
気にする人は気にする、マンガのセリフで使われる句読点(、。)や三点リーダー(…)などですが、個人でマンガを描いている人からすると表現に悩む場合もあると思います。
さまざまな雑誌からこれらの使いかたをまとめてみましたので、絵描き(描き手)の人は参考にしていただければ幸いです。
また、ネット・SNSで出回るマンガのセリフ表記(公正や漢字の使いかたなど)についても思うところがありますので、後半ではこちらもあわせて述べていきます。
ただ、この記事を見ると純粋にマンガを楽しめなくなる可能性があるので、あしからず。

個人の見解です
ほかの意見もご参照ください
パターン1:正しい文法で使う

「句読点はセリフ内にしっかり記入し、三点リーダーも偶数個で使う」という、物書きと同じ文法表現を用いる形です。
『小学館』のマンガだと、三点リーダーに関しては単数使用はあっても、句読点はしっかり記載するガイドラインがあるそうです。
これは「正しい文章の読みかたを覚えてもらうため」という意図があるからと言われています。

パターン2:句点は省略し三点リーダーは雰囲気次第

「フキダシ自体がカッコの役割があるので、その文法にならい句点(。)は省略する」パターン。
三点リーダーはセリフの間や余韻(よいん)によって単数にも偶数にもなる形です。
ちなみにブログ記事の見出しでも、同じ理由(字数省略も含まれますが)からこの方式を採用する人は多いですね。
記事やマンガでも、自分はこのパターンを採用しているよ。

パターン3:句読点は使わない

「読点がついているのに、句点がないのはスッキリしないから両方つけない」タイプ。単語ごとに改行したり、全角スペースを用いることで、句読点を使わない工夫がされているようです。
少女マンガの出版社や『週刊少年ジャンプ』は、このパターンを採用する場合が多いとのことで、三点リーダーの使いかたもまちまちみたいですね。
人によってはこちらのほうが一番なじみあるかもしれません。

パターン4:二点リーダーを使う

句読点ではない点の表現は三点リーダー(…)ではなく二点リーダー(‥)を使うケース。
「三点リーダーだと余韻が多く、かといって単数は文法的によろしくない」の選択でしょうか?
秋田書店の『刃牙(少年チャンピオン)』や、講談社の『カイジ(ヤングマガジン)』はこの二点リーダーを採用しています。
同じ秋田書店・講談社系列でも『弱虫ペダル(少年チャンピオン)』や『進撃の巨人(少年マガジン)』は三点リーダーを用いています。

おそらく編集担当や掲載雑誌次第かもしれないね。

ルールがあるなら基本的に間違いではない


フキダシの役割を
考える
ここまで、出版物や実例からフキダシ内の句読点や三点リーダーの使いかたを述べました。
表記ルールに従っている、もしくは自分なりのマイルールがあるのであれば、基本的に間違いと呼べるものはなく、文章執筆よりも基準はゆるいのではないかと思います。
マンガやセリフ付きイラストを描くと、このあたりはどうしても悩ましく思う部分ではありますが、
CHECK!
大切なのは見る人に負担がなく、セリフに違和感を感じさせないかどうか。句読点の有無やリーダーのつかいかたにこだわりすぎて、目をくもらせないように注意しましょう。
セリフ表記で気をつけること


どのような意図で
使っているか
「見る人のことを考える」の補足で、ここからはセリフの書きかたや表現について述べていきます。
まずセリフの表記、特に漢字についてですが、
- 「ということは」
→ 「という事は」 - 「といったところ」
→ 「といった所」
これらの漢字表現はマンガ内でよく使われますが、正確な文法だと好ましくない記載です。「事」は出来事、「所」は場所を表すのに使うため、モノや事柄に関して漢字を使うんですね。
とはいえマンガのセリフの字数省略といった意図した理由があるなら、「日本語表記を誤って使っている」とは言いがたいでしょう。
これは「マンガは絵がメインであり主役。セリフなどの文章は絵の補足だから」とも言えます。
かくいう自分も割と文法ミスをしでかしたり、いまだ完全網羅はしていないから他人のことは言えない……

漢字とひらがなを使い分ける|プロフェッショナルライティングガイド|wordrabbit
趣味・同人の写植で注意したいポイント


漢字を使いたがるのは
趣味・同人あるある
以下のケースは間違い・不適切な表現になるため、校正という意味でも直したほうがいいです。
- 【書きミス問題】誤字脱字などをしている。
- 【漢字選定問題】漢字を多用する(意図的な場合は除く)。
- 【改行・形式問題】文章の改行や書式がおかしい・中途半端。
- 【表記問題】差別表現を使用している(意図的な場合は除く)。
特に「漢字選定問題」「改行問題」は趣味・同人だとよく見られ、
- 「青褪める」
→「青ざめる」 - 「此処まで」
→「ここまで」 - 「頓珍漢」
→「トンチンカン」 - 「貴方の所為」
→「あなたのせい」
- 【NG改行】
なんでキミはこん
なところに来たの? - 【OK改行】
なんでキミは
こんなところに
来たの?
あえて難解にする、世界観の表現などの意図的演出ならともかく、なんでもかんでも漢字を使えばいいというわけではありません。
キリのいい部分で改行しないのは読者に解読作業させる手間を与えてしまい、読みにくい上に没入感が削がれます。禁則処理(文頭に「っ」や句読点が来るなど)の無視はもってのほかです。
中にはセリフの長音記号(ー)を縦文字にしない、促音(っ、ッ など)の位置ズレなどがある趣味マンガもあり、なぜそれに違和感を持たないのか、不思議にしか思えないケースもあります。
こういうセリフ選びをする人って、見る人の気持ちを考えているのかなって思う。

作品のターゲット層を意識して選定するのは、趣味でも通用する考えかたです。気配り上手になりたいですね。

しっかりした校正の重要性
「絵は上手いのにセリフの見せかたが下手」って本当にもったいないもので、
- 日本語の表記方法は適切か
- このセリフの内容は読みやすいか
- 流し読みをしてひっかかりがないか
- 禁則処理や書式を無視していないか
そこは読者側の気持ちを考え、自分が読者の気分で読み直したほうがいいですね。
ライティングの世界では、「中学生までが読める漢字に留める」という話があります。

実際に少年マンガなどでは、漢字を多用するケースはほとんどないよね?

言わずもがな、誤字脱字は作品の完成度を一気に下げますので、そこも含めて校正作業はおこないましょう。
「なぜ同人作家は校正しないの?」に対し、「個人が校正したら校正の仕事がなくなるでしょ」という書き込みを見かけましたね。

正直言っている意味がわからないし、個人と会社を一緒に考えるのはちょっと……

あまりよくないNG表現

マンガにおける一般的な認識というより、ほとんど個人的な見解に入るのですが、
- ミスや描写不足を注釈で弁解
- マンガの展開を文章で説明
- 感情表現にネットスラング
この3つは、あまり推奨されない表現手法だと考えています。
かといって、自身はマンガ編集者でも実務経験があるわけでもなく、趣味のマンガでこれを受け止めるかは個人の裁量が入ってきます。
マンガは記事執筆と同じで「読み手を考えて描く」だから、描き手の自己満足になりすぎないように気をつける趣旨だよ。

ミスや描写不足を注釈で弁解
たとえば、描き忘れや描写不足のシーンで、
- ← 消える机
- ← いなくなる〇〇
- ← 〇〇なので上着を脱いだ
このような言い訳の注釈は読み手からすれば、逆に注目が集まってしまいます。
黙っていれば誰も気にしないであろうに、「なぜ自分から墓穴を掘るの?」とツッコみたくなる。

マンガの展開を文章で説明
展開を絵ではなく文章で説明するのは、
- 【元からそういう作風】『銀魂』『魁!! クロマティ高校』など、セリフ主体のマンガ。
- 【意図的な表現】思考の混乱や思慮をめぐらせ、理屈っぽさ・威圧感・独り言の表現。
上記のようなコンセプトが明確化されている必要があります。
このような意図がないなら、しっかりと絵で状況説明や展開を描くべきですね。

応援団シリーズは理想の表現
個人的に理想の表現は、ニンテンドーDSの音楽ゲーム『押忍!闘え!応援団』シリーズと、海外版『Elite Beat Agents (エリートビートエージェンツ)』ストーリーマンガパートです。
観ればわかるように、セリフや文章を見なくても絵だけで展開の内容が察せる構成です。
発売当時は海外にも応援団ファンが数多くいて、これも「日本語は読めないけど面白い」となったからです。海外版プレイ動画を見ても絵の雰囲気でわかると思います。
いいマンガというのは、こういうことなんですね。
応援団シリーズは本当にいいマンガのお手本。今でもプレイ動画を見返しているよ。

「文章がないと展開がわからない」というのは持ち込みだと一番ボツにされる要素らしいです。

感情表現にネットスラング
感情表現でネットスラング(淫夢語・なんJ語)を使うのも、人によって好き嫌いが分かれやすいので注意したいところです。
NG:「w」や「草」をつける(一例)
- 「〜ってことだなwww」
- 「おかしくて草」
- 「〜で草不可避」
NG:カッコ文字や定型文に頼る(一例)
- (困惑)
- (棒読み)
- (アカン)
- (震え声)
- (迫真)
- 「やったぜ。」
- 「ファッ!?」
- 「こマ?」
- 「これすこ」
「ネットの流行を上手く取り入れたギャグ表現」とも言えるでしょうが、重ねるようにマンガは絵で感情や状況を説明するものです。
それに淫夢語録やなんJ語はアダルトゲイビデオや5chが元ネタなので、知っていると嫌悪感を抱く人は少なくありませんから、感情表現にネットスラングを使うのはオススメしません。
場合によっては、「教養のない人」だと見られてしまいますからね。
使っている人って、淫夢やなんJネタだと知っているのだろうか?

『書く』ではなく『描く』
文章に頼るのではなく、
- 「海外の人でも絵で理解できる表現」
- 「『書く』ではなく『描く』」
ここを意識して描くほうが、わかりやすさのみならず絵も上手くなります。
人間は文章よりも絵に目が留まります。ギャグをセリフに頼るより、絵で表現されたほうが印象に残り、言葉がわからなくても楽しめます。

補足:セリフ・文章以外のNG部分


「誰が読むのか」を
しっかりと考えよう
これはセリフ・文章の問題ではありませんが、以下も趣味・同人だと本当によく見かけるケースなので要注意です。
- 【力つきている】最後のページの作画がものすごく手抜き。
- 【過度な自己主張】あとがきが長い。
- 【擬音表現】擬音の書き文字をなぐり書き、または文字装飾をしない。
- 【作風無視】唐突に露骨なパロディや劇画を入れてしまう。
- 【メタ発言】「あと○ページしかない」「原作では〜」と登場人物に言わせる。
これを見ると正直、
自己満足の独りよがりで、客観的に見る意識が感じられない。

と思ってしまいますし、力尽きていたり長いあとがきは読後感を損ねてしまうものです。書くヒマがあるなら、なぜマンガの完成度を上げる時間に使わなのかが不思議ですね。
雑に描いた擬音(「ドンッ」や「ボゴッ」など)は素人感が出る要素であり、『神は細部に宿る』という言葉があるように、上手い人は書き文字を「表現」として描きかたをこだわります。
擬音も「書く」ではなく「描く」。なぜわざわざ「描く」の表現を使うのかを、考えてほしいね。

作風無視やメタ発言も、練らず・考えずに安直な発想で使うのはよろしくありません。
お笑いの台本と一緒で、しっかりとコンセプト・設計されているから面白いのであって、安易に頼りすぎるのは世界観を壊します。
「プロットや笑いを作るのが下手」と、自分で言っているのと同じ。

最後に:完成度の高いマンガは整理されて見やすい


絵で表すのが
「マンガ」
世の中、商業マンガはたくさんあるんですから、セリフに使う記号の使いかたから文字の選定まで、分析・研究して自身のマンガに取り込む努力は怠らないようにしましょう。
重ねるように、「仕事でもない趣味のマンガ」なら好きにかつ自由に描くことを否定しませんし、こちらも完璧にマスターしているわけではありません。
とはいえ、文字ではなく絵で説明する努力をすれば、必然的に描写や表現方法のレベルも上がり、結果的に絵は上手くなります。
もちろんそういう作風なら別で、すべてのマンガがそうではありませんが、マンガというより紙芝居だろうと思ってしまいます。
主観で申し訳ないけれど、セリフに頼りすぎるマンガは表情が固くて記号的。動きの描きかた・描き分けもあんまり上手くない。

「誰が読むのか」を考える
本当に「読んでくれるよりよいマンガ」にするのであれば、絵だけではなく構成力や読み手のことを考える想像力が必要です。
有料作品であれば、「自分の作品に相手がお金を払っていただいている」という自覚を持ち、満足していただくように考える商売意識は持ってもらいたいものですね。
同人誌やCG集は資料で買うものの、「絵が上手くても見る側の気持ちに欠く作品」は割とある。

もちろん、無料でも同じ意識はあったほうが、よりよい作品に仕上げる意識が変わります。趣味だろうがプロだろうが「クリエイティブ」です。
自分を含めてマンガを描く人は、こういった気配りと技術みがきを怠らないようにしたいですね。
自分はライティングブックを買って勉強しているよ。仕事で文章を書くのも理由だけどね。

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