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『ソニック×シャドウジェネレーションズ』の前日譚(たん)にあたるWebアニメ『闇の序章』のストーリーや、話の元ネタを解説していきます。
全部書くと膨大なのでストーリーに関係あるところ中心です。

本アニメは主に2001年・2005年に発売された、
- 『ソニックアドベンチャー2』
- 『シャドウ・ザ・ヘッジホッグ(シャドゲ)』
上記2作品の内容を中心にしてストーリーが描かれています。
この記事はソニックを知らない・スマブラでしか見たことがない、アドベンチャーしかやったことがない人にも、わかりやすい構成にしています。
公式Webアニメ版に描かれた内容の意味や、そこから本編ゲーム作品の設定を深く知るきっかけになれば幸いです。
なおPS4/PS5版には闇の序章の完全版が収録ではありますが、レーティングの影響で一部シーンがカットされているものの、追加されたラストのシャドウのシーンは必見です。
本編ゲームレビュー・元ネタまとめ記事はこちらにありますので、あわせてご参照ください。
全3話合計15分のアニメなのに満足度が高すぎる……


ネタバレ注意
作品の内容・結末が記述されています
第1話「シャドウとマリア」

マリアって女の子は誰?

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マリアは『ソニックアドベンチャー2』に登場した少女で、生まれつき『先天性免疫不全症候群:NIDS』という難病にかかっているため、スペースコロニー・アークで療養生活をしていました。
年齢はゲーム公式では明かされていないものの、2003年のアニメ『ソニックX』では当時12歳(50年前)だとされています。
ソニックの宿敵であるエッグマンはマリアのいとこ。もしマリアが現代まで生きていたらエッグマンより年上ぐらいだとか。

これは韓国ファンイベントにおけるシリーズプロデューサー飯塚氏の発言からです。

シャドウは特効薬の可能性だった

マリアの難病を治すために、エッグマンの祖父であるプロフェッサー・ジェラルド・ロボトニックは究極生命体・難病特効薬研究(プロジェクトシャドウ)としてシャドウを誕生させます。
しかしシャドウは特効薬にはならなかったものの、シャドウとマリアは姉弟のように仲良くなり、50年後の現在においても「シャドウが唯一、本当の意味で心を許した人物」です。
ソニックたちには信頼・協力こそすれど対応がそっけなかったり、挑発的な態度をとるシャドウですが、マリアにだけは素直な優しさや思いやり、弱さをストレートに見せます。
特効薬の部分はコロコロコミックのマンガ『漆黒シャドウ』でも描かれていますね。

シャドウが誕生したのは真の目的があったけど、そちらは後述。

あのロボットはなんだったの?


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アークを破壊したこのロボットは、2003年の『ソニックバトル』に登場したエメルです。ジェラルドがカオスエメラルド研究の際に発見した、4000年前の古代兵器です。
- 【カオスエメラルド】ソニックシリーズに登場する宝石。膨大なエネルギーを秘め、シャドウはカオスエメラルドを使って時空間を操る「カオスコントロール」が使える。
「懸念していた事態が起きたようだ。ギゾイド(エメル)が、度重なるキャプチャーに耐えかね暴走し、『アーク』の大半を破壊したというのだ」
(中略)
「ギゾイドは危険すぎる遺産だ。私はギゾイドのコアを破壊しようと試みたがどうしてもできなかった。未知の力にはばまれ、どうしても破壊できない」
『ソニックバトル』ジェラルドの日記6より一部抜粋
劇中ではエメルとシャドウが壮絶なバトルを繰り広げましたが、シャドウはアドベンチャー2以降で一度記憶喪失になっているため、一応の整合性はとれている感じですね。
ただ、バトルはシャドゲと矛盾点があるものの正史扱いされているから、「よく似た出来事があった」と解釈するのがいいかも。

一瞬出てきたこの映像は?

マリアがシャドウの手を握った瞬間、このような映像がシャドウの脳裏に浮かびます。
これは連邦政府軍(Guardian Units of Nations:G.U.N.、以下GUN)が実験体事故によるアーク閉鎖・口封じで強制粛清される場面です。
この出来事でマリアはGUN兵士に撃たれ、亡くなってしまいます。
亡くなる間際にシャドウを地球行きポッドに乗せて彼は生存するも、GUNに捕まり、50年後にコールドスリープから目覚めて現代へとつながります。

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ゲーム本編では無慈悲に撃たれ、衰弱して命が奪われた描写でしたが、ソニックXではマリアを撃った元兵士の老人が登場し、50年経っても後悔しているシーンが描かれました。
ソニックXでは、マリアを阻止しようとして撃ってしまった事故のように描かれています。

マンガ『漆黒シャドウ』では別の可能性も示唆されていたね……

GUN(グン)? GUN(ガン)?

アドベンチャー系列のソニックを知っている人からすると、

GUN(ガン)? 読みかたはGUN(グン)じゃないの?
そう疑問・違和感をもつと思います。自分も「GUN(ガン)に変わったんだ」となりましたからね。
これはナックルズ族を『エキドゥナ族』に表記統一したのと同じく、実写映画版ソニックと表記を合わせたものだと考えられます。

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ただソニックフロンティアやテイルスチューブでは「GUN(グン)」呼びのため、「ガンでもグンでも、両方正しい」という解釈をしています。
それにかねてより、日本語版は「GUN」を「軍」とかけて呼ぶ感じでしたからね。
日本(にほん)と日本(にっぽん)とか、ライトセーバーとライトサーベルみたいな感じ。

プロフェッサーが椅子に縛られているんだけど?


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ここはマリアが殺されたのを知って精神崩壊したジェラルドが、アークそのものを爆弾にして地上に激突させる人類復讐(=滅亡)計画を話したのち、銃殺刑にされる場面です。
劇中ではシャドウの追憶のひとつとして登場していますね。
ガンダムでいう「コロニー落とし」を計画し、人類を恨みながら処刑されたんだよね。ジェラルドは本当に悲しいキャラクター。

背景の宇宙人のような手は?


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背景に現れた宇宙人のような手はブラックドゥームのものです。
ブラックドゥームは50年周期で地球に訪れる「ブラック彗星」を拠点にした、宇宙戦闘種族ブラックアームズの首領で、彼の細胞からシャドウは誕生したため血縁関係があります。
かつてシャドゲで地球に来訪して主要都市に破壊の限りを尽くし、地球侵略して人類を含めた全生命を家畜化しようとしましたが、シャドウに阻止されて倒されました。
ゲーム本編ではタイムイーターの影響で復活し、再びシャドウと対峙することになります。
シャドウが誕生した本当の理由は、「ブラックアームズを倒す希望の光であり最後の賭け」だった。

究極生命体・難病治療研究とはいえ、ジェラルドはブラックドゥームとの接触に悔いていました。

月が半壊しているのはなんで?


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月が半分だけ破壊されているのは、かつてエッグマンがアドベンチャー2において、世界へ脅迫するためにアークのエクリプスキャノンを使い、みせしめとして月を破壊したからです。
ただアドベンチャー2以降は、月破壊された形跡がなく丸い月のままになっています。
アドベンチャー2以降も月が丸い理由

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これには裏設定があり、飯塚プロデューサーによると半壊した月の部分は現在裏面になっていて、地上から見ると丸いままになっていることをファンイベントで明かしています。
アニメ版ではこの裏設定が生かされているかは微妙ですが、「月を破壊している=アドベンチャー2とつながっている」という表現かもしれません。
ちなみに月の裏にはフロンティアのラスボスがいたらしく、とんだ迷惑行為だよね。

ソニックXではアドベンチャー2編のあと、「お詫びのしるし」と称してエッグマンがたった10分で機械化して修復している補完シーンがあります。

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これにはエッグマンの裏の企みがあったものの、また別のお話。

第2話「道を探して」

オッドアイの少年(エイブラハム・タワー)は誰?

オレンジと緑のオッドアイが特徴的な少年「エイブ(エイブラハム・タワー)」は、マリアと同じくアークで生活し、兄弟がいない彼は姉のようにマリアを慕っていました。

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しかしシャドウ誕生の経緯(ブラックドゥームとジェラルドの取引)を偶然目にしたことで、シャドウを「狂気の科学者が創った悪魔のバケモノ」と思っていたんですね。
「あのバケモノを近寄らせるな!」と言ったのはそういうこと。

シャドウとエイブラハムの確執

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50年後の彼は第3話にも登場したGUN司令官で、ルージュの間接的な上司にあたります。
シャドゲの段階ではシャドウを「家族とマリアを殺した悪魔」と恨んで復讐心にかられ、スキあらばこの手で抹殺しようとしたほどでした。

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しかしブラックアームズの地球侵略事件をきっかけに真実を知ったことでシャドウと和解し、これが第3話の行動につながっていきます。
ピラミッドみたいな場所はゲームでもあるの?

ピラミッドのような建築物はアドベンチャー2に登場した『ヒドゥンベース』という場所です。文字どおりエッグマンの秘密基地ですが、今回のアニメでは補給基地のようでした。

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ちなみにサムライの格好をしたエッグポーン(ロボット)は、カラーズのアクアリウムパークに登場しています。
これ以外にも、闇の序章ではアドベンチャー2、シャドゲに登場した兵器が数多く登場しています。

シャドウの仲間について知りたい

シャドウはルージュ、オメガの3人で「チームダーク」として信頼関係を結んでいて、当初(ソニックヒーローズ序盤)こそ険悪な仲でしたが、次第にチームとして結束していきます。
ルージュについて

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ルージュはアドベンチャー2で初登場し、表向きは宝石専門のトレジャーハンターながら、連邦政府直属のエージェントという裏の顔をもっています。
宝石以外ではお金にも興味があるようで、『ソニック殺人事件』では車掌のポケットからお札を気づかれないようにスったりしていました。

オメガについて

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オメガはシャドウをサポートするためにエッグマンが造ったロボットだったものの、稼働されず封印されていたことを恨み、主人のエッグマンとは敵対関係にあります。

アドベンチャーを知る人だとE-102ガンマと似た印象を受けますが、オメガはE-123の機体であるため、ガンマたちE-100シリーズの末っ子です。
ガンマと似せたデザインはそれだけエッグマンがガンマを高く評価していたことの表れで、実際にアドベンチャー2やバトルでは、ガンマに似たロボットが量産されました。
ソニックの誕生日?

ルージュはシャドウとの取引で、シャトルの場所を教えるかわりにソニックの誕生日パーティ参加を条件につけていました。
ソニックジェネレーションズはソニックの誕生日を祝うストーリーであるため、ここにリンクする形になるんですね。

シャドウはシャドウジェネレーションズの出来事に巻き込まれたため、序盤の誕生日パーティに彼はいなかったんですね。

第3話「アークへ」

シャトルで流れた曲の歌詞は?

シャドウがシャトルに乗っているシーンで流れた『Without You(キミ無しでは)』は、シャドウがマリアに思いをはせつつも後悔し、今は独りであることを表した歌詞です。
「僕の声は聞こえるか。『なぜその選択をしたのか』と響いてくる」
「キミの記憶がくもって暗いものになっていく。そこにキミを感じない」
「終わらない悪夢だから、また逢えるフリをする。僕が失敗したすべてからキミを救えるだろう」
「僕がキミにした過ちを許すことができない。なぜなら永遠にいなくなってしまったから」
「覚えているよ、キミがどれだけ輝いていたか」
「僕は独りのままだ」
Without Youの歌詞より(意訳・要約)
シャドゲで使われた『Never Turn Back(後戻りはしない)』とは対照的で後ろ向きな歌詞ですね。
Never Turn Backは「過去は振り返らない。これからは前へ進んでいく」という曲でした。

シャドゲで過去を吹っ切ったのに、マリアのことで後悔して忘れられないのは、ある意味あの真ED曲は「自分に言い聞かせ、無理やり前を見て忘れようとしていた」ようにも感じます。
Never Turn Backがネガティブに見えるとは思わなかった……

最後に:シャドウを秀逸にまとめた短編アニメ

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長くなりましたが、アニメに登場した過去作ネタをソニック初心者向けにまとめました。
相変わらずと言いますか、過去作ネタを細かく拾うイアン・フリン氏が関わっているからこその脚本ですし、シャドウというキャラクターがたった15分の映像で完璧に表現されていますね。

個人的に一番テンション上がったのはGUN司令官の登場で、本名が「エイブラハム・タワー」と公式に明かされたのも驚きでした。
しっかりシャドウと和解していることがわかるセリフがあったのも感慨深いです。
GUN司令官の本名が出ていたのはアーチーコミック版だけだったらしいからね。

マリアとシャドウの関係性、チームダークとの絆も再確認できますし、3Dではあるものの非常によくできた、秀逸(しゅういつ)なアニメですね。
エヴァとフリクリに影響
アニメスタッフによれば、この作品は『エヴァンゲリオン』と『フリクリ』にインスパイアされたとアニメエキスポ2024で発言しています。
言われてみれば、シャドウやオメガの戦闘シーン構図だったり、空中ディスプレイの表現がガイナックス作品っぽいかもしれませんね。
フリクリは海外だとAKIRAに引けをとらないほど、外国人クリエイターに人気な日本作品です。

ソニックフロンティアもエヴァ色が強い作品だった。

余談:シャドウはロボット(アンドロイド)という誤解
あとシャドウで言えば、アドベンチャー2のラストで生死不明になり、ヒーローズでシャドウ・アンドロイドが量産されたことから、今のシャドウをロボットだと思う人がいるようで……
しかしそれは間違いで、シャドゲのラスボス戦である条件を満たすと、「ちゃんと生身であり、ジェラルドが創った正真正銘、本物の究極生命体」とエッグマンから明かされます。
いまだに勘違いしている人がいますので、こちらでも念押しで伝えておきます。
