ディズニー実写作品の『ピノキオ』や『リトルマーメイド』で、ブルーフェアリーやアリエル役に黒人を起用するなど、いわゆる『ブラックウォッシュ問題』が国内外問わず騒がれています。
これらの問題を提起する記事を見ていると、
黒人起用に違和感を感じるのは根底に差別意識があるから。
このように述べる人が多く見られたんですが、自分からすると、
論点というか、前提定義がズレていない?
と感じる部分がありましたので、
- ブラックウォッシュ問題とはなにか
- 黒人化=差別?
- なんでもかんでも差別にする風潮
こちらのデリケートな問題の違和感について、いろいろ調べた上で述べていきます。
個人の見解です
ほかの意見もご参照ください
ブラックウォッシュとは?
ブラックウォッシングとも
『ブラックウォッシュ(ブラックウォッシング)』とはそもそも何かですが、
- 【ブラックウォッシュ】肌が白く描写された人物を、肌を黒く改変すること。
この描写が2023年現在、もっとも目立つのはディズニー作品であり、冒頭でも紹介したようにブルーフェアリーやアリエルが黒人系キャラクターに変更されています。
そう考えれば、映画版『名探偵ピカチュウ』の主人公であるティムもブラックウォッシュだったとも言えますね。
元ネタのゲーム作品では白人だったけど、映画の知名度が高いからそこまで言われなかった感じ。
逆に黒人系キャラクターを白くするのは『ホワイトウォッシュ(ホワイトウォッシング)』とよばれ、原作ありきの作品では批難の対象でした。
しかし、なぜホワイトウォッシュがダメで、ブラックウォッシュはOKなのかが不思議ですね。その理屈なら、両方ダメにしないとスジがとおりません。
ディズニーの場合、ブラックウォッシュは「過去の黒人描写に対する罪滅ぼし」「黒人アニメーターもいるから」と言われているそうです。
でもそれがブラックウォッシュOKの理由にはならない。ある意味白人系への報復行為にもとれるし、平等からほど遠いと思う。
ホワイトウォッシング (配役)|Wikipedia
過激化するポリコレ問題
表現の自由と
ポリコレ
ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス=多様性・中立的配慮)問題は歴史にも深く結びついているので、あまり偉そうなことは言えないし、全否定しようとも思っていません。
ポリコレも元は弱者などとよばれた人たちに対する、優しさや思いやりによる概念ですからね。
しかしネット・SNSで過激なポリコレ表明や動画を出している人は見かけ、フィクションの表現を萎縮(いしゅく)させたり、今回のように人種配慮の名目で改変させようとします。
これをネットスラングで『ポリコレ棒』と言われています。
現実とフィクションの区別がついていないし、社会問題を盾にして自身や社会の不満をポリコレという大義名分ですり替えているのが否めない。
もちろん、ポリコレを考える人全員がコンプレックス持ちだとは思いませんが、過激になっている人ほど、そのような印象を受けるんですね。
それを悪い大人が政治利用したり利益のためにポリコレを悪用して、社会問題として広がっている感じでしょうか?
「とりあえずポリコレ要素を入れとけばOK」と、必然性がないやっつけ改変が目立つね。
トランプ氏就任から聞くようになった「ポリコレ棒」ってどういう意味? |ねとらぼ
アメリカでの「ポリコレ」の加熱のウラにいる「i世代」の正体|現代ビジネス
世界中でポリコレが嫌われる最大の理由 – 御田寺圭|livedoorニュース
ブラックウォッシュ=差別?
何が問題なのか
この問題について書く前にいろいろと記事を見て回りましたけれど、ブラックウォッシュに違和感を覚える人は、
勝手な都合で元のイメージを壊すことはしてほしくないし、一方的に価値観を押しつけないでほしいんだけど……
このように述べているのに対し、ブラックウォッシュ反対派を否定する人たちは、
黒人配役に文句を言っているのは根底に多様性を理解しない、差別意識があるからではないのか。
おおむねこういった主張が目立ちました。
黒人系男性が語るブラックウォッシュ問題
上記の動画は参考のひとつとして紹介します。
タイトルで誤解しそうではあるものの、アメリカで増えているブラックウォッシュ問題について黒人系である配信者さんが、
みんな黒人にすれば幸せ? そんなに黒人キャラを見たいなら自分で作品創れよ! 既存の素晴らしいキャラクターを多様性で無理やり改変させるのは間違っている!
このように苦言する内容です。
同じ黒人系でも苦言する、違和感を覚える人は、彼のみならず大勢いますので、必ずしも黒人全員が「白色系黒人化計画」をしているわけではないことは留意すべきですね。
問題の前提定義
ここまでの内容で、察しのいい方はわかると思います。お互いのブラックウォッシュ問題への前提定義がそれぞれ違うんですよね。
- 【苦言する人】既存作品の改変と定義。
→ 「勝手な都合で改変すべきじゃない」 - 【苦言を否定する人】差別問題と定義。
→ 「問題の根底は差別意識にある」
双方の前提定義がそろっていないのですから、平行線になるのは当たり前です。
ブラックウォッシュに苦言する人は、一方的な都合による不必要な改変に嘆(なげ)いているわけです。人種うんぬんではなく、既存作品のキャラクターデザイン変更行為が問題です。
黒スーツのバットマンを勝手な都合で、説明もなく白スーツで登場させているのと同じ感覚です。
それで「なんで白なの?」と言ったら、「服装を選ぶ自由を奪うのか!」と言い返すようなもの。論点違うことがわかるよね。
そこにちゃんとしたエビデンス(論拠)があればまだしも、その理由が、
- 「そういった容姿の記述はなかったから」
- 「歌や演技が上手かったから」
……と、質問の答えになっていない回答で、説明というより中学生が苦しまぎれに考えた言い訳のような印象を受けます。
それで価値観を一方的に押しつけようとするから、嫌われる要因になると感じますね。
「元々のキャラクター設定と関係あるの?」な弁解が本当に多い。
答えありきで見ている
そして差別意識のせいだと持論展開する人は、答えありきで語る人が目立ちます。
理由? そんなの差別意識しかないに決まっているでしょ?
だから苦言する人がなぜそう思うかの背景を見られておらず、批判の誤用をしている(=批判リテラシーが低い)のも、くもったメガネで述べている印象をより受けました。
既存作品と新規作品、現実とフィクションの話を混同しています。全部一緒にごちゃまぜにして話しているのも、話がかみ合わない理由です。
本当に問題を考えるならば、その固定概念をまず払ってもらわないと話し合いになりません。
ポリコレを推進する人のみならず、アレルギーのように全否定する人も、みんな極端で批判リテラシーが低い。
『批判』の言葉を多用しすぎで前提定義のすり合わせをされていませんし、本質を見る意識を感じない部分は否めません。
最後に:なんでもかんでも差別呼ばわりする風潮
押しつけ・決めつけは
議論以前の問題
以上、ネット・SNSで言われている作品のブラックウォッシュ問題について、違和感を感じたところを述べていきました。
元の作品が好きな人にとっては、登場人物の人種がどうとかじゃなくて、
このキャラクターは元々のデザインがこうなんだから、大人の事情を理由にイメージを勝手に変えないでほしいし、価値観を押しつけないで。
これがすべてなんですよね。ブラックウォッシュ問題は、既存作品のキャラクターを利用しようとするからややこしくなるわけです。
新規で作品やキャラクターを作り、信念・意義を確立していれば、肌の色関係なしで受け入れられることは証明されているからね。
『メン・イン・ブラック』のJ、『サウスパーク』のシェフ、『進撃の巨人』のオニャンコポン、『ポケモン』のルリナは人気の黒人系キャラクターです。
つくり手の事情は「どうでもいい」
原作がある・元作品がある場合、元々のイメージで見てしまうのは当然です。肌の色も服装や髪型のように、キャラクターをかたちづくる要素です。
- 「ハリウッドの歴史がこうだから」
- 「そのように描いてきたから」
という制作・企業側の勝手な都合は、観る側からすれば「どうでもいいこと」です。彼らは「結果の作品」で判断しますし、商業作品はお遊戯会やサークルの演劇じゃありませんからね。
作品評論で消費者側がつくり手の事情を理解するならまだしも、クリエイティブで自分たちの都合を持ち出して言い訳や同情を求めるのはご法度(はっと)です。
そういうことをするクリエイターは申し訳ないけど、プロじゃない。まあ上層部や団体などの大人の事情とかは察するけどね。
百歩ゆずってちゃんした理由・キャラクター設定を説明できるのであればいいにしても、「なぜ元のイメージから変えたのか」を明確に説明できているケースはあまり見られません。
ほとんどが「それってキャラクター設定と関係ないよね?」な内容ばかりであり、元のキャラクター像が好きな人への納得できる説明ではないから、反発されるんですね。
現実とフィクションの混同
それなのに、大人の事情でいきなりイメージを塗り替えたキャラクターを見せられて苦言すると、
違和感を持つのは無意識な人種差別意識があるからでしょ? 別に人種変わってもいいし、もっと多様性を理解しなよ。
って言い放つのは、さすがにそれはひどい言いかたではないでしょうか。
「肌の色=人種問題=差別意識」と安直に結びつけて、純粋に作品・キャラクターが大好きな人を差別主義者呼ばわりしているほうが、人種以前に人としてすごく失礼です。
暴力ゲーム・成人マンガ好きが殺人マニア・性犯罪者になることはほぼないのと本質的に一緒です。
ポリコレを苦言する人=差別主義者なら、納得できるエビデンスを出すのがスジ。
問題を考える自体はいいこと
ただ彼らを全否定したいわけじゃなく、人種関係をはじめとしたポリコレは非常にデリケートな問題で、真剣に問題を考える自体はいいことです。
キャラクターデザインも、しっかりと納得のできる、エビデンスが明確な理由を掲示できるなら、挑戦や意欲作としてやるのもアリです。
しかし現実とフィクションを混同して既存作品を大人の都合でねじ曲げるし、キャラクターの出生を変える行為に納得のいく説明をしないから、いろいろ言われてしまうんですね。
ブラックウォッシュに違和感を感じた人って、仮に肌の黒いキャラクターに白人系を起用したら、同じように苦言すると思いますよ。
百歩ゆずって、物語や人物設定に必然性・意味があるポリコレをやってほしいね。「とりあえず入れたやっつけポリコレ」が多い。
ポリコレ作品がつまらない理由|note
ポリコレの形骸化
現実の社会問題とフィクションの問題・表現は分けて考えるべきですし、海外だと差別問題をはじめとしたポリコレの概念を、政治利用や利益目的でやるような悪い大人も存在します。
ポリコレってなんなんだろうなぁ……形骸(けいがい)化していないかなぁ……
ネット・SNSで声高に主張する人ほど、「自分の意見を持たない・考えることができない人が、その悪い大人に影響されて意識高い系をやった結果」という印象に感じます。
結局は人種差別・多様性を建前にした「私が気に入らないから」でしかなく、その個人的感情を社会問題にすり替えている部分が否めませんし、本当に形骸化しているんですよね。
差別差別と言って、実は自分自身が多様性を受け入れない差別思想になるケースはまま見かける。ツイフェミとかわかりやすいよね。
これは本来のポリコレの目的とは真逆の行為であり、同意しない相手に強い言葉や罵倒語をぶつけるのも矛盾を感じます。
言わずもがな、そういった人たちへ同じように強い言葉や罵倒語で叩くのも同類。だから正しい批判の精神は必要。
無計画な多様性は魅力をなくす
ポリコレ作品はつまらないと言われるのも、世間を気にするあまり作品が無個性化しているからであり、ブラックウォッシュのようなやっつけポリコレはそれを体現しているんですね。
新規作品でやっているなら百歩ゆずってまだいいけど、既存作品でやっつけポリコレをやられたら頭がハテナでしかない。
「とりあえずポリコレ要素を入れとけ」みたいな安直に入れて配慮しました感は、作品やキャラクターに悪い意味の違和感を持たせ、魅力をなくしてしまいます。
冒頭でディズニー作品を挙げていましたが、2023年末にディズニーCEOのボブ・アイガー氏が「メッセージ性に傾倒しすぎて本来の目的を見失っていた」と認めています。
「ディズニーがポリコレをやりすぎたと認めた」とする記事は正確じゃない。あくまでも「メッセージ性が強かった」だよ。
ただ「ポリコレのことは全く言っていない」とも言いがたい部分があります。微妙なラインで語っていますね。
ポリコレが完全悪とは言いませんけれど、安易な多様性は繰り返すように作品の魅力をなくすだけであり、既存作品を改変するようなブラックウォッシュなどは顕著(けんちょ)です。
それを含めて、ポリコレ問題は日本含めて海外でも嘆かれているのではと思います。
そう考えると日本のマンガ・アニメは優秀。「自分の見たいジャンルを自由に選べ、肌・容姿・性別関係なしに魅力的なキャラクター」という多様性を実現している。
すぐ差別だと決めつけるのではなく、前提定義を設定しての正しい批判や、既存作品のやっつけポリコレは本当に意義があるのかを、一度立ち返って考えてほしいと願うばかりです。
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プロフィール
赤竹ただきちTadakichi Akatake
仕事で「YMYL(医療・健康・お金)記事をほぼ生成AI任せに書く」という、「これありえないだろ……」という他社の事案に遭遇してしまい驚きを隠せない。
というのもGoogleは2016年にWelq事件があったから、YMYL記事に関しては独自性・信ぴょう性をかなり厳しくチェックするようになっているんだよね。
それにYMYL記事を生成AI任せに書くとペナルティになる可能性も発表していて、こういった記事では生成AIを使うのはいいにしても、検証・監修で補完することが必須。
これを理解せず「SEOを上げるお手伝いをします!」という業者がやるんだから、いくらなんでもリテラシーが低すぎる。それで検索ペナルティを受けたら損害賠償モノなんだけどなぁ。
イラストレーター・マークアップエンジニア(コーダー)・Webデザイナー・ライターのウサギ好き。多様な絵柄を描け、外国人でも絵でわかるマンガ、ウサギと口内描写にこだわりを持つ。
コーディングとWebデザインは両方可能。納期が短いなどいった案件では、「デザインとコーディングのアドリブ同時進行」という荒業もおこない、SEO施策を意識したマークアップも得意。
フリーランスとの進行ディレクション・指示や、面接担当の経験が幾度もあり、プロ・趣味問わず、絵描きを含めたクリエイティブの姿勢には少々シビア。
「自省・リテラシー・正しい批判の認知・意識向上」をライフワークとし、当サイト記事も「気づき・理解・学ぶ」を全体テーマとして執筆。
当サイトの記事は中学生でも理解できるように計算しながら執筆しており、ネット・SNS上で「わかりやすく参考になる」とご好評の声多数。
「言い訳せずに下手でも自分の弱さを認め、背かず自省して学ぶ意識を忘れない(=謙虚な)人」は、年齢・性別問わず好きなタイプ。
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