以下より『ソニック×シャドウ Tokyo Mission』のレビューになります。
ソニック×シャドウ Tokyo Mission|公式サイト
日本では朝の情報番組で軽く触れられ、おはスタやコロコロで宣伝した程度ですが、海外では一時期ムファサ、評価なら映画マリオを超えた大ヒットでムーブメントになりました。
アメリカではクリスマス前に公開され、ソニックとシャドウのアメリカ人気がいかに凄まじいかを実感しましたね。
今田ユウキ先生の入場者特典マンガも面白かった。ラジカルハイウェイオマージュがいいね。
各世界主要都市の映画ゲリラ発表による大盛り上がりの中、完全に空気だったのは日本だけでした。ソニック人気ワースト1位の国はほぼ日本なので、いまさら驚きはしませんが……
今作も原作ゲーム・アニメの元ネタが非常に多いので、海外における本作の評価もあわせつつ、映画の感想をネタバレありで記載していきます。
今作で一番印象に残ったセリフは「僕の飼い主を返せ」。
ネタバレ注意
作品の内容・結末が記述されています
映画シリーズ3作目
シリーズ3作目の今作は屈指の人気キャラクター『シャドウ』にスポットライトをあて、公開初日に4作目が発表されるなど、映画もパラマウントの看板シリーズになりました。
個人的に嬉しかったのは日本公開日がアメリカ公開日と近かったことでしょう。
1作目・2作目はアメリカ公開から半年後に公開されたので、日本で公開されたときにはYouTubeでネタバレのオンパレードでした。
本作も映画の盗撮があったりサムネイルネタバレがあるなどで鑑賞まで検索を控えていたものの、対策しやすかったので最後まで新鮮な気持ちで楽しむことができましたね。
映画の盗撮は日本と比べてゆるいと思う次第。日本だったら即通報モノなんだけど……
映画『ソニック4』2027年春公開予定で製作中|The Hollywood Reporter
ファミリー向けに設定変更
今回の映画は『ソニックアドベンチャー2』を主軸にしつつも、『ソニックヒーローズ』『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』などを混ぜたような感じです。
アドベンチャー2との大きな違いは、マリア・ジェラルドの境遇・設定とスペースコロニー・アークが存在しないことでしょうか。
仮に原作どおりだと尺が足りず、ファミリー向けとは言いがたい重たい設定になりますから、
- 「マリアを健康的な少女にした」
→ 原作では重い難病(先天性免疫不全症候群:NIDS)にかかっていた。 - 「ジェラルドはマリアのために研究しない」
→ 健康な少女なので特効薬・不老不死研究の必要がない。 - 「ジェラルドを理性がある復讐鬼にした」
→ 原作は精神崩壊した理性がない復讐鬼で、ホラー要素が強い。 - 「エクリスプキャノンだけにピックアップ」
→ スペースコロニー設定が不要。
「GUNからの支援で宇宙建造物を造った」「マリアが殺されたことで、シャドウとジェラルドが復讐鬼になる」は共通しつつも、シンプルにしてマイルドな方向性になっています。
シャドウの性格はゲームと似せながらも、少しだけお茶目な性格になっていましたね。
ちなみに原作でも言える設定で、シャドウのワープ攻撃はカオスコントロールではなく『カオススナップ』という別の技です。カオススナップならエメラルド不要のため映画でも使えます。
シリーズを経るごとにファミリー観客層が増えたと実感したよ。今回はコロコロやおはスタの宣伝効果もあったかもしれない。
カオススナップの名前は『ソニック・ザ・ヘッジホッグ(2006):新ソニ』が初出になります。
アメリカではムファサ・マリオ超えで話題になった
#SonicMovie3 is the #1 movie in America! 💙⚡️🖤 NOW PLAYING only in theatres. Get tickets: https://t.co/YYd4JnX2Mr pic.twitter.com/Vk438TXBzM
— Sonic the Hedgehog (@SonicMovie) December 22, 2024
数日ながらディズニー映画『ムファサ』の北米初週興行収入を超えて1位になったことが、北米で大きな話題になりましたね。
『ロッテントマト』という海外評論サイトでも、評論家スコアが86%、一般鑑賞者スコアが98%と、映画マリオを超えた異様な高評価です。
シリーズ1作目のころなら想像すらできなかったことが現実になっているんですね。
『ソニック』第3弾、予想を上回る大ヒットで北米初登場1位に|The Hollywood Reporter
『ライオン・キング:ムファサ』が盛り返しで北米1位!『ソニック』第3弾を抑えクリスマスの覇者に|The Hollywood Reporter
映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』公開3日で北米興行収入96.7億円のNo.1メガヒットでスタート。日本では12月27日から公開|ファミ通
The Super Mario Bros. Movie|Rotten Tomatoes
一方で不毛な争いも発生した
絶賛の一方でディズニー公式の「北米1位」に対し、「ソニック3が1位だ」というコミュニティノートがつき、ソニック派とディズニー派がX(ツイッター)上でバトルになりました。
自分も情報のひとつとして売上や興行収入を持ち出すことはありますけど、業界人でもない一般消費者が売上を気にするのはおかしな話で、売上で作品の優劣を語るものじゃないですからね。
日本サブカルチャーでもよくある話ながら、海外でも不毛な争いがあるのを再確認しましたし、
ソニックの映画は観客を喜ばせるために映画をつくる。ディズニーはスポンサーや一部の思想の人のために映画をつくる。
今のディズニーは観ない連中に媚(こ)びて映画をつくるから嫌いだ。だったら観客を楽しませたソニックが勝ってほしい。
このように語っていた人もいたほどで、「ソニックのほうが上だ」という感情より、ここ数年のディズニーの制作姿勢に対する不満がこの件で爆発した側面のほうが強い印象です。
2023年にはボブ・アイガー氏が映画の内容が偏(かたよ)っていたのを認めて改善傾向にあるものの、多様性を強調しすぎた傷あとは深いですね。
とはいえ、海外のソニック界隈(かいわい)は日本と比較にならないほど広がっているぶん、過激な人も一定数いるのも事実。
Disney Busted by X Community Notes for Claiming ‘Mufasa’ Beat ‘Sonic 3’ This Weekend|Pirates&Princesses
元ネタと思われる内容一覧
邦題の『ソニック×シャドウ』 | 『ソニック×シャドウジェネレーションズ』のロゴと同じ。 |
原題のロゴデザイン | 『アドベンチャー2』のロゴを踏襲している。 |
監獄島 | 『アドベンチャー2』のプリズンアイランド。 |
ゴールからのファンファーレ | 原作シリーズにおけるゴールの流れと同様。 |
ソニックの記念日サプライズ | 『ジェネレーションズ』のソニック誕生日サプライズパーティ。 |
チームソニック | 『ヒーローズ』のチームソニック。 |
ソニックの「機内上映も機内食もない」 | 『アドベンチャー2』のソニックのセリフ。 |
ヘリから3人が落下して着地までのシーン | 『ヒーローズ』のフライフォーメーション。 |
シャドウのワープ攻撃(カオススナップ) | 『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』のOP。 |
ソニックが倒れ込み背後にシャドウが立つ | 『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』のOP。 |
シャドウの銃とバイク | 『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』ネタ。 |
チャオガーデン | 『アドベンチャー2』のチャオガーデン。 |
彗星が割れてシャドウが出てくる | 『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ』のブラック彗星に酷似。 |
テイルスが下水道の水を流すシーン | 『アドベンチャー』のパーフェクトカオス出現シーン。 |
マリアとシャドウが観た怪獣映画の怪獣 | 『アドベンチャー2』のバイオリザード。 |
月夜に花畑へ寝転がるシーン | アニメ『闇の序章』の1シーン。 |
ソニックが膝から崩れ落ちる | 『ワールドアドベンチャー』のランクEモーションに似ている。 |
VRシーンのエッグマンランドのロゴ | 『ワールドアドベンチャー』のエッグマンランドのロゴ。 |
エクリプスキャノン | 『アドベンチャー2』のスペースコロニー・アークに搭載された光学兵器。 |
エクリプスキャノンのデザイン | 『ソニック2』のデスエッグとスペースコロニー・アークを融合した意匠。 |
壁一面の数式 | 『アドベンチャー2』でジェラルドが投獄中に書いたシーン。 |
エッグマンの着メロ | 『アドベンチャー2』のエッグマンのテーマ『E.G.G.M.A.N.』 |
エッグマンのシーンで流れるBGM | 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ(2006)』のエッグマンのテーマ。 |
チームソニックのメンバーを選択するシーン | アイコンが『マニア』のビジュアルのもの。 |
ナックルズのオバケを怖がる性格 | ナックルズの苦手なものは日差し・オバケ。 |
重力装置がある部屋 | 『アドベンチャー2』に登場したクレイジーガジェット。 |
スーパーソニックとスーパーシャドウが一騎打ちの対決 | アニメ『ソニックX』の1期後期OP。 |
エクリスプキャノンに格納された人型兵器 | 『アドベンチャー2』のGUNハンター。 |
スーパーソニックとスーパーシャドウが共闘する | 『アドベンチャー2』のファイナルハザード戦オマージュ。 |
シャドウのリミッターリング | アニメ『ソニックX』の設定だった(ゲームにも逆輸入)。 |
ジェラルドのエッグマンに対する関心の低さ | 原作でもジェラルドはマリアびいきで、『フロンティア』でエッグマンも苦言した。 |
エッグマンの本名「イーヴォ・ロボトニック」 | もともとアーチー・コミック版の設定だったものを公式へ逆輸入した。 |
スーパー化した2人の決めポーズ | 『アドベンチャー2バトル』のOP再現。 |
エプリクスキャノンで月を破壊 | 『アドベンチャー2』でもエッグマンが月を破壊している。 |
エンディングの3Dソニックたち | 『ソニック・ザ・ファイターズ』のポリゴンを改造したもの。 |
ポストクレジットでシャドウ生存 | 『ヒーローズ』で生きていたことにされた。 |
見た限りの元ネタであろう部分の一部をピックアップしました。
ゲームと同様に映画もオマージュが多く、AKIRAやバイオハザード、原子怪獣現わる(もしくはゴジラ)あたりがわかりやすいかもしれません。
あとはポストクレジットのメタルソニック登場シーンはメフィレスの増殖か、ドラゴンボールのメタルクウラ感がありましたね。
キャスパーの映画が出てきたのはビックリした。
追 記
エンディングアニメーションはソニックジャムではなく『ソニック・ザ・ファイターズ』のモデリングを改造していることを担当者が明かしたため、訂正いたします。邦題がなぜ『TOKYO MISSION』なのか
『TOKYO MISSION』ってちょっとダサくない?
東京が出ていたのは序盤だけじゃないか!
このように言われていた邦題の理由は公式サイトで言及されていて、アメリカのパラマウントスタッフが日本セガと検討し、日本ファン・観客への敬意を込めて選定した邦題だそうです。
ただ後述するように本作で東京のシーンは基本的に序盤だけで、ほとんどGUN司令部があるロンドンを主軸に繰り広げられます。
日本人はタイトルにナンバリングがつくと抵抗感が出るそうですし、邦題の理由を知るとその思いに頭が下がる一方、タイトル詐欺にもなりかねないので複雑な気分ですね。
ロンドンが舞台なのは、イギリスでもソニックは絶大な人気があるからでしょうか。
GUN司令部がロンドンにあるのはドラマ『ナックルズ』でも明かされているね。
映画『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』12月27日(金)日本公開決定!予告編&ポスター 全世界一斉解禁!|公式サイト
自虐ネタが増えた
パロディではないものの、チャオガーデンでテイルスが名探偵ピカチュウに間違われるシーンがありましたよね。
「原案が同じ日本作品だから」もあるでしょうが、初期の映画ソニックデザイン(アグリーソニック)が世界中で否定され、名探偵ピカチュウと比較されたことへの自虐ネタだと思います。
このアグリーソニックは2022年のディズニー映画『チップとデールの大作戦』で登場し、パラマウントやセガ公式もアグリーソニックを黒歴史どころかネタ認定しているんですね。
実際に今作と連動して、アメリカでの若者間で流行しているアグリーセーターとかけあわせた『アグリーソニックセーター』として、アメリカでは実際に販売されました。
パラマウントが代表する人気映画シリーズになったからこそできるネタでしょう。
当時の紹介映像で「歯がリアルすぎて気持ち悪い」と言われたのもあって、歯をキラーンさせている自虐演出もニクい。
Detective Pikachu director weighs in on Sonic the Hedgehog live-action backlash|The Verge
龍が如く吹き替えは「Web公開版」
「やりすぎ」と動画タイトルについているように、これはあくまでもWeb公開限定版であるため、実際の吹き替え版では関西弁で喋ったり、タウリナーも出てきません。
ですがシリーズ1作目なら、(聞くところによると)配給会社の指示で声優選定がセガ側からは提案しにくかった話を踏まえると、セガ側の要望もいけるようになったとも言えるでしょう。
テイルス以外の吹き替え声優が異なるのもこれ。テイルスが同じなのは英語版もゲームと同じで、当初はサプライズ出演だったから。
洋画の吹き替えオーディションってどんなのがある?合格の秘訣は?|声優を目指しちゃえ【エリソデラジオ】
映画だからできたシャドウの銃所持シーン
『ソニック×シャドウジェネレーションズ』のレビューで述べたように、ゲーム本編でシャドウが銃を持つ(銃そのものを出す)とレーティング規制に引っかかる可能性が高いんですね。
そのため、ゲーム本編で本格的にシャドウが銃を持ったのは2005年の『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ(シャドゲ)』ぐらいでした。
しかし映画ではゲームほど規制が厳しくないので、架空の光学銃を持たせる形にはなるものの、「シャドウが銃を持つ」を事実上達成したんですね。
バイクについては海外ファンの解析によると、映画シャドウが乗っているのは『ドゥカティ パニガーレV4 SP』をカスタムしたものではないかとのことです。
バイクに加えて銃も持ったのは海外勢大歓喜で、トレーラーで喜びの発狂をしていたよね。
しかしマリアのような子供を銃で撃つシーンは厳しいらしく、誤射で装置を壊した影響で亡くなった形に変更されました。
Panigale V4 SP2 30° Anniversario 916 – The power of legacy|Ducati Scrambler
ジェラルドが100歳以上生きていた理由
映画のジェラルドは銃殺刑になった原作とは違い100年以上生きている人物になっていて、なぜ年をとらず50年以上も刑務所にいたのかは本編で明かされていません。
ジェフ・ファウラー監督によると100年以上生きていた理由は用意されていて、「シャドウのトゲにあるカオスパワーの影響で不老長寿を実現していた」とされています。
上記のシーンは収録していたものの、公開時にカットされたそうですね。
個人的にそのシーンは設定補完としてあったほうがよかったかも。
Sonic the Hedgehog 3 Director Reveals Deleted Jim Carrey Scene (Exclusive)|Comic Book.com
Live&Learn大放出
劇中では随所にアドベンチャー2のメインテーマ『Live&Learn(リブアンドラーン)』が使われています。ソニック好きなら知らない人はいない屈指の名曲ですね。
使いどころもちゃんとアドベンチャー2の展開をふまえていますから、より原作ゲームを知っていると燃える展開になっています。
これまではグリーンヒルのBGMが使われている程度だったので、ここまで原作ゲームの楽曲、しかもボーカルつきでピックアップされたことからも本作の気合度がうかがえます。
『Escape From The City』もクレジットを観たらあったそうだけど、わからなかったね。
Live&Learn使用の訴訟問題
アドベンチャー2経験者ならLive&Learnが使われるのはテンション最高潮のシーンだったものの、その裏でLive&Learnにおける権利問題の訴訟がありました。
もちろんパラマウント側もLive&Learnを無断使用しておらず、セガや後述するジョニー氏に楽曲使用の承諾をとったのは明かされています。
この問題は映画というより、映画と同時期に起きた楽曲そのものの問題ですね。
‘Live and Learn’ musician suing Sega over ownership of iconic Sonic the Hedgehog song|Polygon
Crush 40 Confirms Live And Learn Will Appear In Sonic 3|THE GAMER
どちらの著作物かが争点
というのもLive&Learnを歌ったCrush40のボーカル担当ジョニー・ジョエリ氏が、
Live&Learnのマスターレコーディング・作曲の所有者は俺だ。使うんだったらロイヤリティ料を俺にも払ってくれ。
と、映画公開のタイミングで多くのゲーム作品(+日本版ソニックX)でLive&Learnが使われていたことを知り、アドベンチャー2のときしかロイヤリティ料が支払われなかったそうです。
要はLive&Learnがセガの著作物にあたるのか、それともCrush40(ジョニー氏)の著作物になるかで争点になった感じでしょうか。
ジョニー氏はLive&Learnがここまでゲームに使われていることを知らなかったそうですね。
「20年以上関わっているなら知っているだろ!」となるだろうけど、ジョニー氏はゲーマーじゃないと言っているからね。
映画自体は楽しんでいる
First stop: the wrong theater 🎥🍿… Second stop: Sonic 3 🌀🐾—Johnny always finds his way (eventually) 😆 #sonic3 #liveandlearn #johnnygioeli pic.twitter.com/zpMuBkw3P3
— Johnny Gioeli (@Crush40Johnny) December 20, 2024
セガとは争っているものの、彼自身はセガやソニックを嫌いになったとかはなく、むしろ本作を喜びながら観たり、ファンの交流を楽しんだそうです。
彼自身も「長年の良好な関係は今後も続けていきたい」と言っていますから、いい落としどころがあればと、彼の歌声が大好きだからこそ思います。
映画でLive&Learnを使うことは許可しているからね。この件は詳しく掘り下げず見守ろうかと。
ドラマ『ナックルズ』との関係
パラマウント+で配信されたドラマ『ナックルズ』は、本作の前日譚(たん)となっています。
しかし本作はドラマ版を見なくてもいいように作られていて、パンフレットでソニックシリーズ統括の飯塚プロデューサーも語っていましたね。
『ナックルズ』の簡単な感想
書くタイミングを逃していたのでここでドラマの感想を語ると、総評的にはゲームネタが随所にあり、要所要所でのナックルズがカッコいいので、2択で言えば面白かった作品ではあります。
とはいえクセが強いウェイド一家の描写が多く、悪役もあまり魅力がなくて「エッグマンのおさがりとナックルズのトゲのパワーで調子にのった金儲け集団」という感じでした。
エッグマンの元部下やGUNに復讐するためなど、磨けば魅力的な悪役になっていたのに、掘り下げが少なくて感情移入しきれなかったですね。
総合的には楽しかったけど、中盤からは蛇足でスローテンポな部分も見られて、後半は視聴が少ししんどい部分もあった。
『ウェイド&ナックルズ』なら問題なかった
これ『ナックルズ』じゃなくて、『ウェイド&ナックルズ』の間違いだろ!
海外だとドラマ版は賛否両論で、このように語っている内容は同意でした。
『ナックルズ』というタイトルがよくなかったですし、『ウェイド&ナックルズ』にすれば、より先入観なく楽しめただろうと思います。
重ねるように総合的には楽しかったドラマで、魅力もしっかりあります。ウェイドという人物の掘り下げと、ウェイド一家と交流する優しいナックルズを楽しむドラマですね。
パチャカマやイブリース、カオスドライブなど、シリーズネタも随所に見られます。
もう先入観はなくなっているから、もう一回ドラマを見たら印象が変わるかも。
マスターエメラルドをウェイドに託した理由
話をもどしてドラマ版を観たらわかるのは、「ナックルズとウェイドは固い絆で結ばれた師弟・友人」であることです。だからマスターエメラルドの保護をウェイドに任せているんですね。
マスターエメラルドがホッケーのストーン代わりに使われているのはアレですが……前作でもウェイドはマスターエメラルドの重要性を理解していますし、彼なりの「隠しかた」でしょう。
「未熟なソニック」の性格が本作で発揮
中盤以降、シャドウが誤って家族のトムを意識不明の大ケガをさせたことで、ソニックはシャドウに激しい復讐心を抱くようになり、テイルスたちとも仲間割れをしてしまいます。
ここは「映画版のソニックは年相応に未熟な性格」だからこそ可能な場面で、アニメ『ソニックX』でも仲間が傷つけられてソニックがダーク(ダークソニック)化した例外もあります。
とはいえ原作ソニックは「生意気だけど精神的に成熟したヒーロー」として描かれることが多く、家族を大切にしているからこそ怒りに支配されるのは、映画ソニックの弱さであり魅力です。
海外では映画ソニックのことを「ティーンソニック」と分類されたこともあるように、ティーン特有の精神的もろさがあるのは、映画ソニックだからこその持ち味ですね。
逆に彼を諭そうとするナックルズは一番の大人でしたし、ゲームではナックルズがソニックに説くなんて基本的にないですから新鮮でした。
ここまで達観的になっている部分があるのは、ドラマ版におけるウェイド一家の交流がいい影響を与えたのかもしれません。ポケモンを知っていたりと順応性も高いですからね。
映画は「ソニックの家族愛」が共通テーマとして描かれています。
これを観て「映画吹き替えは中川ソニックじゃないとダメ」と実感した。金丸ソニックはあまりにも「精神的に大人」すぎる。
本作の気になる点
全体的には満足している映画ではあるものの、以下の点が気になりました。
『TOKYO MISSION』?
先述のとおり邦題は『TOKYO MISSION』なのに、東京が舞台になったのは序盤だけで、中盤以降はGUN本部があるロンドンを主軸に進行します。
日本への感謝・敬意でそのような邦題を映画スタッフが命名したのは理解しますし、バイクシーンは見ごたえあったものの、もう少し東京の場面は欲しかったところです。
ハリウッド映画にありがちな「意味不明な日本感」が珍しく少ない映画で、細かいところを見れば不自然ですが中国語は混じっていないし、日本スタッフも関わって作られた渋谷ですからね。
東京にいるシャドウをもっと見たい人は、ゲーム『ソニック×シャドウジェネレーションズ』のDLCを楽しみましょう。
原題は『Sonic the Hedgehog3』で、タイトルに「Tokyo」がつくのは日本版だけです。
GUNの存在感
GUNの組織そのものは物語に深く関わりがあるも、GUNの人間キャラクターの存在感がイマイチ薄かった部分はあります。ウォルターズ司令官本人は序盤と回想シーンで終わりました。
ロックウェルも「ウォルターズ司令官と違ってソニックたちを信頼していない」というポジションでありながら、中盤以降は活躍がほぼありません。
原作ゲームのGUNも、敵対勢力に負けるかませ役か、ジョジョで言うスピードワゴン財団のような便利屋ポジションです。ただ活躍が後半でもあったらいいなと思いました。
カリスマがあるゲームと違って映画のGUN司令官は年相応のおじいさん軍人だからね。
シャドウの葛藤と後半の急展開
映画シャドウは原作と比較すると深刻な設定ではなく、ジェラルドに洗脳されて復讐マシーンになっているわけでもないため、後半のシャドウの葛藤があっさり気味です。
映画も映画で50年間マリアを殺した人類に恨みを抱いてコールドスリープにされる境遇ではあるも、逆に言えば原作設定が重すぎるんですね。
映画のシャドウはダークヒーローというより「闇堕ちしたソニック」の側面が強く、性格も「しっかり話せばわかってくれる」感じなのもあり、葛藤が弱く見えてしまいます。
アドベンチャー2でも改心の瞬間はあっさり気味だったとはいえ、改心する前のエミーの説得とマリアの真意がありましたからね。
和解後もかなりの急展開で物語をたたみかける勢いで進みます。後半の熱い展開は大満足ながら、人によっては「ペース配分が上手くいっていない」と感じる場合もあるでしょう。
マスターエメラルドやカオスエメラルドがちゃんと戻ったかも気になる。ナックルズやウェイドの手に渡ったのだろうか。
総評:話がわかりやすくポイントを網羅した良作
シリーズをとおして頭を空っぽにして楽しめるファミリー映画で、アドベンチャー2・ヒーローズ・シャドゲなどをプレイしていると面白い小ネタや、刺さるポイントも網羅しています。
エッグマンの孤独さとストーンとの関係もかなり掘り下げられているので、ラストの2人は感動しましたね。中盤のレーザートラップで祖父と謎ダンスしていた人とは思えないほどです。
シャドウ好きはどの部分が好きなのか、アドベンチャー2好きはどんな展開を求められているのか、その理解も深く愛にあふれていました。
これはアメリカでの評価・口コミで結果がでていて、ファミリー映画にしては異様の高評価を叩き出し、ムファサや映画マリオとも肩を並べているほど絶賛されているんですね。
パンフレットの解説によると、ジェフ・ファウラー監督は過去にシャドゲのCGムービーの制作を担当していたそう。
劇中歌でワンオクの楽曲が使われているのは、ソニックフロンティアつながりでしょうね。
日本宣伝はまだやっていた部類
映画特典のおかげでコロコロでシャドウまんががやってるのを初めて知る方もいるみたいです!
— 今田ユウキ👶シャドウ/Shadowまんがコロコロ (@pungter) December 31, 2024
2話まで無料公開してるのでお正月休みは読んでみてね〜🥳🥳#映画ソニックxシャドウ#SonicMovie3#漆黒シャドウ https://t.co/3D0BrOufIf
日本での知名度の低さは「いつものこと」ですが、今作はおはスタやコロコロで特集を組むぐらいは宣伝していて、『モアナと伝説の海2』でも予告編があったみたいですね。
全国の大型ショッピングモールなどの宣伝や試写会もしたため、もし「全然宣伝していない」と言う人がいた場合、リテラシー・リサーチ力の低さを自己紹介している無恥な人です。
なんでソニックって生まれの日本だけ人気がないの? 日本以外は映画大好調なのにおかしくない?
海外の人たちは日本のソニック人気の低さを悩ましく思ったり、日本ファンに同情しているみたいです。とはいえ「ソニック売上の95%は海外」と公式が言うぐらい主戦場は海外ですからね。
なお自分が観に行ったときは、ファミリー層の観客が前作と比べて多かった印象です。
すごく多いわけではないにしろ広いホールに6割は席が埋まるほどで十分でしたし、前作でも感じましたが、家族連れが満足そうに感想を述べていたのは微笑ましいものでした。
TikTokerのしんのすけ氏いわく、「マーベルやDC映画が忘れているハリウッド映画の面白さを思い出させてくれた映画」だそう。
次回作はCD+ヒーローズ路線?
ポストクレジットでもわかるように、次回作はエミーとメタルソニックが登場します。アドベンチャー2からソニックCDに戻るのは考えにくく、ヒーローズ+ソニックCD路線でしょうか。
だとすると、次回作ではメタルーオーバーロードがラスボスで登場しそうです。
2027年公開だと確定しているので、エミーはどのような境遇になるのか、メタルソニックの大群は誰がつくったのか、次回作が楽しみですね。
エッグマンは生きているだろうと。ジム・キャリー氏も続編出演の意欲があるみたいだしね。
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