
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲EVOLUTION』の感想です。
98年に公開されたアニメ映画(以下、オリジナル版)のリメイクなので、ストーリーは変わっていませんから、ネタバレありきで書いていきます。
ネタバレ注意
作品の内容・結末が記述されています
簡単なあらすじとおさらい


『ミュウツーの逆襲』とは
映画のあらすじとおさらいをしておくと、
- ミュウからうまれた「ミュウツー」が、自身の存在意義を自問自答する。
- 人間のエゴ・ごう慢さから、利用しようとする者達への逆襲(復讐ではない)の物語。
- 故首藤剛志氏による「クローン」「いきものとは何か」を問う哲学的テーマ。
- 主題歌が小林幸子氏(オリジナルも今作もボイジャー役として劇中に出演)。
簡単に書けばこのような感じでしょうか?
自分も子供のころ、映画の後も地上波放映やビデオで何度も観返したほどの思い出深い映画です。ただ観返したとはいえ、大人になった今は細かいところまでは正直覚えていません。
しかし今思い返せば、後半のミュウとミュウツーの技を受けたら石化して、涙で復活するなんて展開は現代だと、時代遅れなご都合主義と言われかねないでしょう。
しかしそこも含めて本作の魅力であり、たとえコピーだろうが「いきもの」だから、同じように悲しんだり泣くこともでき、「命があるんだ」というシーンでもあるんですね。
オリジナル版との違い


時代の流れを感じる
ストーリーはほぼ同じですが、時代に合わせた変更がなされています。
一番印象的なのが、ボイジャーの「波止場のカモメに聞いてみな」が「波止場のキャモメに聞いてみな」と、キャモメの存在が触れられていたこと。
キャモメはゲームボーイアドバンスの『ルビー・サファイア』から登場したポケモンなので、オリジナル版公開当時はいなかったですからね。
また嵐の中でミュウツーの居城(ポケモン城)まで行く際、途中まで変装したロケット団が送迎するなど、劇場2作目の『ルギア爆誕』にもつうずるカットが追加されていましたね。
- 完全にオリジナルBGMを流用をせず、昨今のアニメポケモンで使用されている楽曲も使用。
- 液晶ブラウン管モニターからエアディスプレイやホログラム表現に変更。
- ミュウツーやボイジャーなど主要人物や一部を除いて新規配役。
- フシギバナツーが、当時なかったリーフストームを使う。
- サトシが石化するシーンで、石ではなくブロンズのような光沢感ある表現に変更。
ゆえに本作は『キミにきめた』と同じく、「まだ151匹+αしかいなかった世界ではない」ということになります。
3DCGだからこそできる表現


表現力の追加
昔、ディズニーの制作スタッフインタビューで、「もう手描きの2Dアニメーションはやらないのか」に対し、「細かいディティールは3Dだからできるんだ」という話がありました。
今作でもサトシたちの現代に即した衣服の細かいディティールやポケモンの毛並み、ポケモン城のギミック、アーマードミュウツーのデザインを見て、まさにそうだなと納得しますね。
ロケット団本部のシーンなんて3Dじゃないと表現できないですし、あの団員数ははもうギャングではなく企業国家レベルです。
今作は「劇場公開版」準拠


アイツーは未登場
劇場公開版を元にリメイクされているので、完全版で描写されていたアイツーや、幼い姿のミュウツーは登場しませんでした。
また当時は映画連動でやっていた、ミュウツーの外装姿(アーマードミュウツー)、最強のポケモンを制御しようとしたサカキがミュウツーを利用するシーンがつけ加えられています。
あのころはポケモンショックの影響でアニメが長期間休止してしまい、このアニメと映画の連動が上手くいきませんでしたからね。
ストーリーを担当した故・首藤氏も悔やんだであろうこの要素や、「首藤氏はこれをやりたかったんだろうな」という想いを、20年以上の時を経て実現したのは感慨深いものがありますね。
また本作のラストカットで続編スピンオフにあたる『我ハココニ在リ』につながるシーンをつなげていたのも、長年のファンからすれば嬉しいところでしょう。
アーマードミュウツーも、ただビジュアルを現代向けにしただけではなく、物理的に拘束できるように変形するギミックがあったのは、合理的でいい改変です。
気になった部分


ここはオリジナル版が好き
進化した美しい映像表現が魅力の本作ですが、一方で「オリジナル版のほうがよかったのでは?」と思う部分もありましたので、こちらも箇条書きします。
- ムサシの声質が真面目気味で、「だーれだ?」→「ピカチュウ♪」が「ピカチュウ?!」に。
- 石化したサトシとピカチュウを見て、涙を流すポケモンたちのシーンが無音。
- 終盤の「みんな、どこへいくの?」と呼びかけるサトシのカット。
思い出補正もあるでしょうから一概には言えませんけれど、個人的にこの部分は昔のバージョンが好きでしたね。
総評:リメイクでも『ミュウツーの逆襲』は傑作


子どもに観せたい
アニメ映画の代表
オリジナル版を一字一句すべてのシーンを覚えているほどの人だと、変更箇所は気になるかもしれません。しかし個人的には懐かしく、童心な気持ちになって観られた映画でした。
映像表現の進化や、当時の声優陣の再演、『ミュウツーの逆襲』という映画のストーリーの哲学的な魅力の再確認した映画です。
レイモンド氏が海賊トレーナーを再演してくれたのも嬉しいサプライズですよね。
なおパンフレットには、当時と同じく古代ヒエログリル風ミュウのポケモンカードが復刻されて封入されているので、リアルタイム世代の人こそ、ぜひパンフレットも買ってみてください。
大人になってから観ると印象が変わってより深く考えさせられるからこそ、不屈の名作と言われる所以(ゆえん)ですね。