『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』を観に行きましたので、そのレビューになります。
核心的ネタバレは極力避けつつあらかじめ断っておくと、リメイク(作り直し)というよりリブート(仕切り直し)に近い作品です。
「ホウオウに出会う約束の後が完全オリジナルストーリーで描かれる」と謳(うた)われましたが、展開的に無印(カントー)編には全くつながらない上に話の展開もほとんど違います。
シゲルの登場は1カットの後ろ姿のみで、カスミは釣りどころか存在すら語られない。1話のリメイクや後日談目的なら間違いなくガッカリするでしょう。
言うなれば、『キミにきめた!』はタケシやカスミに出会わなかった、もしくは仲間にならなかったパラレルワールド世界です。
ネタバレ注意
作品の内容・結末が記述されています
無印版と映画版との相違点
TVシリーズと
違うところ
無印(TVシリーズ)編と映画版は以下の部分が異なります。
設定や時代背景を反映
サトシの部屋のテレビがブラウン菅から液晶テレビに変わり、机にはノートパソコンが置かれているなど、現代の小物を反映させられています。
別地方のトレーナーやポケモン、きのみや特性が存在するなどのシステムも登場し、アニメXY編で登場した、「電気ポケモンは気配を電気で感じる」も使われているようです。
当時日本語だった表記がすべてアニポケ世界の文字に置き換わっているのもそうですが、ハナコさんの厳しい母親としてのトゲがある口調が低減されているのも、時代のせいでしょうか?
バッジ3コ手に入れるまでは…
エリカを倒して3コ目のバッジを手に入れるまで、サトシは一人(と一匹)で旅をしていることから、今作でのタケシやカスミは、ただのジムリーダー扱いなのでしょう。
しかしバッジを披露するシーンがなく、アニポケは8つ以上のジムがありますから、ニビジムやハナダジムとは違うジムに行ったのかもしれません。
つまり自転車を壊していないし、女装もしていないということになります。
タケシとカスミが登場しなかった理由
出さなかった理由は湯山監督のインタビューで明かされていますので、記事から一部抜粋です。
湯山:実は20周年ということで、(以前テレビアニメで活躍していた)タケシやカスミが登場するというアイデアもありました。ただ劇場版で登場させると、初めて観る人に彼らの説明が必要になる。
ですが、この劇場版でタケシやカスミと初めて出会うとなれば、テレビシリーズとは違う出会いになり、皆さんが知っているタケシとカスミではなくなってしまう…………。そして劇場版の上映時間の関係もある。
いろいろなことを考えた中で、この作品を成立させるのはやはりサトシとピカチュウの出会いではないかと。なのでテレビアニメ第1話で描かれた最初の「出会い」のところから、新しい作品を作ろうと思いました。
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『ジョジョの奇妙な冒険(第一部:ファントムブラッド)』のアニメ映画でスピードワゴンを出せなかったのとほとんど同じ理由で、やはり尺の都合だったんですね。
ロケット団の目的
そもそもロケット団は終始サトシと遭遇していませんので、初対面のシーンもなく、ピカチュウを狙いません。ことあるごとに飛ばされるから、アーボやドガースの出番は一切なし。
しかしエンディングではサトシやピカチュウをつけ狙っていますので、ちょっと矛盾します。
ホウオウと戦えるトレーナーとして追っているのかもしれませんが、ピカチュウをサカキに献上するためかというと微妙で、アニポケ本編の行動原理にもつながりそうにありません。
サトシとピカチュウの信頼関係とアイアンテール
無印編ではオニスズメの襲撃があっても、ピカチュウがサトシになつき、最高の相棒になるのはかなり後です。サトシの言うことを聞かなかったり、カスミに寄ったりしています。
しかし今作では尺の都合で、オニスズメの一件で完全に仲良くなります。途中サトシがピカチュウに失言して仲違いしかけたとき、それでもピカチュウはサトシを信じるほどでした。
逆にサトシの年相応な精神的未熟さは、初期の無印編を彷彿(ほうふつ)とさせますね。最近のサトシは精神的に人格者なので、逆に新鮮です。
中盤ではアイアンテールも使えるようになります。これも現代のゲームシステムを反映した結果でしょう。ビジュアル面ではベストウイッシュのエフェクトに近いです。
ヒトカゲの出会いとリザードンに至るまで
話の流れは一緒ですが捨てたトレーナーが違うほか、リザードからリザードンになっても、サトシの指示に従順で指示をしっかり聞いています。炎を吐いて反抗したり愛情表現もしません。
今作のサトシは図鑑を使わなくてもポケモンや技に詳しく、バトルの腕も別段悪くないですからね。オーキド博士から図鑑をもらうシーンがないので、所持していないのかもしれませんが……
捨てたのは今作オリジナルの「クロス」という人物。弱いポケモンは捨てる育成持論や捨てたポケモンが拾われて進化し、再度対面する部分は、DP編のシンジに近いです。
『キミにきめた!』は古参ファンに向かない作品か?
TVシリーズと
違うところ
重ねるように、今作は無印と比較すると展開・設定は別物のパラレルワールドです。かといって古参ファンに向かないガッカリ作品なのかと言われればそうでもありません。
というのも上述したアニメ版セルフオマージュもそうですが、マニアの域でしかわからないようなレベルの要素や、懐かしい要素もあるんですね。
- 【TOHOシネマズ限定】上映前のロゴアニメーション
- 劇中BGM
- バイバイバタフリー
- ピカチュウのボツ案
- 故首藤剛志氏のポケモン最終回プロット案
以下から少し詳しく解説します。
【TOHOシネマズ限定】上映前のロゴアニメーション
TOHOシネマズのロゴアニメーション映像のピカチュウの動きが、初代ED『ひゃくごじゅういち』と同じです。構図は違いますが古参から見れば「おっ?」となるでしょう。
劇中BGM
劇中のBGMは、無印時代の曲を中心に利用しています。原曲か新録版かはわかりませんが、子供のころにテレビでみたままの感覚が味わえました。
バイバイバタフリー
サトシの中の人も印象に残っている、バタフリーの別れを描いた「バイバイバタフリー」はアレンジされているももの、名場面の部分は抑えられていて、無印版と遜(そん)色はありません。
ピカチュウのボツ案
終盤のネタバレになりますが、サトシに向かってピカチュウが(意思疎通の形で)喋ります。
しかしこれは、「アニメが始まった当初の設定では、ピカチュウは人間の言葉を覚え、喋る予定だった」というボツ案が使われている感じですよね。
中の人の演技があまりにも素晴らしかったので、そのままピカチュウ語になったそうですけど……ロケット団のニャースが喋っているのは、この初期設定の名残りとも言われています。
故首藤剛志氏のポケモン最終回プロット案
中盤のサトシがもし、ポケモンがいない世界で生活していたら……というシーンは、初期無印編の脚本と構想を担当した故首藤剛志氏が描いた、「最終回プロット案」を彷彿とさせますね。
年月を重ねて老人になったサトシは、子供だったころを思い出し、空想の存在であるポケモンとの出会いや経験、さまざまな思い出を懐かしむ。
ポケモンは大人になる過程で見る「夢」であり、いつかはその空想の世界から卒業する……
幻のポケモン最終回プロット案(一部要約)
本当にざっくりで、「ポケモンが人間に戦争を起こした」とか、「自己存在とは何か」という部分はさすがに使われませんでしたが、
- ポケモンは空想の存在である
- サトシがこれまで見ていたポケモンの出会いや冒険は夢だった
……という部分は、つうずるところがあるのではないでしょうか。戦争や自己存在については、『ミュウツーの逆襲』で観ることができますね。
結局ポケモンが想定以上の人気になったことで最終回プロットはボツになりましたけれど、この作品であえて首藤氏の思いを部分的に実現していたとしたら、とても感慨深いといえます。
総評:初期の構想を取り込んだ異色の作品
ある意味では
マニア受けかも
無印編とは展開も設定もほとんど違い、カスミやタケシが仲間にならない世界の作品です。
しかし、かつて初期スタッフや首藤氏が思い描いていた最終回・設定のボツ案や、歴代TV作品のオマージュなど、古参ファンを見捨てているわけでもない、独特なテイストの作品です。
個人的にはトゲがあって子供向けらしくないストーリー展開もあるので、テイストは違えど少しミュウツーの逆襲と重なる部分があるように感じました。
とはいえ、見る人を選ぶ内容なのは確かなので、無印時代に相当思い入れがある人、従来のポケモン映画と同じパラレルだと割り切れない人にはオススメしない映画ですね。
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プロフィール
赤竹ただきちTadakichi Akatake
仕事で「YMYL(医療・健康・お金)記事をほぼ生成AI任せに書く」という、「これありえないだろ……」という他社事案に遭遇し驚きを隠せない。
というのもGoogleは2016年にWelq事件があったから、YMYL記事は独自性・信ぴょう性を厳しくチェックするようになっているんだよね。
それにYMYL記事を生成AI任せに書くとペナルティになる可能性も発表していて、こういった記事では生成AIを使うのはいいにしても、検証・監修で補完することが必須。
これを理解せず「SEOを上げるお手伝いをします!」という業者がやるんだから、いくらなんでもリテラシーが低すぎる。それで検索ペナルティを受けたら損害賠償モノなんだけどなぁ。
イラストレーター・マークアップエンジニア(コーダー)・Webデザイナー・ライターのウサギ好き。多様な絵柄を描け、外国人でも絵でわかるマンガ、ウサギと口内描写にこだわりを持つ。
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「自省・リテラシー・正しい批判の認知・意識向上」をライフワークとし、当サイト記事も「気づき・理解・学ぶ」を全体テーマとして執筆。
当サイトの記事は中学生でも理解できるように計算しながら執筆しており、ネット・SNS上で「わかりやすく参考になる」とご好評の声多数。
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