。生成AI技術を極端に否定し、理解を強要する絵描きを見かけたら無視が無難。
法以上にモラルの問題
AIイラストを悪用・モラルに反する行為が問題になっているのは事実であり、フェイクニュースによるデマや生成AI(主にi2i)による模倣行為など、世界的にも問題視されています。
一方でネット・SNSでは絵描き・AI絵作成者・閲覧者それぞれで極端な論調が目立ち、ろくに調べず法律や専門家の意見を引用し、虎の威を借りて意見した気になっていたのは問題ですね。
ネット・SNSにおける二次創作・生成AI問題論争の大半は信用しないほうがいい。あれは彼らの性格の悪さが出る。
0か100の極論、答えありきが多く、結局は「私が気に入らないから」で、「どうするのか」という建設的な内容はほぼありません。
AIイラストは過渡期
2023年現在、まだAIイラストは過渡(かと)期なので、人間の意識も法的な問題もまだ追いついていない状態で、絵描き・AI絵作成者・閲覧者も明確な意識作りは必要です。
CHECK!
AIイラスト・生成AI技術そのものを悪とするのはくもったメガネで見ている。問題の本質・課題は使う人間のモラルとルール作りであり、科学技術が進歩するたび、同じような問題と対処は繰り返されている。AIイラストや生成AI技術をただ否定したり悪用するのではなく、AIの技術とどう向き合うのか、利点と活用、可能性を見出す方向へと、絵描きの自分はそう考えたいですね。
なお自分がAI学習禁止をかかげることは現状ないよ。住み分けが可能な分野で技術の進化自体は素晴らしいし、悪質ではない社会通念上の範囲内なら、見守る姿勢。
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