
ゲーム作品において、2010年の『ソニックカラーズ』から2017年の『ソニックフォース』まで、ソニックの性格がアドベンチャー時代のころと変わり、アメリカンな性格になったことがあります。
その原因を脚本を担当したケン・ポンタック(ケンポン)氏にあるとし、

なぜソニックをスベった行動ばかりするおかしい性格を変えたの? ソニアドのときのカッコいいソニックを返してほしい……

ケンポンの書くソニックは嫌い。ケンポンを採用するのはマジやめてほしい。

ケンポン脚本はマジでひどすぎる。ソニックを知らない人に脚本書かせるなよ……
日本のみならず、アドベンチャー系列が好きな一部海外ファンからも批難され続けてきました。
しかし、ものづくりの観点から言えば、
ケンポンソニック問題でケンポン氏を責めるのは大きな間違い。というかそれ、デマなんだけど……

ここを伝えられればと思いますし、2024年に当事者のひとりであるウォーレン・グラフ氏から、ケンポンソニックには脚本家とセガ&ソニックチームの闇深い大人の事情が告発されました。
この記事はケンポンソニック(ケンポン脚本)を擁護(ようご)したいとかではなく、
CHECK!
脚本の話と脚本家の話は全く別物であることを理解すべきで、ケンポンソニックにおける脚本家は戦犯ではなく、むしろ実質的に被害者。この点を今回の告発をきっかけにしっかり理解してほしいなと思います。
ソニックを語るときのみならず、物事を述べる際は背景・状況の確認が大切という良い教訓で、なぜタイトルに「被害者」とあえて書くのか、記事の目的もしっかり考えるようにしてください。
いまだケンポン氏を戦犯・諸悪の根源のように扱う人もいるので、彼らの風評被害やデマ、誹謗(ひぼう)中傷の抑止という意味でも、教えてあげてほしい内容になっています。
この記事を読んだらすぐ拡散してほしいぐらい。自分から拡散希望って言うのは好きじゃないけど、そのぐらい闇が深いよ。

しかし残念ながら「脚本家は被害者」と書いた意図を理解していない人も散見されます。記事にしっかり書いているのですが……

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ケンポンソニックとは

© 2010 SEGA
ケンポンソニックは、2010年のカラーズから2017年のフォースまであったアメリカンな性格のソニックで、これらの脚本を担当したのはケンポン氏であったため、そのように言われています。
実際はケンポン氏とウォーレン氏の共同執筆。日本だとケンポン氏の名前が挙がることが多い。

正確には2019年のチームソニックレーシングまでですが、日本語版はアドベンチャー寄りな性格になっています。


© 2001 SEGA
精神年齢が高いアドベンチャー系列のソニックとは異なり、とにかくコミカルかつ軽率な行動でミスをするなど、年相応な性格になっています。
このように性格の落差が激しいため、特にアドベンチャー系列のソニックが好きな人からはマイナスに見られていました。
カラーズの終盤でテイルスをエレベーターに入らせるシーンはカッコいいですけどね。

ある意味先祖返りで、昔のカートゥーン作品はケンポンソニックに近い。というよりそれ以上。

ケン・ポンタック氏はソニックをよく知らない人
ケンポン氏はソニックをよく知らない人であり、その事情をインタビューなどで都度語ってしまったこともあって、ますます火にくべる薪になったのは否めないですね。
SNSでも敬意がない海外ファンに対して、過激な発言をしていることが多々あるからね。

ソニックの性格が変わった理由


セガとソニチの
闇深い大人の事情
ここからが本題で、なぜソニックの性格がケンポンソニックになったかは、飯塚氏のインタビューや中村氏の書き込み、2024年のウォーレン氏の告発から把握することができます。
飯塚:『マリオ&ソニック』が成功して、潜在的だった若いユーザー層を獲得することができました。しかし若いユーザーだけではなく、それも含めたあらゆる層にアプローチしていきたいと考えています。
(中略)
飯塚:(アドベンチャー系列は)暗くシリアスな雰囲気が多かったですが、私が思うソニックはのんびり・楽しい雰囲気という認識です。マリオ&ソニックをつうじてそれを再確認しました。(意訳・要約)
Sonic Colours Producer, Takashi Iizuka – Interview(アーカイブ)|SPOnG.com
また、本作では『ソニック』シリーズ初となる、アメリカ人によるシナリオライターを起用されているとのこと。これにより、アメリカ人にもユニークに感じられるストーリー展開になっている。
『ソニック フリーライダーズ』と『ソニック カラーズ』に見る、世界的人気シリーズの可能性はさらに広がる【E3 2010】|ファミ通.com
今回、ストーリーは、日本でストーリー要素や流れを作り、全体をしっかり書き上げてから、アメリカにて、セリフや間をリライトしてます。日本版は、更にそこからリライト。時間がかかり、イベント班には多大な迷惑を…。 #ソニックフォース #sonicforces
— Nakamura_Shun X Sega G (@Nakamura_ShunR) August 10, 2017
Correction, Ken and I wrote a million drafts for each game. Each draft got a ton of character and story notes from Sega/Sonic Team. Every word we wrote, every character trait, and every story point was given to us by them or based on the Sonic Game Bible. We had very little say. https://t.co/HxpTofK4eo
— Warren Graff (@warrengraff) January 13, 2024
ウォーレン:訂正しますと、ケン・ポンタック氏と私はゲームに膨大な数の草稿を書きました。各草稿にはセガやソニックチームから、大量のキャラクター設定と大まかなストーリーを提供された形です。
私たちが書いた脚本における、すべての人物の言葉・セリフ・特徴、そして話の展開は、セガ・ソニックチーム公式から指示されたか、ソニック公式資料に準じたものです。
私たちには、(脚本に関して)ほとんど発言権はありませんでした。
ウォーレン・グラフ|X(ツイッター)における告発(翻訳・意訳)
これらの情報から要約すると、
CHECK!
『マリオ&ソニック』の成功から、若い世代やファミリー層にもソニックをアピールする路線に変更したため。なお脚本家に発言権はほとんどなかった。という、大人の世界の闇深い事情を察することができます。
つまりケンポン氏たちはセガとソニックチームの戦略に振り回された、ある意味では被害者だったということ。

中村氏の書き込み内容を見るに、「脚本を書いた」というよりも「脚本のリライト(調整)をした」が正確な表現でしょう。

ストーリーも薄くなった要因

© 2006 SEGA, 白組
ワールドアドベンチャーからシンプルな物語にし、カラーズからフォースまで一気に薄くなったのは、アクションに注力し新世代・ファミリー層にも向けた戦略ならスジがとおります。
明るくコミカルな世界観も、「ソニックは暗くシリアスな世界より、のんびり・楽しい世界では?」という公式の考えが先ほどわかりましたよね。
それに関連する内容で、ワールドアドベンチャーの前作にあたる『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2006(新ソニ)』の影響・反動も考えられます。
新ソニはゲーム部分の不評(ロードの多さ・調整不足など)が挙げられがちではあるも、海外ではストーリーが複雑で重すぎること、異種間の恋愛について厳しく見た人がいるんですね。
特にソニック(獣人)とエリス(人間)の恋愛模様を受け入れられない人も当時多かったんだとか。

海外だとソニックはのんびり・楽しい世界が当たり前

© 1993 SEGA, DIC Entertainment
当時の海外では飯塚プロデューサーが言う「ソニック=のんびり・楽しい世界」というイメージ・支持層がかなり強い時代で、特に初期のカートゥーン作品・CM・ゲームがそうだったんですね。
さきほど引用したカラーズのインタビューでも、
SPOnG:つまり飯塚パパが、ソニックを(本来ののんびり・楽しい世界に)とり戻してくれるんですね?
飯塚:(笑ってうなずく)
SPOnG:では今後のソニックシリーズ作品は、ソニックカラーズのようなカラフルでシンプル・のんびりな雰囲気になると。飯塚:はい、それが私のビジョンです。
SPOnG:それは良いビジョンです。気に入っています。
Sonic Colours Producer, Takashi Iizuka – Interview(アーカイブ)|SPOnG.com
(翻訳・意訳)
このように語るぐらいですから、ワールドアドベンチャーや秘密のリングなどのクッションを経ながらも、その反動はあったのではないでしょうか。
公式情報だと新ソニの売上は悪くなかったそうです。しかし人気に陰りができるほど、この作品は深い傷あとを残しました。

GUNや連邦政府が出ると必然的にシリアスになるし、ファミリー向けの設定ではないからね。

薄くなった要因の蛇足として、2021年までセガCCOだった名越稔洋氏の『龍が如く』シリーズと売れそうなコンテンツしか力を入れない作品格差で、ソニックは対象外だった話もあります。
ただしあくまでもウワサでしかない未確証の話であり、名越氏が戦犯と言いたいわけでもありません。話の本筋からズレるという意味でも今回は割愛(かつあい)します。
Remember When Sonic Kissed A Woman?|KOTAKU
The 8 wrongest romances in video games|gamesradar+
フロンティアで設定を復活

© 2022 SEGA
脚本家がイアン・フリン氏に変わった2022年のフロンティアからは「GUN・連邦政府などは存在した」にもどし、テイルスチューブやIDW版などで設定を後付補完・整合性をとっています。
これが2022年以降における正史作品の状態で、フロンティアから再度ブランド戦略を変更したことがインタビューで確認できますからね。
こうして見ると、大人の事情でソニックは右往左往しているんだなと感じてしまう。

桜井政博氏も「絶対に買う」と話題になった『ソニックフロンティア』は最初は“厳しい意見だらけ”だった。 「目的地に向かうまで退屈」「なにも起こらない」「草原だけ」を解決した本作の新要素について聞いてみた|電ファミニコゲーマー
[インタビュー]「ソニックフロンティア」ストーリー担当は筋金入りのソニックマニア。“夢の仕事”だったシナリオ制作やその手法を聞いた|4Gamer
ビジネス展開の弊害
こういったビジネス重視の行動でファンからひんしゅくを買った例はほかにもあり、
- 【ボーカル曲禁止令】2013年から2017年までボーカル曲が廃止される。
- 【英語の削除】本編ソニック(フォース)から英語が消えて架空文字になる。
上記もビジネス展開による変更なんですね。
ボーカル曲を廃止した時期があるのは、海外スタッフの音楽の価値観が各国で違うことへの懸念、本編(ソニックチーム関与)作品で架空文字になったのも、似たような理由と考えられます。

なんでボーカル曲を使わなくなったんだ!

英語表記は初代から続くソニックシリーズの伝統だろ!
その結果、ファンからこういった声が飛んでしまうことになるんですね。
ボーカル曲禁止令は日本ソニックチームのインタビューで明かされていますし、架空文字の件はフォースの三浦アートディレクターが公式コラムで発言しています。
中村:プロデューサー的には海外チームからのネガティブな反応が心配だったんです。『ソニック』は海外で絶大な人気のあるタイトルなので、カルチャー的な違いもあって音楽面は毎回けっこう揉めるんですよ(苦笑)。
それで、ボーカル曲を事前の相談ナシでやることは心配だったのですが、結果いきなり気に入ってくれて安心しました。いい着地点に持っていけたかなと思っています。
岸本:いまだから話せますけど『ソニックロストワールド』のときは海外から“ボーカル曲禁止”っていう制約があったので、そのうっぷんもあったというか…………。
一同 :(笑)。
大谷:せっかくボーカル曲をやることになったので、であればたくさんやってしまおうと(笑)。
『ソニックフォース』完成記念インタビュー 中村Pらに聞く“王道ハイスピードアクション”を求めての道のり|ファミ通.com
三浦:ソニック含めキャラクターたちが住む世界は、現実の人間世界ではないので背景に英語などのいわゆる「文字」を使用していません。
『ソニックフォース』グラフィックコラム 第1回 背景デザイン|ソニックチャンネル
フォースから中国市場の展開もスタートしていますから、なおさらグローバルに気をつかっている感じでしょう。
昔のポケモンはゲーム・アニメなどで日本語・英語があったのに、グローバル展開で架空文字に変わったのと同じだね。

結局は海外スタッフの行き過ぎた配慮と思い直してボーカル曲解禁、英語も本編や完全新作でなければ使われています。

マリオ&ソニックの存在

『マリオ&ソニック AT 北京オリンピック』は全世界1,000万本以上売れたソフトで、その流れでマリオが好きな層をソニックにも取り入れたいと思うのは、ビジネスだと自然な流れです。
確証はないものの、この作品を出して成功させないとセガは企業の存続が危なかった話もあり、そういった話を仮に事実として踏まえると、ソニックのマリオ化は考えさせられます。
さすがに「倒産」はオーバーにしても、発売は2007年で、当時は2006年の新ソニでしくじって海外人気も下がったからね。

だからカラーズから、ソニックをマリオのように誰でも受け入れやすくしたということですね。それを決めたのはセガとソニックチームで、脚本家に発言権はほぼありませんでした。
これはつまり、たとえカラーズの脚本をアドベンチャー2担当の前川司郎氏や、フロンティアの話を執筆したイアン・フリン氏にしようが、ケンポンソニック化しただろうということです。
ファミリー向けにしたい → その脚本をよく執筆している人を探す → ケンポン氏とウォーレン氏を採用……だろうね。

Mario Sports|Video Game Sales Wiki
住み分けに方向転換

© 2023 SEGA, アーゼスト

© 2023 SEGA, Hardlight, Power House Studio
チームソニックレーシングやフロンティアからアドベンチャー系列のソニックに戻したのは、クラシックソニックの復活でファミリー路線をそちらに移して住み分けをした判断だと思います。
『ソニックドリームチーム』みたいなファミリー向け作品もありますから、モダンソニックのすべてがそうなったとは断言できないにしろ、「住み分けを明確にした」のは英断ですね。
そういった意味で考えると、クラシックソニックシリーズはアドベンチャー好きの人たちからすると救世主かも。

脚本と脚本家の話は違う


混同するから
的はずれになる
ここまで読んでもらえれば、脚本と脚本家の話は全く別問題であることが理解できると思います。百歩ゆずって同人ゲーム作品のシナリオに苦言しているならわかるんですけどね。
商業作品のゲームというのは、脚本家が独断でシナリオを作ることはありえません。必ずプロデューサーや監修者が脚本に目をとおす品質チェックがあります。
今回のケンポンソニックは脚本家のせいではなかった問題は、ウォーレン氏の告発で明らかになったものの、ものづくりの仕組みを把握していれば告発がたとえなかったとしても、

この脚本でOKとったんだな……なぜプロデューサーや監修者は問題ないと判断したんだろう?
このように考えられますし、探究心の強い人ならインタビューも探す意識に持っていけます。
冷静に考えたらわかることだよね。外部の脚本家は雇われなんだから、脚本家の独断なら大変なことになる。

最後に:「ケン・ポンタックのせい」はデマ・風評被害


情報からひも解いた
推測話と事実
以上、なぜケンポンソニックに変わったのか、脚本と脚本家の話は別物であり、脚本家を叩くのは間違いだということを解説しました。
ケンポンソニックになったのは言葉が悪いながら、
CHECK!
セガとソニックチームが『マリオ&ソニック』の成功に味をしめ、マリオのようなアクション重視のファミリー路線にして幅広いユーザーを取り入れる戦略へ変更した。そのようになり、ソニックの性格・脚本の不満は、発言権がほぼなかったケンポン氏たちに矛先を向けられ、日本のみならず世界中からスケープゴート(悪者)にされたと考えられます。
もちろんセガやソニックチームが上記を公式発表しているわけではありません。情報から推測した話であることはご留意ください。
ただ少なくとも、「性格・脚本がおかしいのはケン・ポンタックのせい」はデマ・風評被害であり、開発者インタビューだけでも理解できるでしょう。
関係者じゃないから、真相の根っこは当事者にしかわからない。しかし脚本家のせいにするのだけは間違っていると言えるね。

「ケンポンのせい」と思っているのはこういうこと
考えてみてください。「ケン・ポンタックのせい」「脚本家のせい」とは、
- ウォーレン・グラフ氏の存在を無視
- アドベンチャー系列しか知らないにわか
- 海外のソニックを知らない
- 同人作品と商業作品を混同
- ものづくりの世界を甘く見すぎ
- 脚本と脚本家の話を一緒にしている
- 書く前に調べようとしていない
- 開発者インタビューを読んでいない
- 非公式なネット・SNSの話をうのみ
そう自己紹介するのと同じです。自分は説明のときに便宜(べんぎ)上「ケンポンソニック」という表現を使って問題提起しているものの、正直使いたくない言葉なんですよね。
ハッキリ言ってウォーレン氏を無視してケンポン氏を叩く時点で、情報を疑わずうのみにしている証拠。恥をかくのは自身だよ。

書く前に情報をまず疑う。そして一次情報と内容の整合性を確認するのは大切です。デマ拡散や誹謗中傷対策と同じですね。

「誰が悪いか」という話ではない
ウォーレン氏の書き込みが海外で話題になったのに、セガ公式から削除申請されず弁解もないのは、セガ広報のリテラシーが低いか、一個人の意見として気にしない強者の風格かですね。
まるでセガやソニックチームを悪者にするかのように聞こえるかもしれませんがそうではありません。ビジネス的な観点で考えれば、ファミリー路線は考えられたひとつの選択肢です。
真摯(しんし)に反省してファミリー路線をクラシックソニックへゆずって、ソニックの住み分けをおこなったのは素晴らしい対応だと思います。
この問題に「誰が悪いか」と犯人探しや論ずる人はナンセンスです。それはものづくりの世界を短絡的・甘く見すぎでしょう。
企業ならマイナスになる告発系は策を講じます。開発者の発言と告発内容に整合性があり、ほぼ事実と考えていいでしょう。

賢い人なら、試行錯誤とすれ違いが重なった結果と気づくよ。

ファミリー向けに対する価値観

© 1999 SEGA, DIC Entertainment
『Sonic Underground』など初期カートゥーン作品のソニックなら、ケンポンソニックが可愛く見えるソニックはありますよね。
アメリカンで軽率な行動をするソニックはケンポンソニック特有のものではなく、過去にもそういったソニックがいたことがわかります。

© 2022 SEGA, WildBrain
2024年現在の3Dアニメ(トゥーン・プライム)でも同様の性格は見られますから、海外のファミリー向けに対する価値観の違いでしょう。
アメコミヒーロー作品によくある、「ヒーローは決して完璧超人じゃないし、失敗から学ぶ大切さ」を説くのと同じかも。

ソニックは作品で性格が変わる

© 1996 SEGA, スタジオぴえろ
一方でソニックは「生意気だが優しい」を軸にして性格が作品ごとで変わり、コミック版やアニメ版だとより顕著(けんちょ)です。ケンポンソニックもその軸はしっかり守っているので、
さまざまなバットマンやスパイダーマンがいるように、「数ある世界」のソニック。ケンポンソニックが好きな人もいるだろうからね。

というのが個人的な見解になります。
「ソニックは日本生まれの海外コンテンツ」です。ソニックの性格が〜と言う前に一度、この言葉の意味を一度見直してもいいかと思います。
海外ファンはどちらかというと、アドベンチャーが好きすぎて派手にこじらせた感が強い。

ストーリーが薄くなっていた要因

© 2017 SEGA
この路線はソニックの性格のみならず、ゲーム作品のストーリーにも大きな影響を残しました。
まだワールドアドベンチャーだと、ストーリーがシンプルながらも熱い王道展開でまとまっていたにも関わらず、カラーズからフォースまで、内容が一気に薄くなる形になっています。
これは新世代・ファミリー路線に方針転換してGUN・連邦政府などの難しい要素を省き、マリオのように敷居を下げて誰でも受け入れやすくしようした結果でしょう。
また、2006年に発売した新ソニはバグの多さ・調整不足のみならず、暗すぎてややこしいシリアスな物語や、獣人・人間の恋愛に拒否反応を示す海外ファンが見られ、その反動も考えられます。

© 1993 SEGA, DIC Entertainment
当時のカートゥーン作品などを観ればわかるように、海外におけるソニックは「のんびり・楽しい世界」という認識が根強かったんですね。
海外でもアドベンチャーシリーズのストーリーを支持する人たちがいる一方、「ソニックに暗いシリアスなストーリーは似合わない」と考える人も多かったようです。
日本だと「新ソニはストーリーが歴代屈指でよくできている」と好意的に見られているようです。

海外では逆。「ソニック06の話は重すぎだし人間とのロマンスも意味不明。ソニックでそんな話をやるな」と思われているよ。

フロンティアから再び方向転換

© 2022 SEGA, Powerhouse Animation
明るい世界観は基本的にクラシックソニックシリーズへゆずったことで、フロンティアからGUN・連邦政府などの設定を復活させました。
ケンポンソニック時代のつじつま合わせはテイルスチューブやIDWといったメディア展開を使い、後付補完・整合性をとっている状態なんですね。
公式見解でもフロンティアは「ケンポンソニック作品も正史」なものの、フォースは英語がない世界という公式発言の矛盾も残っています。
「脚本家のせい」は間違い
Hahahahaha! Glad you managed to explain after all these years, Warren. I've been a broken record about this, but nobody listened to me.
— KEN PONTAC (@ken_pontac) January 15, 2024
ケン:ハハハハ! ウォーレン、何年も経ってから説明してくれて良かったよ。
私はこのこと(脚本はセガとソニックチームの指示だった)について何度も繰り返し説明したのに、誰も聞く耳持ってくれなかったんだ。
ケン・ポンタック|X(ツイッター)における告発(翻訳・意訳)
同人作品ではないのだから、脚本家が勝手な裁量で性格設定したのはありえません。もし外部の雇われ脚本家がストーリーを自由にできる権利を持つと思っているなら、モノを知らなさすぎです。
必ずプロデューサーや監修者がチェックをするもので、セガのような大企業、しかもソニックはセガのマスコットキャラクター(=セガの顔)なんですからなおさらです。
自分もケンポンソニックには思うところはありますけれど、この記事や過去レビューを見ればわかるように、ケンポンソニックに苦言してもケンポン氏は否定してません。
別にウォーレン氏の告発がなくても、ものづくりの仕組みを知っていれば想像できることですからね。今回の告発で彼らに謝罪する海外ファンは多く、そこは救いかなという感じです。
外部の人間に軸になる部分の全権をゆだねるとか、リスクが高いし怖すぎる。どの会社でも監修者をつけるのが通常でしょう。

ケンポン氏たちに謝罪する海外ファンが続出した
この告発は前述のとおり海外ファンの間で大きな話題になり、ケンポン氏とウォーレン氏に謝罪する人が続出したため、現在は彼らに苦言する風潮は海外だと一部を除き沈静化しています。
the fact we were so hard on you both is super embarrassing on our part. even if you had complete creative freedom with sonic, that would still be no reason to give you personally all this grief. this might have already been said before by other people, but sorry for all that.
— NatNatNat (@natsukiforces) January 14, 2024
So it was sega then. Apologies that you and Ken had to go through all of that.
— supernotfunny (@supernotfunny18) January 14, 2024
To both of you, I think the entire fandom did something that I am truly sorry for as everyone chose the wrong person to attack, and I owe you guys an apology.
— バンバラパー (@XDAmzTUJ8D85693) January 15, 2024
NatNatNat:私たちがあなたたち2人に厳しくあたった事実は、私たちにとって非常に恥ずかしいことです。
仮にあなたがソニックに対して完全なる創造の自由があったとしても、あなたたちにこれほどの苦痛を与える理由にはならないでしょう。
他の方からも言われているでしょうが、本当に申し訳ありませんでした。
NatNatNat (@natsukiforces)(翻訳・意訳)
supernotfunny:(ケンポンソニックは)当時のセガのせいだったんですね。ウォーレン氏・ケンポン氏がそんな思いをしなければならなかったことをお詫びします。
supernotfunny (@supernotfunny18)(翻訳・意訳)
バンバラパー:あなたがた2人に対して、ファンコミュニティは間違った相手を攻撃するという、本当に申し訳ないことをしました。
私はあなたたちに謝罪する義務があります。
バンバラパー (@XDAmzTUJ8D85693)(翻訳・意訳)
「イアン氏だって脚本執筆の環境・制約は同じじゃないのか」と言う人はいたものの、おそらくケンポン氏たちと、イアン氏の執筆の環境・条件は違うと考えられます。
実際、イアン氏の判断でフロンティアの脚本にスティックスの名前を入れ、開発陣と密な脚本相談したことを本人が明かしています。その点でもケンポン氏たちとは待遇が違うようです。
フロンティアからブランド戦略を再度変えたことがインタビューで明かされていますからね。

桜井政博氏も「絶対に買う」と話題になった『ソニックフロンティア』は最初は“厳しい意見だらけ”だった。 「目的地に向かうまで退屈」「なにも起こらない」「草原だけ」を解決した本作の新要素について聞いてみた|電ファミニコゲーマー
[インタビュー]「ソニックフロンティア」ストーリー担当は筋金入りのソニックマニア。“夢の仕事”だったシナリオ制作やその手法を聞いた|4Gamer
ケンポン氏たちを戦犯扱いする人に教えてあげてほしい
しかし日本では、飯塚氏・中村氏たち開発スタッフによる脚本の裏事情発言や、ウォーレン氏の告発を知る人は非常に少ないのが現状です。

ケンポンはソニックのイメージをつぶした戦犯だ!

ワールドアドベンチャーで持ち直したのに暗黒期にした元凶。

ソニックの性格がおかしいのは、ソニックシリーズのことをよく知らない脚本家のせい。
このようにいまだデマを信じて疑わない、脚本と脚本家を混同して叩く人が存在しますし、中には彼らを人格否定するケースもありますからね。
「100%被害者というのは違う」は本質を見ていない

ケンポンとウォーレンが100%被害者というのは違うだろ。特にケンポンは反感を買うような問題発言もあったじゃないか。
ファンの間では謝罪だけではなく、このような反論を言っている人がチラホラいますが、話の本質を見ていません。
CHECK!
脚本と脚本家の話は違う。背景を調べないリテラシーの低さと、特定人物を一方的に叩き・攻撃したという「事実・結果」の問題で、「脚本家は被害者」はその意味合いが強い。これが当問題における話の軸・本質です。
「脚本家は被害者」とは、発言権がほぼなく公式に振り回されたという意味以上に、リテラシーの低いファンたちに不当な叩き・攻撃を10年近くされたという意味の「被害者」です。
たとえ相手の言動に反感を買うものがあったとしても、特定人物の人格攻撃・誹謗中傷をした「事実・結果」を正当化できる口実にはなりません。
発想が悪質クレーマーと同じ

刺されたのは仕方がない。夜道を歩いているほうも悪いだろ。
「言われる理由があったから叩かれても仕方ない」は、そう言うのと本質的に同じです。相手に欠点があれば何言ってもいい思考も、悪質クレーマーと発想が同じと気づかないのが不思議ですね。
ちなみに心理学の世界では、この思考形態を『公平世界仮説』といいます。
もし脚本家が公式をだましてソニックを私物化した、公式相手に威圧したみたいな行為があったなら、それは別案件で批難されるものです。
しかしこの件はそうではないし、ケンポン氏の攻撃的な書き込みも流れを見ると、一部ファンが脚本家へのスジ違いなバッシングを書いたから、返信で応酬した流れがほとんどでした。
「大人の対応としてどうなんだ」とは思うけど、ろくに調べないで勝手に悪者扱いをされたら言いたくなる気持ちはわかるよね。

人はなぜ被害者を責めるのか?(公正世界仮説がもたらすもの)|心理学ミュージアム
自分に言い訳しているだけ
『木を見て森を見ず』を理解していないというか、0か100で考えないで、もっとマクロ(広義的)な視点で物事を述べるべきでしょう。
タイトルが「脚本家は被害者」だったり、冒頭で「物事を述べる際は背景や状況の確認が大切」と述べたり、しつこいぐらい「脚本と脚本家の話は違う」と書くのはそういうことです。
「100%被害者というのは違う」と言う人って、「ケンポン氏たちを不当に攻撃し、デマを流した罪」を認めず、バツが悪い上に非を認めたくないから言い訳・正当化する側面もあると思いますね。
ネット・SNSユーザーの問題行為が報道されると、「テレビや新聞もやっているじゃないか」と責任転嫁(か)するのと同じですね。

こういう人たちを「心が弱い人」とよんでいるよ。メンタルが弱いではなく「自身の心の弱さに負ける他責的な人」という意味。

ものづくりは単純ではない
「誰が悪い・悪くないか」ではなく、「ものづくりはそう単純じゃないし、ろくに調べないでデマ・風評被害を広げる罪深さ(=脚本家は被害者)」が、この記事で一番言いたい趣旨・意図です。
ケンポンソニックになった理由を知りたい人、いまだケンポン氏を叩く人を見かけたら、この記事を紹介してウォーレン氏を含む彼らの汚名返上にご協力いただければと思います。
商品は世の中に出せば、「誰かのせい」ではなく「会社のせい」になる。自分のような制作会社の人からすれば当たり前の話。




