2022年あたりから、AIが作成した生成イラストが投稿されるのが当たり前になりつつある一方、AIイラストをあたかも自分が描いたかのように扱う人も問題になっていますので、
- 自作発言による問題点
- AI技術を絵描きはどう思うのか
- AI絵作成者によるAI絵師の自称
- 生成AIの二次創作について
このあたりの話を軸に述べ、記事の後半では、
AIイラストの学習行為は作品への著作権侵害行為だ! 世界中でもその流れになっているんだからAI絵は規制すべき!
じゃあ二次創作はどうなんだよ。どっちも権利元の著作物を盗んでいるから一緒じゃん。
生成AIを完全悪のように扱う極端な主張を拡散したり、「AI学習禁止」と書く絵描きや、生成AI(≒二次利用)と二次創作を混同して、筋違いの反論を書く人。
このふたつの問題点や是正についても述べていきます。
個人の見解です
ほかの意見もご参照ください
AIイラストとは
AIイラストの定義
AIイラストは文字どおり、「AIの生成技術によって描かれたイラスト」のことをさし、『NovelAI』や『AIピクターズ』などが挙られます。
作品制作に生成AIを使うという意味では、2020年に手塚治虫の作風をAIが学習し、それをもとに人間の手で作成された『ぱいどん』が話題になったこともありましたね。
キャラクター原案・プロット作成はAI、残りの部分は人間の手を使うという、制作の補助ツールでAIを用いた感じですね。
ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界|講談社コミックプラス
AI手塚治虫『ぱいどん』はコンテンツ産業にとってどんな意義があった? クリエイターがAIに求めたこと|リアルサウンド ブック
イラスト生成AIに対するよくある誤解|Qiita
AIイラストのモラル・権利問題
世界でも社会問題に
なりつつある
しかしAIイラストには問題点があります。
たとえば、AIイラストは2023年現状の法律だと、著作権の定義にあたる「創作的表現」とは言いがたいため、著作権が発生する可能性は低く、権利関係がわからない状態になります。
ただ、AI絵を自分である程度加筆すれば「創作的表現」になり、著作権は発生するというのが現状の認識のようですね。
「解釈次第では、AIイラスト作成サービスを『自身の創作アイデアを表現するツールの一種』と言えるかもしれない」という意見もあった。
【著作権法 第二条】
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。(原文ママ)
e-Gov法令検索
将来的にAIイラストに対する著作権がどうなるかは明確になっていくでしょうが、今のところはそのような認識であることは留意したほうがいいですね。
チャットGPTに聞いたところ、「著作権はツール製作者・企業に属する可能性もあるし、創作的表現ではないため発生しない可能性もある」という感じだったね。
実際にあったトラブル
ゆえに下記の行動をすることはトラブルになりかねません。
- 作家の絵・作風を模倣
- 自作絵だと誤認させる
- 二次創作的作品の有償販売
実際、『mimic』は顔の作風をまねるAIイラストのため悪用され一時は騒動になり、権利関係などの都合から、AIイラストの自作発言をバーチャルVTuberが注意喚起するケースも見られます。
生成AIには文字情報から生成するタイプ(t2i)のほか、特定の絵を原型にしてAI生成をするタイプ(i2i)と、そこから作風の学習モデル作成(LoRA化)も存在します。
模倣・盗用問題を言われるのは後者(i2i・LoRA)が多いですね。
作品・作風が模倣されたことを被害報告するクリエイターも見られますからね。
pixivだと作成時間が短いせいか、AIイラストが大量投稿されて純粋な絵描きのイラストが流れることもあり、pixiv検索のアクセス解析を見てもAIを除外して検索される方が多いです。
作品キャラクター絵をAIで作成し、二次創作として有料リクエストや支援サイト投稿、グッズ販売など、加筆を特にせず有償行為をする人もいます。
このように、AIイラストはモラルと権利への問題が見られます。
追 記
2023年6月現在、pixivは検索からAI作品を除外できる設定が追加、Fantia・FANBOXはAI絵の投稿を現状禁止、SkebもAIイラストのリクエストを納品不可にしています。「創作的な表現」アイデアと表現の違い|弁護士法人横浜パートナー法律事務所
AIが描いたイラストの著作権はどうなる?|Tokkyo.Ai
最近話題のAIイラストについて調べてみた|税理士の進捗管理なら株式会社AQUARIZE
2022年11月末、今からAI画像生成を触りたい未経験者向け記事|note
AI絵の自作発言はウソだとバレやすい理由
すごく気になる…
技術としては進化を期待する一方、絵描きの自分から見るとAIイラストは違和感が目立ちます。
CHECK!
絵描き(細かい部分に気づきやすい人)から見たら自作発言はウソだとバレやすい。なぜ自作発言のウソがバレやすいのか、理由をひとつずつ述べていきます。
ただしこれは2023年現在の状態であるため、将来的にはこの違和感が低減される可能性があることは留意願います。
細かい描写ができていない
AIイラストは顔や体のポージング、自然風景こそ描けているものが多いですが、一方で細かい部位の表現は2023年現状の技術ではできません。
細かい部位というのは、
- 手や足の指
- 目のハイライト
- 口内の描写
- まぶたや眉毛の表現
- 人工物(小物)のデッサン
- 線画部分の入り抜き
このあたりは見る人が見ればすごく違和感を感じます。
自分は口内をしっかり描くタイプの絵描きだから、AI絵の口内描写(舌・歯・口蓋〈こうがい〉)はすごく大ざっぱなんだよね。
人間だからできる表現
自分で言うのも恐縮ながら、口内描写は児童期から成人期までの歯の本数の違い、口腔・咽頭の解剖学的構造までを網羅した上でデフォルメする高等表現をしていると自負しています。
デッサン部分は将来的に改善されていくでしょうが、こういった超マニアック知識を絵に最適化する作業は、人間だからこそできる業(わざ)です。
足の裏をくすぐれば足指が丸まる、熱いものを触れば耳たぶを触るなど、人体の反射描写もAI絵で見たことはないね。
ほかにも前髪とまゆ毛・まつ毛の境界線がゆがんでいたり、指の本数が多かったり少なかったり、造形の途切れなども、AIイラストに見られがちでわかりやすい特徴です。
ちなみに手と足は表情豊かなだけに描くのが難しい部位で、ここを見れば絵描きの技量がわかる場所です。それこそ老若男女の手足が秀逸(しゅういつ)に描ける人はほぼプロです。
耳の描写も絵描きのクセが出やすい場所。作品名は忘れたけど、登場人物が耳の描きかたで誰が描いたのかを把握するシーンがあった。
いい感じの手抜きが難しい
絵は適度に「手抜き」をすることが必要です。
たとえば遠景は大ざっぱに描き、近景の人物や小物をしっかり描き込むと、遠近感が出るだけではなく、絵の中が整理されて見やすい絵になります。
AI絵にも手抜きの表現は可能ですが、人間的感覚が必要な箇所であるせいか、かなり線がゆがんでいびつだったりと、「キレイな手抜き」ができていないパターンが多いです。
美術学校の学生時代、「キミは適度な手抜きを覚えなさい」と先生に言われたことを覚えているよ。
クセや遊び心・情景がない
AIイラストは総じて絵は美しくキレイだとしても、クセがなさすぎてパターン化されているため、よくも悪くも没個性ですし、遊び心がありません。
絵の中にも、なぜこの人物は笑っているのか、怒るのか、泣くのかといった状況、なぜこの姿勢か、風景・時間・温度かという情景意図の描写・目的がAIイラストには無いんですよね。
個人的にAIイラストで一番違和感を感じる部分。パッと見が上手くても、内面性がなくて絵的につまらない。
AIイラストは良く言えば「トレンドを踏まえた模範絵」、悪く言えば「没個性のつまらない絵」で、文字どおり機械的です。
- 「ミリタリーへの愛情がスゴい」
- 「人体を上手く崩していて秀逸」
- 「ものすごく手フェチな人だなぁ」
- 「よく見たらこういう状況なのか」
- 「デザイン意図の作り込みが細かい」
そういった個性やこだわり・作風、状況を探す面白みに欠けます。
人物の性格や経緯がわかる「意味がある遊び心」を入れて、一度見て二度おいしい絵を描きなさい。
これも美術学校の先生に言われたことで、オリジナルキャラクターをつくるとき、スチル(場面)絵を描く際は必ず心がけています。
さきほど述べたマニアック知識の部分と同様に、ここもAIには描くことができない、自身の内面や意図・こだわりを作品に反映できる人間の絵描きだからこそできる芸当です。
ニューイヤー用に描き上げたキャラクターですが、もちろん造形に意味を持たせています。
— 赤竹ただきち / Tadakichi Akatake (@MyutaUsagi) January 1, 2024
✅露出が多い
→ 背中から翼=実質多腕=運動エネルギーが多い=体温冷却のために露出(飛行の軽量化もかねて)
✅ 髪型+褐色+見開いた目
→ アホ毛とミディアムヘア+褐色+目の形で活発な少女
✅ 青い眼
→… pic.twitter.com/1BamkVQ3sd
プロは小物ひとつにも、しっかり意味を込めていますからね。
「なぜこのヘアピンか」「髪型・髪色の意味」「アクセサリーの暗喩(あんゆ)」など、ものすごく計算してキャラクターを描くよ。
絵は絵描きの研究成果物
だからこそ自作絵発言は「バレるウソをついている」のと同じで、そんなことをされていい気分をする人は少ないですし、場合によっては人間性を疑われることもあります。
絵は絵描きの研究成果物であり、上手い人は解剖学やデッサン・色彩学など、技術的な勉強を何年・何十年もしているから個性やこだわりも出やすく、それを楽しむのもイラストです。
絵描きがAIイラストに否定的・反感を買う人が少なくないのは、作風(研究成果)を模倣されることに危惧(きぐ)するのもそうですが……
絵描きは職人気質(とは言うものの、ぶっちゃけ変人が多い)なところがあり、苦労もせず機械が作った絵で自慢してもいい気分をしない部分も大きいと思います。
絵が上手い人ってある意味研究者でもあるよ。ピカソみたいな超天才は1%もいないし、鍛錬をするから絵は上手いんだよ。
ピカソが8歳の頃に描いたデッサン pic.twitter.com/H56S16Lwtf
— 兎です。(FAKE) (@Soviet_Usako) February 22, 2022
AI絵師は「絵師」ではない
「描いている」ではなく
「指示している」
AIイラスト投稿者が『AI絵師』と自称しているのも違和感があり、なぜなら彼らはAIを使って「絵を出力」しているのであって、「絵を描いている」わけではないんですね。
揚げ足とりな言いかたであることは承知のうえで、仮にAIが自我を持って描いているなら確かにAI絵師です。しかしAI絵を投稿する人は「描いている」ではなく、「指示をしている」です。
絵師の自称・さらに有償販売する人は、「技術の研鑽(けんさん)してこなかった人が絵描きごっこをしているだけ」に見えるのが正直な感想です。
絵師を名乗るなら、そこから加筆で小物・情景を増やすなりで「創作」してほしいですね。
百歩ゆずって『AI術師』かなぁ。少なくとも絵師ではないし、語弊を招くから絵師の自称もしないほうが無難。
AIイラストで「無断転載禁止」?
AIイラストの無断転載禁止です。
中にはこのように、自称AI絵師の人が生成AIのイラストで無断転載禁止と書く人がいます。
「AIイラストで無断転載禁止とか何様」と言いたいわけではなく、繰り返すように絵師・クリエイターかのように振るまうならば、ちゃんと「創作」をしてほしいとは思います。
ご自身で描いた作品をi2iを使って加工しているなら、まだわからなくはないですね。
個人的には絵描きでも「無断転載禁止」と書く自体が懐疑(かいぎ)的ではあるも、絵師ならちゃんと創作をして、ガイドライン・法的に問題がないかチェックして活動したほうがいいです。
そうすれば自分の権利を主張することに後腐れもなく、堂々としていられますからね。
絵描きにはあってAIにはない決定的なモノ
絵描きの絵と生成AI絵は具体的に何が違うかを、ロジカルなフロー(論理的手順)で建設的に考えるとこうです。
- 資料などの元デザインを参照し、作成の準備をする。
- そこに経験・解剖学・物理学などの知識・研究成果を入れこむ。
- さらに自身のこだわりやフェチズム・内面・精神性を反映。
- 作品(二次創作)が出来上がる。
AI絵はこの「2」と「3」ができません。この「2」と「3」こそが、創作性が高い絵たらしめる重要な部分だと考えています。
AI絵は1と4で生成するし、絵のガワをマネるだけで構造やフェチズムを理解してはいない。トレパク行為も同じ。
AIイラストの二次創作について
AIの二次創作は
二次創作なのか?
次に前半で触れた、pixivやSNSで見かけるAIで作成した二次創作イラストを述べていきます。
重ねるように著作権とは創作的表現が前提にあることや、二次創作の定義は各人・権利者で細部が異なるものの、
- 【二次創作】権利元の作品から、創作性が高い作品をうみだす非営利的な行為。
おおむね共通する定義はこちらになり、それを当てはめるのであれば、
CHECK!
AIが描いた二次創作は、二次創作ではない(二次創作の定義を満たしていない)。こう言えるだろうと考えています。
「創作性が高い」を満たすのが必要
権利元の創作ガイドラインでも「創作性が高い」が前提の場合が多く、ゆえにそれを満たさないAIの二次創作は二次創作とは言いがたく、『二次創作的』が適切な言いかたかもしれません。
そのため個人的には、著作権の定義も満たしていない可能性があることも含め、AIの二次創作的な作品を支援サイトや、有料リクエストで有償行為をするのはオススメしません。
トラブルが発生した場合も、人間が作ったときと比べて格段にややこしくなってしまいますね。
生成AIって仕組みを考えれば『二次利用』だし、権利元はAIイラストの普及で、ガイドラインを書き換えないといけなくなるね……
技術自体は否定しない
技術は素晴らしい
語弊がないように伝えておくと、AIイラスト・生成AI技術自体は成長を期待している立場です。
テレビなどでは昔からそうで、
- 「90年代末、家庭用パソコンを根暗な人がやるものかのように紹介」
→ 今となってはパソコンは日常的に利用されている。 - 「iPhoneが登場した当初は一過性のブームで続かないと言われる」
→ きっかけにスマホが世界で普及し、むしろ従来のガラケーは廃れた。 - 「コロナ発生時、中国の飛散防止ビニール製パーテーションをネタとして笑う」
→ アクリル板やビニールパーテーションは日本でも日常になる。 - 「3Dプリンターでできた家をお粗末だと否定する」
→ 3Dプリンターハウスは新たな建築ビジネスで競争が加熱している。
このように、工夫や技術そのものを見下したり笑うことは知見と科学への冒とくで、あとで自分の首をしめて恥をかくだけですからね。
いろいろ言いましたけれど自分が言いたいのは技術の否定ではなく、AIイラストで創作性をアピールしたり誤認させる行為であることは、留意いただけますと幸いです。
技術とモラルを混同してはいけない。包丁で傷害事件があれば、包丁が規制されメーカーが犯罪幇助になるのかな?
AI学習禁止表記やAI規制運動について
見るがままやってない?
ここからはネット・SNSで見かける生成AI絵論争の問題点について述べていきます。
まずAIイラストで忘れてはならない話として、
- 「AI学習禁止です」
- 「AI絵の使用ダメ」
このような文言をプロフィールに書く絵描きが数多くいるものの、ちゃんと0か100の極論で考えず、しっかり理解して注意書きを書いているのかという部分に疑問を抱きます。
特定の絵を取り込んでイラストを生成(i2i)、文字情報で生成(t2i)・学習モデル作成(LoRA)を全部ごっちゃにして、AI生成NGと言う曖昧(あいまい)な絵描きが目立ちますね。
AIに学習されることを嫌がるより、「AIを創作補助に使う」「AIがマネできないほど意味を込めた高度な絵を描く」と思ってほしいけどね。
著作権上における学習行為
それだけにとどまらず冒頭で述べたように、
AIイラストの学習行為は作品への著作権侵害行為だ! 世界中でもその流れになっているんだからAI絵は規制すべき!
こういった「規制」という名ばかりの反AIな排斥(はいせき)運動をして、過激で極端な内容を拡散させる絵描きもいて、同じ絵描きとして彼らの行為は称賛できるものではありません。
著作権上では、利益を不当に侵害するケースを除き、思想や感情の享受を目的としない(または軽微利用)場合、学習をする自体は問題がないと定義されています。
【著作権法30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)】
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
(原文ママ)
著作権法|e-Gov法令検索
作風を模倣して誤認や販売させる行為は問題になるも、学習自体は保証されているので、「AI学習禁止」は無知で言っているか、マイルールの範疇(はんちゅう)を出ないんですね。
ただ現状は定義が曖昧なため、生成AIの解釈をどうするかの動きが出始めていますから、将来的に改正などで線引きが明確になるでしょう。
第47条の5でも、目的上必要な限度を守っている軽微利用であれば、享受目的でも問題はないとされています。
もし学習行為を全面禁止したら、検索エンジンやフィードアプリがすべてダメになるよ。
AIによる画像生成は「著作権侵害」にあたるのか|東洋経済オンライン
AIで生成したものの著作権はどうなる? 注意したいポイント|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
絵描きの行動矛盾
こちらの記事でも述べたように、「AI学習が嫌ならネット・SNSに載せるな」じゃなく「そういう世界で現実」ですし、言っていることは「トイレはキレイに使いましょう」と変わりません。
また上記文言・主張を掲げて二次創作をする絵描きほど自分を棚に上げていて、権利元の見解を確認せず掲載、創作ガイドラインを無視して有料行為をする人があまりにも多いんですね。
その態度で「クリエイターの権利を守れ」とAIイラストを全否定するんですから、「高度なギャグになっている」というのが正直な部分で、他人に厳しく自分に甘すぎます。
かといって、i2iやLoRAを悪用して作家の権利を不当に侵害する行為を擁護(ようご)しているわけではありません。明らかに一線を超えている場合、法的処置を辞さない姿勢は必要です。
権利元の二次創作ルールを調べず・守らないのは敬意を払わないのと同じ。それでAI全否定や自己権利主張はずうずうしくない?
これは法的な問題ではなく、絵描きのモラルの問題ですね。
一部分だけしか見ないのは思考を停止させる
技術そのものを頭ごなしに叩くのは、物事の悪い部分しか見ようとない視野の狭い人がすることで、技術の全否定は結果的に恥をかくだけです。
CHECK!
AIイラスト・生成AIは悪ではなく、モラル問題が本質。自動車や携帯電話、ネット・SNS、ドローンなどでもあったことであり、いつの時代も繰り返されている。これは権利侵害に泣き寝入りしろと言っているのではなく、法規制は必要だけど、悪い面と同じぐらい良い面にも目を向けて、どう活用するかを考えていくのも大切です。
二次創作をしているのであれば、自分の権利ばかり主張するよりも前に、まず相手の権利を尊重するのが最初にすべきスジではないでしょうか。
生成AIを「盗用AI」と全否定するクリエイターのずんだもん動画を見たことがあり、モラル問題を技術否定に論点すり替えていたね。
動画内ではAI推進派を晒して批難していますが、ずんだもんは特定の個人・団体の批難する目的は禁止されています。
このように敬意・権利と言いながら権利元のルールを守らないクリエイターは意外に多い。「私が気に入らないから」で動くからそうなる。
VOICEVOX ずんだもん、四国めたん、九州そら、中国うさぎ音源利用規約|東北ずん子・ずんだもんPJ 公式サイト
生成AIと二次創作の違い
目的や定義も
全くの別物
じゃあ二次創作はどうなんだよ。どっちも権利元の著作物を盗んでいるから一緒じゃん。
これもネット・SNSによくある反論ですが、著作権を知っていればこのような意見を出すこと自体がありえません。
法律や専門家の意見を引用して意見した気になっているのもダメね。その先を見てほしいもの。
生成AIと二次創作は全くの別物
- 【生成AI】あくまで出力のため創作性は低い。ガイドラインで例外扱いの場合もあり、現状の法律上認められにくい。
- 【二次創作】創作性が高ければ著作権が発生。一定条件で有償OKなど、ガイドラインで許可されている場合もある。
先述のとおり生成AIで作成した絵は、公式・作家の絵を参考ではなく流用する点から二次利用に該当します。二次創作と二次利用が別物なのは、こちらの記事で説明しました。
AI絵を否定しながら権利元のルールを守らず、ガイドラインを無視して二次創作をするモラルの低い絵描きは問題ですが、二次創作と二次利用を混同し、トンチンカンな反論をする人も同様です。
「うどん料理とパン料理は同じ。どっちも原材料一緒」と言うようなものです。定義がブレているんですね。
最後に:AIイラスト自体は素晴らしい技術
節度とモラルは守ろう
絵というのは絵描きの研究成果物であり、それがなくトレンドを反映するだけのAIイラストは、よくも悪くも没個性です。
- 表現者のこだわりが描かれているか
- マニアック知識が反映されているか
- 小物にデザイン意図が細かく含むか
- なぜこの人物は笑い・怒り・泣くのか
- 体のポーズ・風景・時間の意味はあるか
- 遊び心で一度見て二度美味しいか
上記はAIには到底マネすることができない、人間の絵描きだからこそできる業です。AIイラストは「ガワをマネた絵」でしかなく、作者の内面性や意図・情景・こだわりは反映されません。
キツネ娘の次はタヌキ娘🍃
— 赤竹ただきち / Tadakichi Akatake (@MyutaUsagi) October 29, 2023
日本系キャラは足の小指を短めに描くものの、その理屈だと胃袋を描くときも意識しないといけない。
日本人(農耕)とアメリカ人(狩猟)で胃の形が違うと最近知ったので😅
女性はL字の胃が多いと、昔依頼者さんに教えてもらったんだけど、スゴいね人体❤️#イラスト… pic.twitter.com/94Q2TwoGPR
デッサン崩れは学習で将来的に改善されても、精神性の表現はそれこそAIが自我を持たないかぎりは難しく、絵描きは絵の設計・内面表現・独創性をより求められるでしょう。
ゆえに、職人工芸品と工場生産品が目的によって住み分けができているように、絵描きが描いたイラストとAIイラストは住み分けされ、成り代わらないのが個人的認識です。
そのためAIイラストが悪と言いたいわけでも、生成AI技術の進化で絵描きの立場がおびやかされる……とも思っていません。
AI絵はキレイでトレンドを踏まえているけど、つまらない絵。小物や動作に意味・必然性やコンセプトを感じない。
絵描きの絵と生成AI絵を同列に見る人
生成AIの登場で、絵の技術がない人でも作品発表できるようになり、絵描きという行為は平等になった。
上記の意見を見たことがあり、絵描きの絵と生成AIの絵は別物なのはお伝えしたとおりです。
しかし残念ながら「これが絵に対する一般的な人の認識」で、絵の本質を知らないから、AI技術で人間の絵描きの存在がとって代わられる、同格だと思っているんですね。
なぜなら一般の人は絵を好みや見た目、制作時間などの「結果」でしか判断しないからです。
人間の絵は長年の研究成果かつ、作者の精神性や内面・フェチズムが込められたもので、上述のように人物の表情・動き・手足・小物・時間なども意味を設定し、計算して作画します。
この絵の本質を理解できるのは絵描きかアートコレクターだけです。
絵描きが見たら「技術・表現がスゴい絵」でも、一般人目線だと「下手くそな絵」と思われるケースはありますし、人間が描く絵の奥深さ・面白さを素人には理解されにくいものです。
ピカソがわかりやすい例ですね。彼は8歳で正確な人体を描ける天才で、キュビズムは「描く」の到達点・境地でした。
絵を描く人間なら、ピカソはとんでもない天才&化け物とわかるし、キュビズムも天才の発想。でも一般人は「絵が下手くそ」で片づけるジレンマ。
絵描きならスゴさがわかるアシュレイ・ウッド作品
個人的な話だと自分はアシュレイ・ウッド氏の絵が大好きで、絵描きなら彼のデッサン崩し・表現技法がいかに高度な技術であるかを理解できます。
SNAKE SUPANOVA https://t.co/TK4UdQAGAu pic.twitter.com/jduZcdFHJC
— Ashley Wood (@ashleywood3a) June 23, 2023
しかし絵に興味のない人だと「下手くそだし線が雑な絵」と言われるので、学生のころからずっと歯がゆく思っているのですけれど、それが一般の認識です。
このように、一般の人たちは「絵が好みか・上手いか」だけで判断します。「生成AIで絵描きと同じことができる」と勘違いした人が、絵を知ったふうに語るのは複雑な気分になりますね。
上述したように、絵描きの絵・AIイラストは、職人工芸品・工場生産品のように分別されていくとは思うけどね。
絵描きがAIを活用すれば鬼に金棒
話をもどし、生成AI技術は『ぱいどん』の前書きで書かれていたように、
このプロジェクトが「人間の創作活動を支援するツールとしてAIを利用する」という、新たな可能性切り拓(ひら)いた試みであることは間違いない。
ぱいどん|TEZUKA2020プロジェクト
このように創作補助ツールとしてAIを活用する状況に進むのが、個人的な理想です。AIイラストで絵描きと同列に扱う世間の反応に違和感はありますが、AIの技術自体は否定しません。
絵描きが構図探求・トレンドの研究にAIを活用すれば鬼に金棒です。もちろん使うか使わないかは個人の自由ですけれど、色合いや構図の探求に悩む時間を制作に回せますからね。
つまらない絵と言ったけれど、AIは作画・構図探求ツールとして助かっているよ。写真と同じく部分部分のキメラ化で活用している。
AIイラストの問題点
とはいえAIイラストを、
- 作家の絵・作風を模倣
- 自作絵だと誤認させる
- 二次創作的作品の有償販売
こういった権利関係を明確にできず、トラブルになりかねない行為は問題です。
ツールを正しく理解しない、使わないから起こる問題ですね。
クリエイティブを軽視して生成AI絵を自作として発表・自慢するって、その絵を見た多くの人や、技術を積み上げた絵描きにも失礼なんですね。
版権物を生成AIで作成して二次創作的な作品を使って有償販売するのは、創作ガイドラインを守らない有料二次創作よりも格段に権利関係がややこしい事態になってしまいます。
そして意図的に作家の絵を勝手に模倣して自作発言・AI作品自慢は論外です。
中にはi2iで作成した画像で絵描きに赤ペン先生気取りをしたり、勝手にLoRA化した作者の作風を、その当人に向けて宣伝する人もいるそうで、早急なルール整備が必要になるでしょう。
自分が偉くなったわけでもないのに、先生気取りや無許可作成を本人の前で宣伝するって、どういう思考回路なんだろう…?
こういったことをする人は自己中心的な性格で、相手の気持ちを考えられない人なのかもしれません。
絵は長年培ってきた研究成果物
絵というのは絵描きの研究成果物で、上手い絵描きほど研究に誇りを持っています。
絵描き側からすれば、研究に最低数年、制作に何時間・何日もかかる行為をインスタント食品感覚で作品発表、しかも生成技術に自分たちの研究技術が含まれているかも……ですからね。
それで自作発言や絵師を自称されても、「いや、キミ描いていないよね?」となってしまいます。
百歩ゆずってAIイラストをするにしても、その元をうみだした先人の絵描きたちの技術をないがしろにしたり見下すのは筋違いかつ、大きな勘違いです。
ネットにあった知識で専門家を名乗る人が、長年しっかり勉強した本物の専門家から見たら苦笑いされる感覚につうずるものがあります。
絵描きの過激な反AI運動は賛同しないも、気持ちはわからなくもない。中身のない作品で自慢されても反応に困るね。
自作にはならないしバレやすい
生成AIのイラストはよくも悪くもクセや遊び心がなく描写に歪みがあり、細かいコンセプトや場面・アイテムの意図を含むことができない点からも、AI絵だと高確率でわかります。
手足の指などの体の細かなパーツは今後改善されていくにしても、作者のフェチズムや内面性、表情・情景の曖昧な描写、マニアックな知識、状況説明を求める絵は難しいでしょう。
AI絵を自作と称する人は着せかえ人形をオリジナルキャラクターだと言っているのと同じで、「それは創作なのか」と疑問に感じます。
絵を描く場合と比べ圧倒的に制作時間が短く、大量投稿で「絵描きが描いたイラスト」が流れる事態も発生しています。
AI絵師は「絵師」なのか?
生成AIで絵を投稿する人が『AI絵師』と自称することにも違和感があって、揚げ足とりかもしれないことは前置きしつつ、個人的にAI絵師は絵師ではないと考えています。
なぜなら彼らは「AIで出力している」のであって、「絵を描いているわけではない」からです。小説家をイラストレーターと言わないのと同じです。
AIが自我をもって創作活動をしたのであれば、確かにAI絵師という名称は理解できます。ただプロンプト(指定キーワード)や既存絵を利用した程度で絵師と名乗るのは違和感があります。
絵師を自称・有償販売もする人は、「研鑽しなかった人が絵描きごっこをしているだけ」にしか見えないですし、名乗るなら加筆などをして「創作」をしてほしいですね。
『AI術師』のほうが、まだニュアンスとしては近いかなぁ。
「AI学習禁止」は自分を棚に上げていると思われる
一方で絵描き側にも問題があり、AI学習禁止を表明する絵描きは数多いですが、
- AIイラストがどう作られているか
- 生成AIに種類(t2i・i2i)があること
- 著作権上の学習行為はどうなっているか
- ネット・SNSに絵を載せるということ
- 技術と人間のモラルは別問題
- (有料)二次創作ならガイドライン厳守
百歩ゆずって、上記すべてを理解した上で言うことが前提で、それをしない・理解しないまま、
- 「なんとなく嫌だ」
- 「周りが表明しているから自分もやろう」
- 「SNSで話題になっているから」
と、深く考えずに「AI学習禁止」をかかげ、それで創作ガイドラインが不明な(有料)二次創作をしているのを見ると、ちゃんと調べないし他人に厳しく自分に甘い人だなと感じます。
ビックリするぐらいそんな絵描きが多い。自分からすれば高度なギャグにしか見えないね。
結局は「私が気に入らないから」
AI規制という名の排斥運動(反AI)や、AI絵に触れた人に噛みつきまわって一方的に絵描きの権利を押しつけがましく強要する人に関しては、同じ絵描きでも同意しかねます。
ああいう人たちは法的問題や海外事例を出して大義名分を掲げていて、確かにモラルが問われるAI画像の悪用には、明確な法規制が必要でしょう。
しかし彼らの主張よく見れば、「私が気に入らないから」の一言で終わる話です。
結局は建前でAI問題を都合よく利用し、個人的感情を社会問題へすり替えて社会派を気取るだけで、その先の本質を見ないのがほとんど。
加えて権利元のルールを守らないのに、自分の権利ばかりを主張する矛盾ばかりで、違和感すら持たないんですね。本質を見る人は自身の行動にも矛盾がなく一貫しているものです。
いわゆるツイフェミやポリコレ棒と言われる人と心理は同じなんですね。正しい議論より個人的感情を優先します。
ぶっちゃけ、AI全否定派の絵も退屈な作品が多い。「カッコいい・可愛く描いただけ」が目立ち、フェチズムや意味づけが乏しい。
法以上にモラルの問題
AIを悪用する行為が多いのは事実であり、フェイクニュースによるデマや生成AI(主にi2i)による模倣行為やポルノ画像の大量生産など、世界的にも問題視されています。
一方でネット・SNSでは絵描き・AI絵作成者・閲覧者それぞれで極端な論調が目立ち、ろくに調べず法律や専門家の意見を引用し、虎の威を借りて意見した気になっていたのは問題ですね。
ネット・SNSにおける二次創作・生成AI問題論争の大半は信用しないほうがいい。あれは彼らの性格の悪さが出る。
0か100の極論、答えありきが多く、結局は「私が気に入らないから」で「どうするか」という建設的内容に欠きます。
AIイラストは過渡期
2023年現在、まだAIイラストは過渡(かと)期ですし、人間の意識も法的な問題もまだ追いついていない状態で、絵描き・AI絵作成者・閲覧者も明確な意識作りや法規制は必要です。
自動車・インターネット・携帯電話・ドローン・電動スクーターなど、科学技術やサービスが発展するたびに悪用や迷惑行為・犯罪利用など、モラルに欠く行為が出てきたものです。
CHECK!
AI絵・生成AI=悪はくもったメガネで見ている。包丁で傷害事件があれば包丁規制、メーカーは訴えられるかという話と本質的に同じ。技術とモラルを混同するのは筋違い。AIイラストや生成AI技術をただ否定したり悪用するのではなく、AIの技術とどう向き合うのか、利点と活用、可能性を見出す方向へと、絵描きの自分はそう考えたいですね。
自分がAI学習禁止をかかげることは現状ない。住み分けが可能な分野で技術の進化自体は素晴らしいし、悪質ではない社会通念上の範囲内なら、見守る姿勢。
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プロフィール
赤竹ただきちTadakichi Akatake
サイトのURLをSEO的観点から、検索上位のものや記事のURLを書き換えているんだけど、これがなかなか興味深い。
omotenashi(おもてなし)・karoshi(過労死)・tsunami(津波)は日本人も知っている人は多いし、サブカル関連だとhentai(ヘンタイ)・kemomimi(ケモミミ)・mesugaki(メスガキ)も日本語読み表記。
個人的に興味深かったのが、kotobagari(言葉狩り)も日本語読みで表記するらしい。海外だとPC(ポリコレ)だろうけども、漢字・ひらがなの表記にこだわるから、kotobagariなんだろうなと。
イラストレーター・マークアップエンジニア(コーダー)・Webデザイナー・ライターのウサギ好き。多様な絵柄を描け、外国人でも絵でわかるマンガ、ウサギと口内描写にこだわりを持つ。
コーディングとWebデザインは両方可能。納期が短いなどいった案件では、「デザインとコーディングのアドリブ同時進行」という荒業もおこない、SEO施策を意識したマークアップも得意。
フリーランスとの進行ディレクション・指示や、面接担当の経験が幾度もあり、プロ・趣味問わず、絵描きを含めたクリエイティブの姿勢には少々シビア。
「自省・リテラシー・正しい批判の認知・意識向上」をライフワークとし、当サイト記事も「気づき・理解・学ぶ」を全体テーマとして執筆。
当サイトの記事は中学生でも理解できるように計算しながら執筆しており、ネット・SNS上で「わかりやすく参考になる」とご好評の声多数。
「言い訳せずに下手でも自分の弱さを認め、背かず自省して学ぶ意識を忘れない(=謙虚な)人」は、年齢・性別問わず好きなタイプ。
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