
© 1991- CELSYS
昨今では利用する人も少なくないAI学習禁止の透かしですが、表面上は保護しているように見えて、本質的に問題点が非常に多い仕組みです。
10年以上転載や自作発言に対応設計してきた経験と、Webマーケティングやサイト制作を長年担当してきた自分が、透かしの根本的問題点や考えかたを述べていきましょう。
なお、それらを含めた無断転載・自作発言禁止の根本的問題点はこちらで述べています。

個人の見解です
ほかの意見もご参照ください
AI学習防止透かしについて

© 1991- CELSYS
AIの学習防止透かしは2020年代前半にAI作品が登場し、その技術に絵描きたちの作品が無断学習されている懸念や不安から登場したものです。
作風や画風自体は著作権に含まれないとされるせいか、一種の自衛策で使われているんですね。
『クリップスタジオ(クリスタ)』を販売するセルシスは事情を踏まえてか、2022年の生成AIパレット問題の反省か、ver.4.0でAI学習保護パターン透かしを生成する機能を搭載しました。
一見するとクリエイターの権利を守っているように見える機能ですが、これは長期的設計の本質を考えれば文字どおり、「ノイズ」になる機能です。
「ずっと効果がある」と思うのは危ない思考


長期的運用設計を
考えているの?
まず対策系において、「いつまでもずっと恒久的に使える」というのはありえません。
- システムOS
- セキュリティソフト
- 利用ガイドライン
- プライバシーポリシー
- 暗号化システム
なぜ定期的にOSアップデートをするのか、なぜガイドラインは変化しているのか、なぜ暗号化システムは更新されているのか……
答えは簡単で、時代の流れのみならず、突破する側も日々進化・変化しているからです。
学習防止透かしの場合、仮に100枚透かしを入れ、半年後・1年後も効果があるか保証できません。
あくまで「現在における効果」であり、もし将来的に効果が薄まったら、その100枚をまた新しい透かしに差し替えて再投稿するのでしょうか?
1枚の再加工で1分かかるなら、100枚で1時間40分、そして再投稿までやったら倍以上の時間はかかります。100枚程度なら時間があればできるでしょうが、蓄積コストは年々膨らみ続けます。
AI学習防止ノイズが恒久的に効くかは「悪魔の証明」に近いです。

なぜセキュリティソフトは「更新」されるのか


作品アップデートは
非現実的
先の話とつながりますが、「このセキュリティソフトを入れたら一生更新は不要で、PCは安全に保護されます」というソフトはあるでしょうか。
そんなソフトは基本的にありません。買い切り型でも何かしらのアップデートはあるものです。
作品はPCと違って取り下げなければ何十年も公開し、透かしの自動更新もありません。その間にもAI技術は進歩するのは容易に想像できます。
それなのに、「現在の透かし」が今後もずっと使えると信じているのは危ないんですね。

仮にAI学習防止透かしを確固にするなら、作品内の透かし情報を例外無く、セルシス側が自動アップデートしてくれる超技術が必要でしょう。
たとえローカルにある画像だろうが、他人が気に入って保存していようが、スクショで残していようが、すべてに適用されるということです。
そんな技術は現代ではありえないし、セキュリティ面でも大問題になるのは予想できますよね。
対策がダメではなく設計が下手


だいたいの絵描きは
設計下手が多い

ではどのように作品に対策をすればいいんですか?
まず「100%は防げない」を理解することが前提で、その上で作品外の施策を固めるんだよ。

更新が難しい作品内でやるより、更新が容易な作品外の施策を盤石にするほうが、柔軟かつ長期的運用コストも抑えられます。
- 閲覧者への「優しさ」とはなんなのか
- 悪意ある利用はどのように発生するか
- 防げないことを織り込み済での設計
- 発生後の対策フローを明確に施策する
詳しい施策一例はこちらに書いているので割愛(かつあい)しますが、作品発信をするならこのぐらいの導線・配慮設計が当たり前なんですね。
「絵描きなら、このぐらいのことを自分で考えず他人に任せてどうする」と感じるんだよね。

仕事できる人や有能な人は、仕組みや施策への根拠と整合性をすりあわせて本質を見ます。
だから一貫性と自省ができ、安定した長期施策・運用を続けられます。数多くの有能な人を見ましたが、「出されるがまま」の人はいなかったですね。
出された内容や情報をうのみするようでは、同じことを繰り返すし他責もするでしょう。

最後に:あなたは作品の「何を」見せたいの?


作品の中身? 権利表記?
透かしのノイズ?

作品にAI学習対策透かしを入れている絵師って多くないですか?
大体は長期的な施策運用を考えず、「AI学習は不愉快で権利侵害」という理由で実装しているよ。

以上、AI学習防止透かしに対する見解と、建設的な設計はどういうものなのかを説明しました。
- アカウント名やURLを書く
- 無断転載・自作発言・AI学習禁止を書く
- AI学習対策ノイズ(透かし)を入れる
まだ作品内にアカウント名やURLを入れて、検索しやすくするのは合理的です。しかし、それに加えて禁止文言も入れて、防止透かしも入れる……
これって閲覧者からすれば、「あなたは作品の何を見せたいの?」になると想像できませんか?
絵描きが長期的スパンや、本質を把握してやっているケースは少ないと想像できます。「AI学習されるのは生理的に嫌だし権利侵害だ!」という気持ちの先行が大半ではないでしょうか。
閲覧者は権利表記や透かしノイズを見に来たのではありません。「作品を見たい」人たちです。

百歩ゆずって透かしを入れる自体は個人の自由だとしても、対策をした気になるのはNGですね。
AI学習禁止透かしが恒久的に続く保証はありません。効果は悪魔の証明に近いからです。
- 「受かりたいから面接対策本を買う」
→ 面接ってテストか機械の流れ作業? - 「ダイエットしたいからやせ薬を買う」
→ 仕組みや長期的リスクは理解してる? - 「動画収益をやりたいから商材を買う」
→ あれは大抵情報弱者ビジネスだよ?
安直に飛びつくさまは上記と同じであり、「手段の目的化」が起きているんですね。
そしてこれをセルシスといった大手企業が「画期的な機能」と大々的に打ち出している部分も、コスト軽視で非常に大きな問題だと感じます。
きっかけを意識する自体はいい。でも根拠や本質を見ないで安易に外部へ飛びつくのはダメ。


「公式機能だから安心して信じる」は思考停止と同じ

そうは言いますが、クリスタにもAI学習防止透かし機能を公式が用意しているのでは?
保証できない旨を公式が発表しています。もし効果がなくなれば全部入れ直す手間が発生しますね。

クリスタが公式でAI学習防止透かし機能を紹介していますが、「ユーザーをぬか喜びさせる機能」でしかなく、重ねますが恒久的保証はありません。
実際にセルシス公式は「あらゆる環境で期待する効果は保証できない」と公言しています。
クリスタは愛用している一方で、この機能宣伝はどうかと思いますし、「公式が用意してくれたから安心」という発想に陥るのは危ない考えです。
もし100枚上げていたら、効果が消えたらまた100枚を上げ直し、修正コストやその間に無断で利用されたら……と考えないのが不思議です。
仮に100枚は人力でどうにかなるとして、1年後や2年後、3年後の蓄積コストはどうなのでしょう?
保守管理から見ると長期運用設計が雑で甘く、時間のランニングコスト(維持費)も膨大になることを考えれば、「ぬか喜び機能」なんですね。
もし仮に一部の反AI絵師の反発を恐れての機能実装で、事実ならセルシス側に同情するかも。

まだ「サンプル透かしパターンを作成する機能」の名目なら、むしろ便利なので理解できます。
しかし長期的運用やリスクの話をセルシス公式は細かく説明せず、現状の調査や「効果は保証できない」にとどめるのは首をかしげますね。
外部の導線・配慮設計を盤石にする

AI学習の透かしが無意味なら、どうやって作品を守るんですか?
導線・配慮設計をすることだよ。それも他人のサルマネではなく、自分で考えて計画すべき。

前提として「100%は防げない」は理解したほうがよく、セキュリティソフトも事前ブロックはあくまで理想で、重要なのは侵入後への施策です。
最初の壁だけゴリゴリに固めたシステムは、突破されるとぜい弱性が一気に露呈します。
それで仮に破られたら「学習はやめてくだい!」と拡散して他責するさまは非生産的ですからね。
そして作品に大量の情報やノイズを入れ、「誰に見せる作品なのか」と本末転倒な状況なります。

詳しい施策一例はこちらに書いているように、重要なのは透かしよりも導線・配慮設計です。
AIの学習行為について、どこまでのボーダーラインをとるかは個人の自由ではあるも、ちゃんと根拠や本質を見ることを心がけてください。
自分の作品を守りたいなら、自分で考えて導線設計やリスク管理をするのは当たり前ですからね。
「AI学習禁止透かしを入れるな」よりも「やりかたと設計が下手すぎる」が、記事で言いたいこと。












