以下から、ニンテンドースイッチ版の『ソニックフォース』をストーリークリアしたレビューになります。
ソニックフォース|ソニックチャンネル
ネタバレ注意
作品の内容・結末が記述されています
『ソニックフォース』はこんなゲーム
過去作演出が多い
- 新たな『ソニックジェネレーションズ』
- シリアスな『ソニックカラーズ』
- 現代水準で作り直した『ソニック2』
- (アバターでいえば)ソニックチームが作った『ソニックトゥーン』
ストーリーやステージ部分でも、結構過去作品を彷彿(ほうふつ)とさせる演出・要素が多いのが今作の特徴です。
初心者配慮のモードはあるとはいえ、ソニックシリーズが好きな人向けな印象を受けました。
オメガが機能停止しているシーン | 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ(新ソニ)』の未来世界 |
---|---|
幽閉されているソニック | 『ソニックアドベンチャー2(ソニアド2)』のプリズンアイランドのイベントシーン |
インフィニットの(ソニックに対する)ドブネズミ発言 | 『ソニックと秘密のリング(ひみリン)』の |
追加コンテンツのシャドウストーリーの楽曲やインフィニットとシャドウの対面シーン | 『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ(シャドゲ)』の曲やOPムービーなど |
ファントムルビーの存在 | 『ソニックマニア』にも登場している(設定的にはフォースはマニアの地続き) |
「カジノフォレスト」のギミック | 『ソニック2』のカジノナイト |
「エッグゲート」の最初の分岐や「キャピタルシティ」のステージギミック | 『ソニアド2』のファイナルラッシュ(前者)やクレイジーガジェット(後者) |
「エッグゲート」の後半 | 『ソニック&ナックルズ』に登場したボス(レッドアイ)がいる |
「ミスティックジャングル」のインフィニット戦 | 『ソニックロストワールド』のステージギミック |
アバターのアイテム | 『ソニックトゥーン』のソニックになりきれるアクセサリーがある |
個人的に驚いたのが、『ソニックトゥーン』のソニック(ブムソニ)のアクセサリーですね。
中の人的に、いっそスティックスのアバターコスチュームも配信してくれたら面白かった。
『スターウォーズ』と『仮面ライダー』のパロディ
ほかにも、『スターウォーズ』と『仮面ライダー』のパロディがいくつか見受けられましたね。
デスエッグのモチーフは「デス・スター」、ウィスプ音声は「ガイアメモリ」などのパロディ自体は昔からですが、ダブルブーストが「W.Boost」なのもそうですね。
さすがに海外ではわかりづらいのか、「Double Boost」のつづりに変更されています。
英語が存在しない世界
世界観が変わるのは
よくあること
公式グラフィックコラムによると、今作のソニックの世界は現実の人間世界とは違うので、英語などが存在しない独自の世界と明かしています。
三浦:ソニック含めキャラクターたちが住む世界は、現実の人間世界ではないので背景に英語などのいわゆる「文字」を使用していません。
『ソニックフォース』グラフィックコラム 第1回 背景デザイン|ソニックチャンネル
(映っていない可能性があるとはいえ)人間がエッグマン以外いなかったり、『ソニアド』でたびたび描かれていたGUNや連邦政府は、今作の世界には存在しない可能性が高いです。
英語を使わなくなったのは後述するボーカル曲問題と同じく、グローバル展開の都合から英語だけをピックアップすることができなくなった大人の都合でしょうね。
アニメポケモンも初期は日本語や英語を使っていたけど、グローバル展開の事情から架空文字に変わったのと一緒。
なぜ7年間もボーカル曲を避けたのか?
公式がボーカル曲を
使おうとしなかった理由
今作でボーカル曲がメインテーマに採用されるのは、カラーズ以来7年ぶりとなるんですね。
ではなぜこの7年間、ボーカル曲をあまり使ってこなかったのかの理由が明かされたので、以下にインタビューの一部を引用しておきます。
中村:プロデューサー的には海外チームからのネガティブな反応が心配だったんです。『ソニック』は海外で絶大な人気のあるタイトルなので、カルチャー的な違いもあって音楽面は毎回けっこう揉めるんですよ(苦笑)。
それで、ボーカル曲を事前の相談ナシでやることは心配だったのですが、結果いきなり気に入ってくれて安心しました。いい着地点に持っていけたかなと思っています。
岸本:いまだから話せますけど『ソニックロストワールド』のときは海外から“ボーカル曲禁止”っていう制約があったので、そのうっぷんもあったというか…………。
一同 :(笑)。
大谷:せっかくボーカル曲をやることになったので、であればたくさんやってしまおうと(笑)。
『ソニックフォース』完成記念インタビュー 中村Pらに聞く“王道ハイスピードアクション”を求めての道のり|ファミ通.com
ファミリー路線をとり入るため、ボーカル曲をあまり出さなかったのだと思ってましたね。
現にロストワールド発売前、ボーカル曲がない理由に大谷氏が「アクションゲームの音楽として本気で取り組んだから」と答えてはいました。
今になって考えると、半分は本当で半分は方便だったんでしょう。
今回のメインテーマ『Fist Bump』は結構気に入っています。新ソニの『His World』の次ぐらいに好きかもしれないですね。
His WorldはiTunesで数千回以上も聴いているレベル。
ブーストソニックの2D要素
インタビューで
過去に説明済
なんでモダンソニック(3Dソニック)に2D横スクロール入れるの?
今回もこのようにいろいろ言っていますけれど、ブーストソニックの2Dは、3Dだと障害物避けのレースゲームになることと、ゲームの遊びを増やすためだと過去に言及されています。
攻略方法がクラシックと異なるため、同じ2Dでも差別化と緩急(かんきゅう)があり、しいて言うならアスレチック要素が強いアバターステージで完全3D化していいかもとは感じました。
というか、文句言う人ってファンと名乗る割にはインタビュー読んでいないのか……
「ソニック ロストワールド」プロデューサーの飯塚 隆氏にインタビュー。初心者でも楽しめるさまざまなアプローチで“これからのソニック”を提示した作品に|4Gamer
どの機種で遊ぶのがオススメか
プレイスタイルで
変わる
自分がスイッチ版で遊んだのは利便性ですが、グラフィックは機械任せに簡略化処理を行なったせいか、ポリゴンやテクスチャが部分的に荒いです。
これはスイッチが当時まだ未知のハードだったため、手探りの状態で最適化をしていたことをインタビューで明かされています。
グラフィックにそこまでこだわらなければ目くじら立てるレベルでもなく、携帯モードでの処理落ちも大量の敵を倒しウィスポンの連打使用でもしなければ、十分遊べます。
しかしスイッチは30fps(フレーム)で処理落ちも少なからずあり、精密な操作によるタイムアタックには向かず、実績にも対応していないのでレッドスターリング集めがあまり意味がありません。
だから、シャドウストーリーで全回収+Sランクにしても何も起きずに終わってしまうんだよね。
よって機種別で見るならば、
- 【ニンテンドースイッチ版】利便性と気軽に遊びたい。
- 【PS4/箱版】グラフィック・本気タイムアタック・実績を楽しむ。
- 【PC版】MOD(改造データ)やファン制作のハードステージで長く遊ぶ。
で、考えてください。
Sonic Forces on Nintendo Switch: Devs Talk Development, Challenges, Resolution, Frame Rate and More|DualSHOKERS
オススメのアバター種族
使いやすい
アバターはなにか
今作の目玉であるアバター機能は、種族によって能力が変わりますので、好きな種族で作るより、最初は能力を見て作ったほうがいいと思います。
どの道ストーリークリアすれば複数のアバターが作れるわけですし、初心者なら「トリ」種族、スコア稼ぎなら「オオカミ」種族が個人的にオススメです。
トリ族は2段ジャンプで操作に融通が効き、オオカミ族はリングやアイテムを集める性質があるので、Sランクの底上げに役立ちます。
デイリーミッションのボーナス補正を使えばすぐSランクになるけども……
深いストーリーを期待するべからず
ストーリーは
あっさりシンプル
物語の展開は『ソニアド2』に近いとインタビューで語られたものの、未曾有(みぞう)の事態に敵も味方も一致団結し、緊迫感に満ちあふれた中で戦うストーリーやシーンはありません。
ストーリーはジェネレーションズにシリアス要素を足したようなあっさり感で、ワールドアドベンチャーのような熱さ、ソニアドシリーズのような深刻さも伝わらないです。
ムービーもすべて合わせると30分ほどで、(アバターのせいか)プリレンダムービー(美麗映像)もなかったですね。
正直ソニアド2のようなストーリーだと無駄にハードルを上げ、開発陣が自分で自分の首をしめてしまったね……
シルバーがいた理由などはコミックで明かされている
公式で明言されていた「ストーリーに力を入れた」という発言に期待している人の場合、それを満足に答えているとは言いがたい内容です。
公式配信されたデジタルコミックスや、公式ツイッターの非公開アナウンス動画を本編に組み込めば、また違った評価をされていたかもしれません。
本編にシルバーがいた理由はデジタルコミックス版で明かされていますし、非公開動画では支配による切羽詰まった緊張感が伝わってきます。
インフィニットやファントムルビーはもっと映像で掘り下げていいし、本編で結構使われていないボイスが多く、ほとんどが世界観の掘り下げに貢献する内容ばかりで驚きました。
発売前は本作の設定を盛り込み、手の込んだ宣伝や広報をやっていましたから、そういった盛り上がりも含めて『ソニックフォース』なのでしょう。
ヌルスペースのソニック未使用ボイスはぜひ入れてほしかったし、メタルソニック戦の未使用ボイスは本当にナックルズの大隊長ぶりが出ていたのに……
デジタルコミックス STRESS TEST ~負荷実験~|ソニックチャンネル
「素材」はよかった
料理の仕方が
よくなかった
言うなら今作は高品質な食材が揃っていたのに、一品ものの家庭料理を出された感じです。
素材自体はよく家庭料理も悪くはないですけど、一品ではすぐに食事体験が終わってしまいます。
ちゃんと下ごしらえして食材を正しく使えば、時間をかけて楽しめるフルコース料理を出せたはず……ということですね。
脚本の問題は否めないものの、没ボイスを聞くと「ものすごくカッコいいセリフなのに、なんで採用しなかったんだ」という部分があり、中にはゲームの設定を掘り下げた内容もありました。
だから脚本が悪いというより、ゲームをつくり込めない制作体制に問題があった印象。
混迷していたセガの事情?
なぜここまで内容が薄いのを考えると、2017年当時は『龍が如く』シリーズを推(お)していた名越氏が社長の時代であるため、開発部の大人の事情もあったのかもしれません。
確証がない話ではあるものの、名越氏は『龍が如く』とそれ以外の売れそうなコンテンツしか開発の力を入れてこなかったという、作品格差をしていたとの話があるそうです。
このように、当時はかなりの作品格差があったそうです。あくまでもうわさ話ですよ。
もし事実ならフォースの開発4年の割なボリューム不足を説明できてしまうし、開発者たちも災難だったということだよね。
また、今作は「ファンが求めるもの」と「開発者側の考えかた」の壁を感じて、海外レビューでは今作を苦言し、逆に公式同人ゲーム『マニア』を高く評価したのが印象的です(※リンク切れ)。
余談:「ほかのキャラクターを使いたい」論
「他キャラ使いたい」の
疑問点
シャドウストーリーでシャドウの操作可能になったのは賞賛され、個人的にもシャドウ視点の独自の物語や、シャドウ特有の操作感は好感を持ちました。
しかし、この「ほかのキャラクターを使いたい」論で疑問に思うことがあるんですよね。
- 【遊びの開拓・別視点の物語】ステージの新たなルート開拓、別視点の物語などの展開。
- 【キャラクターが好きなだけ】操作性や別視点より、単にキャラクターが好き。
正直、後者は理解しがたい部分があります。
公式にこだわる必要性があるのかどうか
ゲームの遊びや別視点の物語が垣間見える、ルート開拓の楽しみが増える意味で、ちがうキャラクターを使いたいは納得です。
ただパーティゲームでもないのに特定の人物が好きだから使いたいは、
ただのモデル変えなら過去作品やMOD、ファンゲームでやればいいのでは?
ってなりますし、フルボイスイベントを求めないのなら公式にこだわる理由もありません。掛け声程度ならサンプリングで十分です。
海外ではMOD文化が盛んで、シルバーやアメコミキャラクター(スカージなど)、カルト人気のある人物(ナゾやSONIC.EXEなど)を利用できるのは、MODやファンゲームの魅力ですね。
まあMODを入れるために公式PC版を買うとしても、それなりにスペックが要求されるけどね。
裏設定:インフィニットの本名と末路について
なお本編では明確には描かれなかった、
- インフィニットの本名はどんな名前か
- インフィニットはその後どうなったのか
については、イアン・フリン氏のBUMBLEKASTでの発言や、海外公式書籍『Sonic the Hedgehog Encyclo – speed – ia(ソニック大百科)』で明かされています。
まず本名についてはイアン氏いわく、「インフィニット」が本名だったそうです。
鉄仮面をかぶる前から、靴裏に無限マークがあったからね。
次にインフィニットの末路については、海外公式本にはこのように書かれています。
インフィニットはソニックとアバターとの戦いに敗北したあと、塔のリアクターに引きずり込まれた。
そしてリアクターにあったオリジナルのファントムルビーに飲み込まれてしまい、彼は消滅した。
『Sonic the Hedgehog Encyclo – speed – ia』より意訳
つまり、インフィニットはフォースの終盤で死亡したことが明らかにされています。
ただし岸本氏いわく本編のキャラクターなので、今後もなにかしらの形で出てもおかしくはないと公言しています。
実際、日本未配信の『ソニックフォース:スピードバトル』では、鎧を着たウォーロック・インフィニットが2023年10月に新規実装されましたね。
こんにちは!インフィニットはメインストリームタイトルのキャラクターですから、今後のタイトルで登場することがあっても不思議では無いと思います。
— Morio Kishimoto (@moq_46) February 4, 2023
ちなみにソニックマニアのクリスチャン氏によれば、本当はマニアに登場予定だったが没になったそうです。
実現していれば、クラシックインフィニットも見られたかもしれなかったんだよね。
総評:開発側が期待をさせすぎた
よくも悪くも
ソニアドの功績・罪は重い
シリアスな雰囲気のステージや盛り上げる選曲の数々、ストーリーによって同じエリアを行き来する部分は、ゲームの終わりを見させない手法で個人的に評価点です。
しかしスイッチ版は実績未対応なので、レッドスターリング集めなどはあまり意味がない。
ミッション要素やステージ中の無線ON/OFFなど、繰り返し遊ぶ配慮も設けられています。
しかしアバターのカスタマイズ性の少なさや、ストーリー内容はジェネレーションズにシリアス要素を足しただけのあっさり感が否めません。
公式のデジタルコミックスを足せばもっと世界観が広がったし、未使用ボイスもちゃんと使っていれば、まだストーリーの評価は違ったと思う。
初心者にも遊びやすい配慮より、名越社長時代におけるセガの大人の事情があったとは思いますが、タイムアタックに興味なければ長く遊ぶことは難しいでしょう。
素材はよかったのに、それをしっかり活かしきれておらず、コミック版や非公開動画で補足しないと楽しめないのは、本当にもったいないゲームだなと思いました。
もし名越氏の采配で開発を萎縮させていたと仮定したら、そうじゃない世界だったらどう化けていたんだろうね。
「誰かが悪い」はありえない
中村プロデューサーは「ソニックのストーリーが好きな人にも応えられる」と語っていたものの、期待はずれと言われても仕方がないあっさり展開は肩透かしをくらうでしょう。
しかしながらチーム制作された作品で、
- 「誰かが悪い」
- 「こいつが戦犯」
このように言う人は、企業の基本やものづくりを理解していないですね。記事中では「名越氏要因説」を取り上げているものの、名越氏だけを悪者にする意図はありません。
名越氏の件はあくまでもうわさ話で、チームで制作する以上「誰かだけが悪い」はありえません。
誰かの独断や大人の事情で開発環境や方向性が変わる、プロデューサーの裁量などの問題はあるにしても、商品として世に出せば会社・チーム全体の責任になります。
特にシリーズファンを名乗る人たちは、正しい批判(ロジカルシンキング)をしてもらいたい。それが開発側へのリスペクト(敬意)。
そういった背景も踏まえて、フォースは「可能性があった本当に惜しい作品」です。
[E3 2017]セガゲームスの飯塚氏と中村氏にインタビュー。今年発売の「ソニックフォース」と「ソニックマニア」の見どころを聞いてきた|4Gamer
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プロフィール
赤竹ただきちTadakichi Akatake
仕事で「YMYL(医療・健康・お金)記事をほぼ生成AI任せに書く」という、「これありえないだろ……」という他社の事案に遭遇してしまい驚きを隠せない。
というのもGoogleは2016年にWelq事件があったから、YMYL記事に関しては独自性・信ぴょう性をかなり厳しくチェックするようになっているんだよね。
それにYMYL記事を生成AI任せに書くとペナルティになる可能性も発表していて、こういった記事では生成AIを使うのはいいにしても、検証・監修で補完することが必須。
これを理解せず「SEOを上げるお手伝いをします!」という業者がやるんだから、いくらなんでもリテラシーが低すぎる。それで検索ペナルティを受けたら損害賠償モノなんだけどなぁ。
イラストレーター・マークアップエンジニア(コーダー)・Webデザイナー・ライターのウサギ好き。多様な絵柄を描け、外国人でも絵でわかるマンガ、ウサギと口内描写にこだわりを持つ。
コーディングとWebデザインは両方可能。納期が短いなどいった案件では、「デザインとコーディングのアドリブ同時進行」という荒業もおこない、SEO施策を意識したマークアップも得意。
フリーランスとの進行ディレクション・指示や、面接担当の経験が幾度もあり、プロ・趣味問わず、絵描きを含めたクリエイティブの姿勢には少々シビア。
「自省・リテラシー・正しい批判の認知・意識向上」をライフワークとし、当サイト記事も「気づき・理解・学ぶ」を全体テーマとして執筆。
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