
インターネットは2000年から利用し、最初のころはダイヤルアップ接続でつなぎ、掲示板(2chではなくゲーム関係掲示板)に書き込むようになったころにはADSLを使っていましたね。
この1990年代から2000年代半ばのインターネット期を、『WEB1.0』時代とよぶそうです。
そのころを知っている人たちは、

2000年代のネットはよかったし、昔のネットは楽しかった。

あのころのネットは秩序があった。今は無法地帯だしリテラシーの低い層が増えた。
このように言われることが少なくなく、これは本当なのか、ただの懐古的発言なのかを、実体験と考察を交えながら述べていきます。
Web 1.0| IT用語辞典バイナリ
個人の見解です
ほかの意見もご参照ください
2000年代のネットはよかった?

(WayBack Machineによる抽出)
この「よかった」って、かなり語弊のある表現だと思うんですね。
この言葉だけを見てしまうと、

いやいや、頭のおかしい奴は当時からいたし、昔のネット(2ch)も殺伐としてたぞ。
と、「昔のネットは優しい人が多くて礼儀正しかった」という解釈をされてしまいます。
2000年代のネットは優しい人、マナーを理解していて礼儀正しい人が多くて平和だったかと言えば、自分はそうは思いません。
昔にも荒らしや住所・実名さらし、報復行為はあったし、『スマイリーキクチ中傷事件』のように陰湿な誹謗(ひぼう)中傷はありましたからね。
自分もチャットで初対面の人に「お前なんてこの世に必要ないんだよ!」と、吐き逃げされたことがあったね。

ただこれは、悪質ななりすましがその人に危害を加えたのが原因のようでした。

隔離という概念があった
とはいえ、昔は今と比較して「隔離」ができていて、そのような書き込みをする場所は文字どおりの「アンダーグラウンド」でした。
今はまとめサイトやSNSで拡散されるのに対し、2000年代は健全なネット空間と、陰湿なネット空間が明確に分断されていたように思います。
あくまで、当時見ていた限りの話だよ。

陰湿な空間にいた人は、自身もそれを自覚している人も多かったもので、

この雰囲気とノリはここ限定にすべき。迷惑になるから外へ持ち出してはいけない。
という意識があった時代です。
常識に欠き、安易に拡散する人なんて少数派の中の少数派だけでしたし、「嫌だったら見ない」を貫いていれば、精神衛生上よろしくない書き込みや炎上案件はほとんど見かけないものでしたね。
CHECK!
2000年代はちゃんと各人が住み分けし、分別をする意識があった。そういった意味では平和でよかったと、個人的にそう思います。
昔のネットは秩序があったか?

次の「秩序があったか」は、あったとは言い切れないものの一定のルール・暗黙の了解のようなものは存在したんですよね。
よく言われていたのは、
- 【半年ROMれ】「書き込むなら、雰囲気やルールを理解した上で書く」の意。
- 【ネチケット】「誹謗中傷はしない」「荒らしは無視」といった、礼節やマナー。
- 【ソースは?】「根拠になる一次情報を出してくれ」の意。
誰が言い出したのかはわかりかねますが、少なくとも書き込む人は基本常識のように扱っていて、デマなどの書き込みに踊らされる人も(今の時代と比較すると)そこまでいませんでした。
むしろ、「それ、本当だという証拠は?」と疑う人のほうが多かったのではないでしょうか。
CHECK!
2000年代当時は、ネット利用者数が少なく、礼節やルールを守ろうとする意識は一定数あり、守ろうとする人も多かった。個人のホームページを持つ人は「ネチケットを守って」といった文言を、トップページや掲示板の入り口に書くのが当たり前でしたね。
毒吐きネットマナーのURLリンクを貼ったりね。あのサイトはいろいろきな臭かったそうだけど。

昔のネットは楽しかったか?

© 2005- 有限会社チビコン
昔はある意味、今以上の無法地帯で、フラッシュ(簡単なミニアニメーション)では過激なパロディや、有名人の切り抜き画像で遊んだりなどの問題のある内容が多かったものです。
いわゆるMAD動画やコラ画像の前身ですよね。
YouTubeやニコニコ動画が登場してからは、フラッシュは衰退しましたね……

「グレーの内容を楽しむ」という意味だと、当時のネットは規制が特になく自由だったとも言えますし、法に触れそうなこと以外であっても、
- 【キリ番】アクセスカウンターがキリのいい数字(1111など)であること。
- 【踏み逃げ】キリ番を踏んだのに管理者へ報告しない行為。
- 【カキコ】「書き込む」こと。掲示板に最初に書き込むのは『初カキコ』とよぶ。
- 【チャット】当時はSNSがなく、リアルタイムのやりとりはチャットが中心。
- 【お絵描きチャット】チャットのお絵描き版。2000年代が全盛期。
- 【同盟】今のSNSコミュニティに近い。参加者はサイトに同盟バナーを載せる。
こういった謎の文化や2000年代独自のツールがありました。
なんで熱中し、意味のわからないこともしていたんだろう?

今だとそう思うものも多いとはいえ、これはこれで独特の魅力があり、面白かったんですよね。
ADSL回線だったこともあってチャットを朝までやったり、お絵描きチャットはパソコンのスペックがある程度高くないと、線すらまともに引けないこともしばしばでした。
不便だったからこその楽しさ
CHECK!
昔のネットは楽しかったかどうかは懐古的解釈も入るため、「人による」が大きい。黎明(れいめい)期だからこそのグレーな部分、不便さも含めて楽しいと思う人もいれば、今のネット(SNS)のほうが楽しい人もいるでしょう。
自分の場合、あの「発展途上の不便さ」やネットの知り合いのホームページを巡って交流するのも含め、あれはあれで楽しかったですね。
2000年代中期まではホームページ作成ブームで、様々なサイト・検索エンジン・同盟も数多くあり、SNSのようなリアルタイムなやりとりは難しいながら、独自のコミュニティがありました。
SNSが台頭してからは時代の役目を終え、Yahoo!ジオシティーズや楽天インフォシークなどの大手はレンタルサーバー事業を終了し、掲示板やチャットサービスも次第になくなりましたね。
今はほとんどの個人サイトが見られない状態になっているのは、時代の流れと同時にもの悲しく感じ、まるでシャッター商店街のようです。
今と比べたら、昔のほうがずっと他者と交流をやっていて、一種の生きがいだった。

ネットが今のようになった理由

(Webサイトは前身を含めて2006年から運営)
「昔のネット」が今のネットになってしまったきっかけ考える限りだと、
- 【スマホの存在】スマホによってネットに利用者が激増し、書き込みも増えた。
- 【SNSの普及】SNSの登場でさらに利用者が倍増。炎上も目につきやすくなる。
- 【まとめサイトの台頭】まとめサイトにより、隔離された内容がネット全体に拡散。
- 【ニコニコ動画の登場】ニコニコ動画でもまとめサイトと同様に負の部分を広める。
- 【ネットニュース】ネットニュースでもネットの問題を取り上げるようになる。
- 【ネット広告】利用者が爆発的に増えたため、収益優先の過激な広告も増えた。
別にスマホやSNSなどが諸悪の根源だという話をするつもりはないものの、
CHECK!
昔と比べてネット利用が気軽にできる環境が用意され、リテラシーが低い利用者・業者も爆発的に増えてしまった。このあたりは実感としてあるんですよね。
昔のネットは「限られた人しか利用できない空間」で、「現実とは異なる世界」という感じでした。しかし今では「誰でも利用できる空間」であり、「現実に直結する空間」です。

最後に:なぜそう言われるのかを考える

© 2000- GAMEHA
ここまで、2000年代のネットはよかったのか、楽しかったのかを2000年から利用している人間の体験談を述べました。
お絵かきチャットやホームページ巡り、キリ番や同盟など、今と比べれば黎明期特有の不便さや謎ルールはあったものの、あれはあれで楽しんでいたのは確かにあるんですね。
ただ「昔のネットはよかった」って言葉は一見見ただけだと、

年寄りが昔懐かしんで「昔はよかった」って言うのと同じでしょ?
このように見えてしまいがちです。しかし見方を変えると、
CHECK!
今は不健全な内容も検索上位、不愉快なネット広告、リテラシーの低い人たちはデマを拡散、口喧嘩や誹謗中傷、炎上を娯楽にするさまが多くうんざりしている。このように見ることもでき、当事者である自分からしても、
- 【ネチケット】礼儀・節度を守ろうと協力して呼びかけ、荒らしにも厳しかった。
- 【リテラシー】情報にデマかどうかを疑う意識もそれなりにあった。
- 【ネット広告】テキストだけのシンプルな広告がほとんどだった。
- 【分断】健全・陰湿なネット空間はお互いに隔離され、目につくことはほぼなかった。
この部分は今とは別物ですし、昔だったら「嫌なら見ない」ができたのに、現代では「嫌でも目に入ってしまう」状況なんですよね。
昔は隔離されていたのに、今じゃ混ぜられてしまった。

現代ネットの転換点
なぜそうなったかを考えると、
- 【壁の崩壊】無自覚な拡散・転載により、隔離の意味をなさなくなった。
- 【あおりの問題】ネットスラングが多様化し、あおり言葉・記号が増えた。
- 【絶対数の増加】利用者数が増加し、リテラシーの低い人が増加・可視化。
- 【ビジネス化】負の面をビジネスにする人・業者が増えてしまった。
こう考察することができます。
ただのネット老人のたわごとだと切り捨てる前に、なぜそう語る人がいるのかを考えてみてもいいかもしれませんね。

