以下より、『ポケモンレジェンズ アルセウス』のレビューになります。
すでにネット・SNS上では図鑑完成させた人もいるらしいですが、自分は(某ベクターのような)ポケモンつかいを倒し、クリアするところまでやりました。
基本的に、一周目の祭エンディングまでの内容が含まれていますので、ご注意ください。
ポケモンレジェンズ アルセウス|ゲームフリーク
ネタバレ注意
作品の内容・結末が記述されています
ポケモンで異世界転移
まず驚いたのは、今作の主人公は「現地の人間ではなく、タイムスリップしてきた現代人」である点です。
その展開もいわゆる『小説家になろう』でいう「なろう系(現代人がチートアイテム・能力を付与されて異世界へ飛ぶ)」で、すごく現代的というか、若者文化的です。
とはいえ、過去にも『ポケモン不思議のダンジョン』という、現代人の主人公がポケモンの姿でポケモン世界に登場する作品があるので、今作だけが異質というわけではありません。
個人的には、村上もとか先生のタイムスリップ医療マンガ『JIN-仁-』っぽさも感じました。
原作は見たことないけど、原作者さんには講演会でお話を聞いたことがあるし、ドラマ版は人生で指折りに入るぐらい熱中した日本ドラマかも。
世界観も大正ロマンを感じる雰囲気で、個人的はとても好みですね。今作の主人公はかなり表情豊かなため、感情移入もしやすいです。
謎のイモモチ推し
ヒスイ(シンオウ)地方のモデルが北海道であるせいか、劇中でたびたびイモモチがでてきます。
マカロンやマラサダのように、まるでポケモンのコラボカフェや、ポケモンセンターにイモモチをおみやげにするのかというぐらい、ものすごく推(お)してきます。
別に悪いと言っているのではなくて、ここまでされるとむしろ、イモモチに興味した人も多いのではないでしょうか。
自分も久しぶりに食べたくなった。
キャラクターについて
本作では、『ダイヤモンド・パール』など、過去作に登場した人物の先祖と思わしき人物が登場していて、見た限りだと、性格や性別が反対になっているキャラクターが多いですね。
たとえば、ギンガ団の男性ボス「アカギ」の先祖かもしれない「シマボシ」隊長は女性で、厳しい性格ながらもいい人です。
同じくギンガ団の女性幹部「マーズ」の先祖らしい「ヒナツ」は、善意で動く優しいお姉さんでした。
特にシマボシ隊長はストーリー終盤で、
「いいか 誹謗(ひぼう)も賞賛も所詮は他人の感情」
「重要なのはキミ自身がどうあるべきかを強く持つことだ」
『ポケモンレジェンズ アルセウス』|シマボシ
こんな素晴らしい言葉をかけられて、好感を抱かない人なんていないでしょう。
むしろ、なんでシマボシやヒナツといった善人が、子孫の時代では悪人(アカギ・マーズ)になっている(かもしれない)のかが不思議でならない。
なお、デンボクはナナカマド博士の先祖であることは、公式で明言されています。
『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』の世界とのつながり|ゲームフリーク
「セキ」と「カイ」の由来
本作の新キャラクター・重要人物として、コンゴウ団の「セキ」、シンジュ団の「カイ」というキャラクターが登場し、どちらもすごく好感が持てる人物ですね。
特にセキは終盤の選ばない選択肢を選ぶと男前な言動をするので、ますます好きになります。
でもセキは最初選ぼうとすると少し恩着せがましい。そしてカイちゃんを選ぶと本作のヒロインになってすごくかわいい。
しかし、なぜそのような名前になったのかが疑問でしたが、
- 「金剛石(ダイヤモンド)」
→ コンゴウ「セキ」 - 「真珠貝(パール)」
→ シンジュ「カイ」
この由来を知って、「あーなるほどなぁ」ってなりましたね。
ブレワイ+モンハン+ポケモンGO
ゲームの印象的には、
- 『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(ブレワイ)』
- 『モンスターハンター(モンハン)』
- 『ポケモンGO』
この3つのゲームの要素をそれぞれ合わせたような感じですね。グラフィックの雰囲気は本当に『ブレワイ』に似ていて、開発ノウハウを任天堂から提供されたのでしょうか?
基本的にすぐモンスターボールを投げられるのは、『ポケモンGO』を彷彿(ほうふつ)とさせ、キング・クイーン戦は、『モンハン』のような戦いかたが要求されます。
コマンド指示である従来のポケモンとは全く異なります。
それゆえに、ボタンを使用する種類がかなり多く、はじめは操作が複雑に感じてしまい困惑します。
アクションゲームが苦手な人は、特にキング・クイーン戦を手こずるのではないでしょうか?
ポケモンは「モンスター」
これまでと違い、ポケモンが「主従・共生関係」ではなく、「ポケモンは怖い生き物」という「未知・恐怖の対象」になっている点は珍しいです。
進化シーンも「モンスターの変身」と言ったほうが近いですからね。
任意性は便利だけど、進化キャンセル廃止は少しさびしい。
実際、今回のゲームは主人公を殺すかのような勢いで攻撃してくるポケモンが多く、序盤だと調査で「生きて帰れ」と言われるほどです。
むしろ、今までのポケモン世界の人間が順応しすぎているのでしょう。
毒やまひ攻撃に対して多少の治療や自然治癒で耐えられる、この世界の人間(特に主人公)も大概ではあるけど。
昔からポケモンは、「ポケモンを持たずに草むらに入るのは危ない」と言われていたことを考えると、
オーキド博士たちは正しかったんだ……
そううなずくレベルですね。
しかしこのポケモンの恐怖は、「知らないから怖い」というものです。ここは昨今のパンデミック(感染症)にもつうずるところがあるのかなと思いました。
本作のサブイベントの中でも、
「『未知は怖い 無知はもっと怖い』ってね」
『ポケモンレジェンズ アルセウス』|タミ
このようなセリフがありましたし、人間という生き物は、差別をしたり恐怖する理由のほとんどが「無知だから」ですからね。
人間が一番怖いという部分も一緒……
ポケモンが小さくなるのは初代の裏設定
「すべてのポケモンは小さくなる性質をもっている」は、初代ポケモンの小説などで登場した裏設定です。
タマムシ大学にいるニシノモリ教授は、携帯獣研究の際に被検体のオコリザルに薬物を誤投与してしまう。
そしてオコリザルは生存本能で小さくなって老眼鏡に入りこんだことが、モンスターボール開発につながった(要約)
初代ポケモンの裏設定
ただこれを考えると、
今回の話ってその出来事よりずっと前だよね?
こうなってしまいます。
とはいえ「あくまでもカントーでの話」という解釈や、今のポケモンは3000年前に隕石と最終戦争の有無で歴史分岐したことが、『オメガルビー・アルファサファイア』で語られています。
要は、歴史が変わっているのかもしれませんね。
そうでなくても、20年以上続くシリーズが設定変更するのはよくあることですから、初代からのポケモンファンは大人の対応をしてあげましょう。
ストーリーは少しシリアスで重い
次にストーリーについてですが、子供が遊ぶゲームにしては少し重い印象です。
- ポケモンは恐怖の対象
- ポケモンに襲われるかもしれない
- 明確な死の概念
- 生きるか死ぬかのハードさ
本編でも「考えてみたらえげつない」「悲しい」という展開や図鑑説明はありますが、表現がまだマイルドだったり、あくまでも想像にまかせている部分が多かったものです。
ただ、今回の作品では直接的な言及が多く、ストーリー終盤の展開では、主人公に疑惑がかけられて村八分(追放)にされるのは衝撃的でした。
信じていたほかの人たちにも、散々たらい回しされるのはポケモンだとあまり考えられなかったね。
ただ、ものすごく重いというわけでもなく、初代ポケモンの雰囲気にジャンプマンガを足したような感じですかね。
基本的に悪人はいない
- わかりやすい悪の団体がいる
- 事件に巻き込まれる
- その悪役を倒す
最近のポケモン本編(『サン・ムーン』以降など)では、そうとも言い切れない部分は否めませんけれど、おおむねポケモンシリーズはこのような、勧善懲悪(ちょうあく)の構成になっています。
しかしながら、この作品には原則、「悪人(思想が極端に歪んでいる人)」と言うべき人はいません。
クリア後のイベントシーンで本性をあらわした黒幕はともかく。
デンボクは先ほど述べたように、終盤で主人公をコトブキムラとギンガ団から追放しますが、「自分含め、人々が安心して暮らせる村にしたいことと、長(おさ)の判断だった」からでした。
誤解が解けたあとは、主人公に土下座して謝罪しますからね。
オンライン要素について
今作のオンライン要素は、ポケモンの交換や落とし物を拾う程度で、従来のように対人戦があったり、協力プレイができる要素は収録されていません。
本作はあくまでもポケモン図鑑完成が目的で、個体値・努力値・とくせい・たまご厳選はありません。
やるにしてもミントの性格変更や技厳選、「ガンバリのじゃり」などのアイテムで個体値らしきパラメータを底上げする程度です。
対戦したい人からすれば不評点かもしれませんが、自分はなくてもいいと思いました。
気になった部分
ここからは、本作をやって気になった箇所です。
ポーチ拡張の仕様
ここは一番の不満点で、ポーチの拡張は任意とはいえ、お金で広げていくのは首をかしげます。しかもひとつずつしか増えないし、お金も時間も手間がかかって大変です。
稼いだお金をポーチ拡張へつぎ込むことに熱くなれと?
また、初代ポケモンのような「道具のジャンル分け」ができないのも不便ですね。クラフトする際はしっかりジャンル分けしてくれるのですが……
衣服の新商品がわかりずらい
呉屋では衣服を買うことができて、ランクが上がったりストーリーが進むと種類が増えます。しかし、新商品に「new」のようなアイコンがつきません。
「あれ? 何が増えたの?」と困惑する。
また江戸〜大正チックなデザインは好きなんですが、衣服のバリエーションもテクスチャの貼り替えが多く、衣服の種類が乏しいのは否めません。
対複数バトルが理不尽
複数体が襲ってくる群れバトルがありますが、本作にはダブルバトルやトリプルバトル、範囲攻撃の概念はないため、数の暴力と言わんばかりの理不尽なケースに遭(あ)うことがあります。
主人公側は一体ずつしかポケモンを出せないので、ほとんどいじめ状態です。
対人(NPC)戦ではその救済か、メインではないポケモンのレベルは低く抑えられている処置があるものの、プレイヤー側も複数のポケモンを出して戦いたいですね。
ビッパを探すサブイベント
おそらく、ほとんどのプレイヤーが苦労する初期クエストでしょう。
コトブキムラ内では移動ポケモンは使えませんし、ダッシュも押し続けると疲れてしまいます。ビッパの体色と地面・建物の色が同化していますから、わかりやすくしてほしいところです。
「ポケモンボール」という表記
ポケモンが入ったモンスターボールを「ポケモンボール」と呼称していますけれど、そもそも分ける必要はあったのか……ですね。
劇中でも積極的には使われていない表記ですし、「手持ちのポケモン」と言えば済む話で、海外ではモンスターボールは元から「ポケボール」です。
プロフィールの写真
まだ自分が完全に把握できていないからというのもあるかもしれませんが、プロフィールの写真を変えることができません。
写真屋で撮影できるのは、スイッチのキャプチャーボタンで撮影するものだけです。
オンライン要素は控えめだから公開する必要性はないのかもしれませんが、本編では変えられますし、衣装要素もあるんですから、変えられない仕様の意図がよくわかりません。
洞窟のグラフィックノイズ
洞窟のシーンでは、なぜかキャラクターのグラフィックの境界線に白フチのノイズが出てくるため、やっていてすごく気になりました。ほかのポケモン作品では出たことないですよね。
曲の統一性
昔の日本のような世界観ですから、全編で和風、和風要素を取り入れた楽曲になると思いきや、一部の楽曲は『ダイヤモンド・パール』と変わらない、昔の感じがない楽曲が見受けられます。
曲のアレンジ自体はカッコいいんだけど、現代的すぎる。
ベースやギターを使うにしても、『ソニックカラーズ』のアクアリウムパークのように、和の要素を取り入れた感じのほうがいいのではと思いました。
図鑑完成が難しすぎる
図鑑完成のためには、107個もあるともしびを集めたり、特殊進化するポケモンも集めないといけません。
「すべてのポケモンとであえ」はあくまでもゲットで、研究完成は無視OKなのは救いとはいえ、ともしびの場所や特殊進化するポケモンの条件は、ネットの力を借りないとほぼ無理です。
ともしびならば夜に探すという手段もありますが、せめて探知レーダーやゲーム中で進化のヒントがあればよかったですね。
アンノーン図鑑はちゃんとヒントがあるのに……
クエスト選択・内容の仕様
『スカイリム』だったらサブクエストは複数受けられるものの、今作だと受けられるクエストはメイン・サブあわせて「ひとつだけ」です。マップに目標ピンを挿せるのも1個だけですからね。
また、サブクエストの中には、上述のビッパ探しや「逃げたイーブイを探す」など、ほぼ場当たり、ノーヒントで探し当てる内容もあって、少し不親切だと感じました。
さらに言えば『海の伝説』のように、リメイク版『ダイヤモンド・パール(BDSP)』をプレイしないとわからない内容もあるのは首をかしげます。
海の伝説は図鑑完成に必要ないとはいえ……
総評:アクション性が強いポケモン
かなりアクション性が強く、ポケモンバトルよりも探索・調査が中心のゲームです。
従来のようにポケモンを厳選する楽しみはあるとはいえ、いわゆるガチ勢がやる個体値・努力値・とくせい・たまご厳選の概念はありません。
誰かと対戦して競うゲームでもありませんので、そこは賛否が分かれるでしょうが、「オンラインをあまり気にせず、広いフィールドを駆け回る」ことが好きな人は楽しめます。
じつを言うと、ダイヤモンド・パール本編は当時、
- ロードが長い
- 壮大にしすぎた世界観
- ひみつきちの仕様
- ポケモンなんて子供のゲーム(当時)
上記のように考えていた時期だったため、印象が浅く、楽しめていませんでした。
リメイク版を買わなかったのは、単にゲームをするヒマがあまりなく、本作かどちらかにしようと決めていたから。
でも今回の作品は「ポケモンの世界を一番感じられた」ゲームで、面白いですね。
シリーズ化してもいいぐらいで、ジョウト地方の焼けた塔は気になりますし、イッシュ地方だったら移民開拓時代になっていそうです。
原点のコンセプトに帰った作品
ある意味、ポケモンの原点は「昆虫採集」であるため、本来のコンセプトに原点回帰したゲームとも言えます。
ただ、図鑑完成にはネットの力を借りないと完全クリアが非常に難しい内容で、せめてゲーム中にヒントなり、探知レーダーのようなものが欲しかったですね。
現代と過去の比較
また、
- なぜ発展を目指したギンガ団が、
ステキファッションの悪の組織になったのか。 - 先祖と思わしき人間は善人だったのに、現代では悪人になったのか。
- シンジュ団とコンゴウ団は、のちに解体されたのか、ギンガ団に吸収されたのか。
このあたりは現状プレイしても明かされていませんから、ここの考察も楽しいかもしれません。
コンゴウ団とシンジュ団は時代の流れでギンガ団に吸収され、アカギ本人か、直近の親族世代が組織を私物化して、ギンガ団は未来だと悪の組織になったのかもね。
なお、今作のアルセウスはかなり無慈悲で、いろいろな意味で「神」だと図鑑完成後にわかるそうなので、引き続きプレイしていきます。
最後に余談ですが、「アルセウスフォン」は海外だと「アークフォン(Arc Phone)」だそうです。言いやすさ的にはこっちがいいですね。
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