以下より、『ソニックフロンティア』をクリアしたレビューになります。
ソニックフロンティア|セガ
遊んだのはニンテンドースイッチ版とPS4版で、自分は気軽さから主にスイッチ版で遊んでいたため、使っている画像は主にスイッチ版になっていますので、ご了承ください。
本作の欠点として挙げられがちな脚本の日本語翻訳問題は、この記事で原因の背景や意図・理由をしっかり解説していますので、特にファンの人たちはしっかり参照いただければと思います。
日本語翻訳問題の理由を知ると一概に「ひどい」とは言えなくなるし、ユーザー側にも問題があることがわかるよ。
またストーリー難しくよくわからなかった人、クリアしてもモヤモヤしている人は裏設定解説記事、アナザーストーリー『超・完全決戦』の感想や解説は別記事で載せています。
ネタバレ注意
作品の内容・結末が記述されています
第三世代ソニック
本作は「これからの10年を見据えた第三世代のソニック」だということで、2Dのクラシックソニック、3Dのモダンソニックに続く、新たなアプローチだとしています。
個人的な驚きは、新たなアプローチよりも、日本展開に力を入れはじめたところですね。
約10年ぶりにソニックのCMを流したり、東京ゲームショウでは巨大ブースをつくり、さまざまな企業や有名人・インフルエンサーとコラボして宣伝するなど……
もちろんゲーム会社は慈善事業ではありませんから、最近までの海外中心に注力していた展開やゲームの内容は、ビジネス的には間違った行動をしていなかったものです。
2021年までの名越氏が社長だった時期はどれだけ影響があったかは不明なものの、売上を見込めない日本展開はやりにくかったかもしれませんから、ある意味先行投資ですね。
[TGS2022]「ソニックフロンティア」制作者インタビュー。クラシック,モダンに続く第三世代ソニックに込められた思いとは|4Gamer
今回のファンは本気で猛省してほしい
その姿勢・態度は
どう思われるか考えた?
発売前は、
- 『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』のパクリではないか?
- 『ファンタシースターオンライン:NGS』の流用疑惑?
といった不評を多々言われたものの、発売をされると手のひらを返したかのように、好意的な評価に変わった感じでしたね。
ちなみにNGSと似ているのは、同じゲームエンジン(ヘッジホッグエンジン)を使っているからが有力だとされています。
ファンタシースターオンラインも元はソニックチーム開発。PSO2はヘッジホッグエンジンを改造したものが使われているよ。
ただそれよりも鼻についたのが、ソニックファンによる評価姿勢と公式への態度です。
もちろん、ファン全員がやったわけではないものの、発売前に本作のすべてを知ったような評価や、情報解禁のたび公式ツイッターなどにいちゃもんばかり書いていたのは目に余る行為です。
「好きでも嫌いでもないけど〜」など、なぜか中立を気取った人がいるのも気になった。
好機を潰す愚行
それを『まいじつ』のような悪評高いゴシップサイトにネタ供給をしてしまい、本作に関連するネガティブ記事が書かれてしまいましたからね。
発売後は熱心なファンほど日本語版の翻訳を叩いて、担当した岸本ディレクターに心ない言葉をぶつける人がいたのも残念ですね。
感じかたは自由だとしても正しい批判をしてほしいもので、せっかく今作でソニックを初めて遊んだ人も多いのに、その好機を潰すような行為は真摯(しんし)に反省してほしいところです。
いちゃもんや文句を『批判』と思う人が多い。『批』『判』の漢字に否定的要素はないし、辞書で調べてほしいね。
海外ファンにも問題が見られた
今回は海外ファンも似た行為をした人が発売前に割といて、2017年のフォースがファンの満足のいく内容ではなかった経緯もあり、発売前までは、
(フォースのようにならないか心配だから)発売を延期しろ!
このようにいろいろ言われていましたからね。
ただ、本作も開発段階で1年ほど発売を延期したんですが……
自分もフォースの設定を生かしきれていない、もったいない部分は思うところがあったので、「本作は大丈夫?」と不安を抱く気持ち自体はわかります。
とはいえ、断片的な印象・内容による作品批評もどきや、公式などに敬意の欠く内容を書くのはよくないですね。
日本ファンは「ソニックが人気になってほしい」と言うのに、自分たちで新規獲得を遠ざけるから意味わからない。
ブレスオブザワイルド+エヴァ+ドラゴンボール
話をもどし、ソニックはパロディが多いのも特徴で、今作に関しては、
- 『ブレスオブザワイルド』
- 『エヴァンゲリオン』
- 『ドラゴンボール』
発売前はブレスオブザワイルドにも似ているとの声は発表当初からあり、要素の部分は明らかに意識しているなという感じでしたね。
とはいえ、広大なRPGのブレスオブザワイルドと、広大な遊び場フィールドの本作は内容やゲーム性が違いますので、同じだと思って購入すると、少し痛い目を見るかもしれません。
余談ながら、過去にはロストワールドでゼルダの伝説とコラボしたステージがありましたし、発表当初はそのことを少し思い出しました。
しかし実際に遊んでみると、特にビジュアルやストーリー展開はエヴァ、スーパーソニックはドラゴンボールを意識している感じが強いですね。
エヴァというより庵野秀明作品ネタのほうが近いかも。
本作が特にエヴァ・ドラゴンボールに似ている理由
似ている理由はファミ通のインタビューで触れられています。
「世界基準のものを作りつつ、日本のクリエイターの強みを見せ、アウトプットしたい思いがあった。日本のアニメや特撮ネタを入れていることも理由のひとつ」(要約)
『ファミ通』2022年11月24日号 74ページ
重ねるようにパロディはソニックシリーズだとよくあることで伝統芸。セージの声優が綾波レイと同じなのもそう。
ドラゴンボールに関しては、海外ファンは当該ネタをソニックに使う二次創作が昔から盛んで大好きですから、喜びそうではあります。
スーパーソニックが超サイヤ人なのは、ドラゴンボールファンのスタッフが多かったことも起因していて、シルバー(本作未登場)の生い立ちは未来トランクスがモデルと公言されています。
ほかにも巨神のBGM移り変わりは『メタルギアライジング』、GIGANTO(ギガント)とセージの構図は『メタルギアソリッドV(MGSV)』のサヘラントロプスと第三の少年を思い出しました。
KNIGHT(ナイト)のフィニッシュとか、ちょっとプラチナゲームズっぽい感じもある。
実写ソニックの要素と…
映画版の要素も取り入れていて、スモウ(SUMO)戦のリングを使った攻撃は映画一作目の倒しかたと似ていますし、パワーブーストの稲妻や目の表現はそのまんまです。
これは関係ないものの、走る際に粒子が飛び散るのはファンゲーム『SONIC OMENS』っぽさも感じます。海外では完成度の高さから有名なゲームで、もし参考にしていたら面白いですね。
操作キャラクターがソニックしか使えない理由
今作では「ソニックと同じ気持ちで遊んでもらいたい」という意向から、使用できるキャラクターはソニックひとりだけになっています。
この姿勢は自分もいいと思いますし、フォースのレビューでも述べたように、
ただ単にそのキャラクターが好きなだけなら、過去作やMOD(改造データ)でやったら?
と、このように考える人間ですが、探索の面白さがあるので、他のキャラクターで開拓するのも面白そうなのは確かです。
追 記
2023年の大型無料アップデートで、公式から操作キャラクターが増えるとアナウンスされました。[インタビュー]「ソニックフロンティア」,総合プロデューサーの飯塚 隆氏に聞く。シリーズが“第3の進化”を遂げた背景,そして今後の展望|4Gamer
オープンワールド系のゲーム性
本作の「オープンゾーン」は本来の定義のオープンワールドではなく、『MGSV』や『ポケモンレジェンズ アルセウス』のような、広大な箱庭作品です。
ソニックアドベンチャーのステージを広大にした感じよりかは、ソニックスピードシミュレータをよりリッチな雰囲気で遊べるようになった感覚に近いですね。
かねてより「ソニックをオープンワールドにしてほしい」の意見は国内外ともに一部あったのを、本作は(狭義的ではあるものの)実現した感じです。
なんでもかんでもオープンワールド化、オープンワールドなら名作みたいな風潮や理屈は首をかしげるけどね。
試行錯誤をした開発スタッフ
開発時は定期的にユーザーへのテストプレイを繰り返したそうで、ほかのオープンワールド系作品と違って走り回れるのも楽しく、ある意味今作でしか味わえない唯一無二の体験です。
また何もないところからどんどん改築して移動を便利にしていくのは、『デス・ストランディング』のようですね。
マップ開放するとデジタルのグリッドが出るシーンがまさにそれっぽい。
今作はイアンソニック
脚本を担当しているのは、世界でも指折りの熱心なソニックオタクとして知られ、アメコミ(IDW版)の脚本も担当しているイアン・フリン氏です。
2010年のカラーズから今作以前は、市場マーケティングの指針変更でファミリー向けに転換され、ケン・ポンタック氏の脚本(ケンポンソニック)が採用されていました。
厳密に言うとウォーレン・グラフ氏との共同執筆だけどね。
しかし今作では、
- ファンも納得してくれるストーリー
- メディア展開のためにユニバース構築
という意図からイアン氏が採用されいます。
日本語版は公式サイトのカバーストーリーシリーズのように、難しい単語やカタカナ英語が多く出るのも、これまでのゲーム作品になかった異質さと雰囲気を感じます。
桜井政博氏も「絶対に買う」と話題になった『ソニックフロンティア』は最初は“厳しい意見だらけ”だった。 「目的地に向かうまで退屈」「なにも起こらない」「草原だけ」を解決した本作の新要素について聞いてみた|電ファミニコゲーマー
[インタビュー]「ソニックフロンティア」ストーリー担当は筋金入りのソニックマニア。“夢の仕事”だったシナリオ制作やその手法を聞いた|4Gamer
脚本の日本語翻訳がひどい?
ここからは本作の欠点として言われがちな、「日本語翻訳がひどいのでは?」問題についてです。
脚本の翻訳は担当した岸本ディレクターいわく、日本人向けにセリフを書き直されていて、本作では珍しく「ソニックが会話に英単語リアクションを入れてこない」作品でもあります。
その一方、聞き取りイベントやボイスログなどを集めても、日本語版はボイスログを除き、かなり意訳・別の内容にされているため、細かい部分でわかりにくく、チグハグな印象を受けました。
セージの表情とセリフ
たとえば、セージの表情とセリフが合致しない部分があり、
セージ
「タマシイとはなんですか」エッグマン
セージとエッグマンの電脳空間でのやりとり(日本語版要約)
「いいから命令を実行しろ」
と返し、セージが笑みを見せる場面があります。
これが英語版だと、
セージ
「オーボットとキューボットは私の兄弟のようなものですか」エッグマン
セージとエッグマンの電脳空間でのやりとり(英語版要約)
「そうなるかもしれん」
と返していて、エッグマンの反応や態度もぜんぜん違うんですね。
英語版は笑みの意味がわかり、セージは絆と愛を求めていること、中盤での涙の理由を察せる重要な伏線ですが、日本語版は「?」になってしまいます。
タマシイという概念を敬愛するエッグマンに教えられ、知的探究心を感じて笑みを浮かべたとも、解釈できなくはない。
日本語翻訳はなぜああなったのか
ソニックフロンティアの翻訳が意味不明でひどいと思うんだけど……
確かに英語版と比べるとセージの行動がチグハグになっている部分は否めないですし、自分も日本語翻訳が素晴らしかったとは素直に言えない部分はあります。
とはいえ、日本語翻訳が改変された明確な理由がインタビューなどで明かされています。
理由1:ソニック初心者お断りの脚本だった
英語版脚本を見たことがある人ならわかるように、とにかく過去作用語が多く、本当にソニック初心者お断りの内容になっているんですね。
日本では正直ソニック人気は高くありません。全世界でソニック人気がないワースト1位は日本だと断言できてしまえるほどの下火ですから、敷居を下げる必要があったんですね。
比較すれば、日本語版のほうは過去作用語が少なめになっているのがわかります。
ソニックがオワコンと思っている人はこれを見るべき
「ソニックはオワコン(終わったコンテンツ)」と言う人は、北米・欧州・南米の人気を見てほしいね。スゴいから。
理由2:日本と海外の文化の違い
英語版の脚本には「愛(Love)」が多く登場し、セージの行動原理にも影響しているほど本作では重要なテーマとして扱っています。
しかし日本では「愛」の表現はあまり一般的ではありません。
そのため岸本プロデューサーは、
「本作を機に日本の人たちにもソニックを知ってほしい」
「日本人の感性に合わせた表現に変えて、親しみやすくしています」
(要約)
岸本プロデューサーのインタビューなどから要約
こういった理由から、日本語翻訳を英語脚本から改変したんですね。ちなみにナックルズやテイルスのやりとりは、日本語版のほうがトゲがない感じになっています。
もともとは岸本プロデューサーの優しさだったんだよね。しかし空回りをしたのは否めない。
理由3:行間を読む日本の文化
これも岸本プロデューサーが意図したことで、
岸本:日本版とアジア版のシナリオだけセリフに裏の意味を持たせたり,いろいろ想像をめぐらせる余地を用意したりという,日本のコミック文化的な面白さ(=行間を読む楽しさ)を付加しています。(原文より一部加筆)
[TGS2022]「ソニックフロンティア」制作者インタビュー。クラシック,モダンに続く第三世代ソニックに込められた思いとは|4Gamer
つまり日本語翻訳がわかりにくいのは、わざとやっているということなんですね。
ただ残念なことに、日本のユーザーたちは意外にも行間が読めなかった(読もうとする意識がなかった)事態が発生してしまい、
ストーリーがわかりにくくてイマイチ。
話が意味不明。日本語翻訳がひどいせいじゃない?
そう言われてしまったんですね。
英語版がわかりやすいと思うのは、アメリカはローコンテクスト(行間を読まない)文化だからで、日本はハイコンテクスト(行間を読む)文化です。
日本語翻訳を擁護する意図ありませんし、重ねるように自分も疑問点はあります。岸本プロデューサーはリードゲームデザイナー・プランナーであって、脚本家やマンガ家でもないですからね。
行間を読めたらちゃんと理解できた翻訳かと言われれば、100%そうとは言えません。正直イアン氏の脚本の良さを損ねてしまっている部分がいくつか散見されるのは否めません。
ただそれを抜きにしても、行間を読めないユーザーがここまでいることにも正直驚きました。
今はわかりやすいマンガが好まれるからね。話がわかりにくく難しいのは同意するけど、イマイチとは思わない。
岸本プロデューサーのマンガ価値観が古かったのも誤算でしょうね。目論見は上手くいかなかったと言えます。
[TGS2022]「ソニックフロンティア」制作者インタビュー。クラシック,モダンに続く第三世代ソニックに込められた思いとは|4Gamer
日本語と英語のコミュニケーションスタイルの違い|クリムゾン・ジャパン
木じゃなく森を見ることが大切
CHECK!
ただのAIだったセージが絆と愛を知り、仲間たちは自分の心と向き合い、「運命」へあらがうために変わっていく物語。ソニックフロンティアのストーリーを一言で言うとこうなり、ミクロ(狭義的)に見ればセリフは日本語・英語で確かに違うものの、マクロ(広義的)で見れば話の軸はどちらも同じです。
重ねるように日本語版の翻訳は完璧ではありません。理解に時間がかかる点やセリフのチグハグは否めないものの、上記の配慮には理解を示し、木ばかり見ないで森を見ることも大切です。
岸本プロデューサーの優しさの空回りとユーザーとのすれ違いを見ると悲しい気持ちになります。
内容が違う、翻訳が満足しないからと、岸本ディレクターに心ない言葉をぶつける過激ファンは反省すべき。背景・意図を調べて意見するのが本当のファン。
なお本作はMGSVで話の補足をカセットテープでしたのと似た感覚で、クリア重視で進めると、どうしても説明不足になってしまい、ストーリーは聞き取りイベントとボイスログ集めが必須です。
ストーリーや謎がわからなかった場合は、解説記事や4コママンガを載せていますので、参考のひとつにしていただければ幸いです。
ラスボスだけは最高難易度でやるべき
難易度設定はゲーム中から自由に変更できるので、ラスボスの手前では難易度スリル(最高難易度)でやることをオススメします。
というのも、今作には裏ラスボスが存在し、最高難易度にしか登場しません。
裏ラスボスと戦わなくても展開は変わらないですけど、ストーリーの根幹に関わる独白などを語ってくれますし、ストーリーを理解するなら避けてとおれない道です。
なお裏ラスボスを倒すとエンディング曲が変わるので、ぜひやってみてください。
ニンテンドースイッチ版のグラフィックについて
スイッチ版を先にやった感じで、グラフィック具合や処理落ちはなかったのかについてですが、スイッチ版はグラフィック・処理落ち対策・ロードをかなり頑張っているという印象です。
もちろん、他機種版と比べるとグラフィックやフレームレートは荒く低いですし、特に木や草花の描写がかなり簡略化され、砂漠のアレス島では足跡の表現もありません。
グラフィックにこだわる方は、スイッチ版の表現はかなり気になると思います。
ただ、PS3版のワールドアドベンチャーにあまり遜色(そんしょく)ないぐらいのレベルで、ほかのPS4(PS5)、PCゲーム移植作品と比較しても、きれいな水準ではないかと感じました。
今作はロード時間を練習に使えることから、ロード時間にストレスを感じたことはなく、パワーブーストを使用しても処理落ちはほとんど見られませんでした。
ロードの話だと、今作は「ロード時間が長い」と言われがちなソニックゲームの弱点を逆手にとったアプローチは上手いですよね。
これを新ソニでも導入していたら歴史が変わっていたかもしれない。
ころねボイスDLCが面白い
予約特典DLCは戌神ころね(ころさん)ボイスのものを購入しまして、実際にやってみると違和感がなく面白いです(こちらが導入したのはPS4版)。
上記の動画投稿者さんも語っているように、世界観にマッチしているというわけではなく、「実況している感が出ている」がしっくり来る言いかたです。
音響監督として本作を音楽を担当した大谷氏が完全監修していると、ころさん本人が語られていますから、ネタDLCではあるものの、そのクオリティは保証されています。
ただ、現状では日本語版の店舗予約特典でしか配布されていないため、ほかのころさんDLCの販売、海外の方にも使えるようにしてほしいですね。
世界観が壊れる? DLCで世界観が壊れるゲームなんていくらでもあるよ?
はじまりは“静と動の対比”だった サウンドディレクター・大谷智哉が語る、「ソニック」シリーズの音楽における新たな可能性|リアルサウンド テック
プレイして気になるポイント
ここからはネタバレありきの記述なりますのでご注意ください。
本作を遊んで気になった箇所をまとめています。
操作性が複雑
本作はその仕様上、これまでのソニックとは違ってかなりのボタンを使うゲームになっていますので、ソニックゲームをずっとやっている人ほど、操作になれるのが大変です。
まるでワールドアドベンチャーの昼ソニックと夜ソニック(ウェアホッグ)の操作をごっちゃに混ぜた感じで、ホーミングアタックとジャンプが別なのも一緒ですね。
中盤までは楽しい
3面のカオス島まではよかったものの、4面のレイア島はイベント用ですぐ終わってしまい、5面のウラノス島は1面のクロノス島とあまり変わらない風景であるため、多少の肩すかし感がありました。
ただこれは不明確なものの、「開発時間が(1年延期しても)足りなかったから」だそうで、もともとウラノス島だけだったのを、ユーザーの意見で複数の島に変えた経緯も明かされています。
こんにちは!ご推測の通り、クロノス島は最初はひとつの島でした。制作初期の段階でプレイテストをしたら、テスターの方から島が広すぎて、「退屈」「ずっと草ばっかり」「飽きる」というご意見を沢山いただきました。
— Morio Kishimoto (@moq_46) May 11, 2023
じゃらんの特典雑誌でも「クロノス島(1面)とレイア島(4面)はよく勘違いされる」と書かれていて、若干自虐に感じる。
飽食気味なリメイクステージ
電脳空間のモチーフは、
- グリーンヒル(ソニック1)
- ケミカルプラント(ソニック2)
- スカイサンクチュアリ(ソニック3)
この3つに加え、本作オリジナルの高速道路ステージの4つで構成され、ステージの内容も過去作オマージュ……というよりほとんど流用に近いレベルです。
上記3ステージのリメイクはジェネレーションズやフォース、海外限定のレゴソニック、ソニックフォース:スピードバトルなど、ここ10年で繰り返しやっているだけに、飽食気味です。
ジェネレーションズってもう10年前のゲームなのか……
もちろんオリジナルの環境を作りたいです!ただ、このゲームにおいては、オープンゾーンでオリジナルな環境を用意して、電脳空間では過去作の環境を用意することで、対比させる意図がありました。ただ、このゲームの皆さんのご意見を聞いて、過去作の環境は好まれていないことがわかりました。
— Morio Kishimoto (@moq_46) January 29, 2023
開発リソースの削減といった大人の事情もあったと思います。とはいえ、岸本ディレクターもこのように言っていますので、次回作は完全新規ステージが出るかもしれません。
ファンじゃないとよくわからない
アメコミ版におけるイアン氏の描くソニックは、過去作の要素をしっかり入れるため、ソニック好きからは評価されているんですね。
しかし今作でその脚本の弱点が露呈していて、「シリーズ初見・久しぶりにソニックをやった人からは少々意味がわからない内容になっている」状態になっています。
- 「ナックルズの会話で出た画面は何?」
- 「六鬼衆って何者?」
- 「アークやネオメタルとは?」
- 「ミスティックルーインの滝?」
- 「エッグキャリア? エクリプスキャノン?」
- 「ステーションスクエアの爆破?」
文脈の流れから内容はそれなりに察せるとはいえ、いきなり知らない単語やシーンをポンポン出されたら困惑しますよね。
まだ日本語版のほうが優しい
前述したように英語版だと、
- ダークガイア
- インフィニット
- エッグフリート
- スティックス
- エミーの占い趣味
などといった単語・設定も出るため、日本語版はそういった意味でもまだ初心者・復帰組に優しいほうです。
シリーズ好きとしては、英語版エミーのセリフに大好きなクリームとスティックスの名前が出ていて嬉しかった。
本編でスティックスの名前が出たのは衝撃だったようです。イアン氏はセガの反応を見るために入れたと語っています。
用語解説
- 【ナックルズのドット絵】ナックルズが初登場した『ソニック3』のゲーム画面。
- 【六鬼衆】『ロストワールド』における敵。リーダーがザボックで合計6人いる。
- 【エッグキャリア】『アドベンチャー』で登場した超万能巨大空中戦闘要塞。
- 【アーク】『アドベンチャー2』に登場したスペースコロニー。
- 【エクリプスキャノン】「アーク」に搭載されている光学兵器。
- 【ネオメタル】『ヒーローズ』のラスボス「ネオメタルソニック」のこと。
- 【ミスティックルーイン】『アドベンチャー』で訪れる、古代遺跡が眠る密林地帯。
- 【テイルスの活躍】『アドベンチャー』でテイルスはステーションスクエアを救った。
- 【ダークガイア】『ワールドアドベンチャー』に登場した星のエネルギー生命体。
- 【インフィニット】『フォース』における敵。ファントムルビーの使い手。
- 【エッグフリート】『ヒーローズ』の後半ステージ。無数の戦艦による無敵艦隊。
- 【スティックス】『トゥーン』で登場したエミーの親友。電波だけど仲間思い。
- 【エミーの趣味】カード占い好きは初期から登場する設定。
オーボット・キューボットはお留守番
オーボット・キューボットはWEBコミック版のみの登場で、本作は名前だけしか登場しません。
シリアスな世界観だからコミカル担当不在は仕方ないものの、あの2体は個人的に好きなキャラクターだから未登場は残念で、セージとのやりとりもぜひ見たかったです。
釣り要素はバランスキラー
釣り要素はゲーム進行が崩れるバランスキラーで、進行アイテムはスターフォールのメダル集めと釣りのミニゲームですべて解決します。電脳空間もクリア不要です。
その一方で、
CHECK!
釣りミニゲームは「アクションも電脳空間も苦手」という人に向けた救済措置であり、攻略の自由度がある。こう考えると、一概に悪いとは言えない部分があります。
個人的希望として、ビッグはもっと喋ってほしかったし初回説明では口を動かしてほしかった。
理不尽なミニゲーム
アレス島でナックルズにココを届けるミニゲームは、多く運びすぎるとタワーの動きが速すぎて進行不能になり、クレーンゲームでは落下地点マーカーがないなど、親切不足な面を感じました。
高難易度版の玉入れミニゲームは加減が難しく、どうやって遠くへ飛ばせばいいのかが一切わからず、完全に手探りです。
ファストトラベルの仕様
ファストトラベル(地図ワープ)が手間なのもそうですね。
地図を出せばすぐ移動できるというわけではなく、地図を出して選択を切り替えてから選ぶという仕様のため、すぐ移動したい場合はストレスです。
スターフォールイベントではスロットが視界の邪魔になっているなど、本作はUI・UX(画面の使いやすさ)が、かゆいところに手が届かない不便さが否めませんでした。
追 記
一部のUI・UX部分はDLCアップデートで改善されました。昼夜スキップができない
オープンワールド系ゲームではほぼ実装されている昼夜が切り替わるシステムは、今作では採用されていません。
謎解きの中には夜限定の内容もあり、昼の場合は待つか、どこかで時間をつぶさないといけません。
オブジェクトが急に消えたり出現する
オブジェクトが急に消えたり現れるのはアドベンチャーのころからままあったため、長年やっている人は「いつものこと」ですけれど、ここも気になる人は気になるポイントです。
実際にプレイするとだんだん気にならなくなりますし、それでも違和感のある人は、オプションでカメラの距離を近くにしたり、画角を狭くしてもいいかもしれません。
HD版ワールドアドベンチャーもボコボコ出ていたけど、障害物や被写界深度で上手く隠してたね。
スピード・リング所持強化が手間
長老ココによるスピードやリング所持の強化は仙人ココと異なり、毎回レベルを1ずつしか上げられない仕様になっています。
「どのぐらい上げるか」を選ばせる感じにしたほうがいいですね。
追 記
DLCアップデートにより改善されました。音声ダイアリーの誤植
エッグマンのボイスログでテイルスを語った内容に、「アークのステーションスクエアで〜」というセリフは、「アーク『や』ステーションスクエアで〜」が正しいと思います。
アークはスペースコロニーの名称、ステーションスクエアは都市ですからね。
追 記
アップデートで誤植が修正されました。真ラスボスのバトル
真ラスボス戦は、まさかの惑星相手にシューティングゲームでしたね。
トレジャー作品の『斑鳩(いかるが)』のシステムで『罪と罰 地球の継承者』のラストをやっている感じがあります。
難易度はあれほど難しくはない。
ハッキング画面もシューティングでしたから伏線はあったし、べつにダメだと言いたいわけではないものの、評価が分かれるバトル内容です。
岸本ディレクターもラスボスに賛否両論が出ることは想定していたらしいので、だから最高難易度限定なんだろうなと思いました。
総評:シリーズに新たな方向性をもたらした作品
操作性が不便だったり、ストーリーの見せかた、後半の密度の低さ、ミニゲームの調整の粗さなど、不評点・課題点の部分は多々見られます。
調整不足や欠点はあるにしても総合的には非常に満足で、楽しめたソニック作品でした。実際にプレイしないと、 真の面白さが伝わらないゲームです。
日本語翻訳問題は優しさが空回りした結果
日本語翻訳の問題は、日本ユーザーにもソニックを知ってもらおうと敷居を下げた岸本プロデューサーの優しさの結果ですが、結果的な空回りとユーザーとのすれ違いで残念な形になりましたね。
岸本プロデューサーは、リードゲームデザイナー・プランナー職という「制作のまとめ役」の方であり、脚本家でもマンガ家でもありませんからね。
日本ゲーマーの行間が読めない(読もうとしない)問題もそうですし、脚本執筆経験のある方が岸本プロデューサーをもっとフォローしていれば、ここまで言われなかったでしょう。
岸本プロデューサーの優しさと善意・想いは理解できるものの、日本語版はセージとエッグマンの親子関係など、イアン氏の脚本の良さを損ねている部分がちょくちょくあります。
シリーズの翻訳監修者の豊田氏は映画ソニックの翻訳をしていたため、本作を監修しきれなかったと明かしています。
岸本プロデューサーのX(ツイッター)をみたら、フォローの3割がエヴァ関係の人だった。本作のエヴァ色の強さはもしかして……
ついにどうするかが見つかった
- 「ソニックのゲームはスピードが怖い」
- 「ソニックは知っているけどゲームはやったことがない」
これを払拭するため、カラーズはカラーパワーを導入、ロストワールドでソニックを遅くし、フォースで本編でも残機廃止・ステージ短縮と「遊びやすいソニック」を模索していましたね。
ゲーム自体は面白い部分もいくつかあったし、苦労は伝わってくるけれど、試行錯誤をしすぎて迷走していたのも否めない。
アニメ版トゥーンは多くのノミネートや受賞、実写映画はゲーム原作の歴代北米興行収入1位を獲得する一方、ゲームはカラーズ以降いい評価を得られませんでした。
しかし、今後のソニックはどのようにするのか、その方向性をついに見い出しただけでもフロンティアは革命であり価値があります。
公式が一番複雑な思いだったかと。一時期子供向けにしようとしたのもそういうことだし。
Sonic Boom (TV series)|Wikipedia
映画「ソニック・ザ・ムービー/ソニック VS ナックルズ」,全世界興行収入4億ドルを突破。ゲーム原作映画史上最高の全米興行収入記録を更新|4Gamer
初週売上はアドベンチャー2に迫る勢い
東京ゲームショウでは評価も高く大盛況、発売後もはじめてソニックを遊んだという人が、有名人も含めて各所から聞こえているのは、これまででは見られなかったいい流れです。
海外版の記事(ファミ通調べ)によると、日本国内における本作の初週売上は全機種合計約4.6万本。アドベンチャー2の初週売上に迫る勢いで、ここ20年ではトップクラスだったそう。
日本ではせいぜい1万本売れたらよかったレベルだったのに、これは第三世代ソニックのいいスタートになりました。なお、一番売れたのはスイッチ版みたいですね。
今作はダウンロードコンテンツ(DLC)にも力を入れていますし、もっと本作を快適かつ楽しめる遊びが増えると嬉しいです。
まあ海外ファンはすでにMODを大量量産しているけどね。
追 記
2023年11月時点で全世界350万本を突破したそうです。これもここ20年ではかなりの快挙だそうです。\✨世界累計販売本数300万本突破✨/#ソニックフロンティア
— ソニック・ザ・ヘッジホッグ【公式】 (@SonicOfficialJP) March 22, 2023
🔵『日本ゲーム大賞2022』 フューチャー部門受賞✨
🔵『ファミ通・電撃ゲームアワード2022』アクションアドベンチャー部門最優秀賞受賞✨
JAPAN CHARTS: SONIC FRONTIERS BECOMES FASTEST-SELLING MAINLINE GAME IN 20 YEARS|SONIC STADIUM
SONIC FRONTIERS SELLS OVER 3 MILLION COPIES WORLDWIDE|SONIC STADIUM
世界累計350万本、国内は前作の3倍以上売れた。でも「もっと行ける」。『ソニックフロンティア』が開拓した新たな地平を振り返る発売1周年インタビュー|ファミ通.com
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Skebはカラーイラスト、Fantiaは白黒イラストのみのリクエストになります。
断られても条件や内容を変えれば、改めてリクエストが可能です。
二次創作リクエストの場合は創作ガイドラインで許可されているもののみです。
R-18や過激な暴力描写・信用毀損目的などのご依頼はできません。