
何かの問題や苦言をするときの言い返しにおいて、「人それぞれ」という言葉で締めてしまうケースは、ネット・SNSでも実生活でもままあります。
一見するとポジティブで正論のように見える言葉ではありますが、安易に使うのはよろしくなく、反感を買われがちです。
- 「なぜ反感を買われるのか」
- 「どう使うべきなのか」
「人それぞれ」を使いがちな人、その言葉を聞いただけで拒否反応が出る人は、この記事をひとつの参考にしていただけると幸いです。
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個人の見解です
ほかの方の意見もご参照ください
「人それぞれ」の定義


「人それぞれ」って何?
「人それぞれ」という言葉の定義・意味は、
「人によってさまざまな異なる性質があるという意味の表現」
「人にはそれぞれ個性があるということ」
人それぞれの類語・言い換え・同義語|weblio
一見すると別に間違った意見ではないですし、正論だと思う言葉です。
多種多様な価値観・ジェンダー(性の問題)を受け入れるグローバルな現代社会においてなら、なおさらそう思いますよね。
「人それぞれ」に不快感・違和感を感じる根本的原因


なぜ嫌われてしまうのか
- 「『人それぞれ』はただの逃げ言葉」
- 「『人それぞれ』は思考停止した綺麗事」
- 「『人それぞれ』って言葉は大嫌い」
- 「『人それぞれ』は未経験だから言える」
一方で「人それぞれ」の言葉に不愉快に思われてしまうことが少なくなく、使う側からすれば、なぜ嫌悪感を感じるのかと不思議に思うかもしれません。
ただ、「人それぞれ」をつかって違和感を感じないケースもあるため、言葉自体の問題ではなく、文脈や相手とのコミュニケーションの問題だと思うんですね。
そのあたりは次から説明します。
コラム:「人それぞれ」の一言で話を止める人たち|ML weekly
「人それぞれ」という言葉が嫌いな人の理由・四字熟語・名言|tap-biz
「人それぞれ」は前提の言葉
「人それぞれ」を使って反感を買う人、買われない人の違いを調べるとわかったのは、「人それぞれ」を前提にしているか、結論に使っているかの差です。
以下の文章を並べてみるとわかりやすく、
- 【前提に使う場合】
「もちろん、人それぞれな部分はあるにしても、傾向がまったくないと否定できません。実際、統計やデータがありますし、考えていかないといけませんよね」 - 【結論に使う場合】
「それは人それぞれでしょ。いろんな人間がいるし、そういう人はどの世代にも昔からいます。個人の問題を全体の問題にすりかえるのはよくありません」
どちらの内容に違和感がなく説得力があって、聞き上手で問題を考えている姿勢が伝わるかと言われれば、前者のほうが軍配に上がるのではないでしょうか。
CHECK!
「人それぞれ」という言葉が逃げの思考停止に見えてしまうのは、結論目的で使っているから。上記の文章を見ればわかるように、「人それぞれ」を前提に使う人は問題分析と根拠を提示し、仮説・妥協案・解決策を考える傾向があります。
裏を返せば、結論目的で「人それぞれ」を使う人は意見を考えることを放棄していて、問題解決能力があまり高くないとも言えますね。
社会人に必須の問題解決能力を鍛える3つの方法|グロービスキャリアノート
背景を考えているのかどうか


相手の意図を
くみ取っているか
- 「なぜ中高年のクレーマーはひどいのか」
→ 「もちろん、いい中高年もいることは知っている」 - 「なぜ障害者は言い訳ばかりするのか」
→ 「必死に頑張る障害者までも否定するつもりはない」 - 「なぜ日本人は議論が下手くそなのか」
→ 「ちゃんと議論ができる日本人もいるのはわかっている」 - 「なぜ男性は論理的・女性は感情的なのか」
→ 「感情的な男性・論理的な女性もいるのは理解している」
疑問・質問を言う人はそもそも、「人それぞれ」の部分は前提として、わかりきった上で聞いています。
もちろん言う側も、クッション言葉を使い、疑問・質問の意図を事前に述べることは必要ですし、中には単に知見が浅く、偏見(へんけん)やバッシング目的で語る人もいることは否定しません。
とはいえ、「それは人それぞれでしょ」と諭そうとする人は、疑問・質問をする人の背景を特に考えず、表面的に判断しているんですね。
意図や真意を理解しているのか
その意図や真意をくみ取らず、
- 「そんなのは人それぞれです」
- 「昔からそういう人はいるでしょ」
- 「たまたまその人が悪いだけ」
- 「性別関係ないし、どの世代にもいる」
- 「もっと世の中を知りなよ」
と、わかりきったことを人生の先輩風を吹かせるように、「人それぞれ」やそれに準ずる言葉を上から目線で言われても、反感しか買われませんよね。
「細かい事情を聞いてから答えるべきだ」と言っているのではなく、
CHECK!
どういった背景があるのか、なにかしらの原因や傾向など、思いやりを持ち、根拠(エビデンス)や仮説を述べる論理的思考が必要。ここを理解しているかしていないかで、意見の質は変わるものです。
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言葉狩りをしたいのではない


言葉ではなく
使いかたが問題
「人それぞれ」の言葉の是非を述べていますけれど、この記事では決して「『人それぞれ』という言葉を絶対に使うな」と、言葉狩りをしたいわけではありません。
問題なのは「人それぞれ」の使いかたであって、嫌われがちなこの言葉も、ちゃんと前提の言葉として活用し、思いやりと建設的な知見を述べれば、反感を買われることはほぼないものです。
「『人それぞれ』という言葉は嫌いだ」という人もまた、言葉の上っ面に惑わされず、「なぜ違和感を感じてしまうのだろうか」と、再考する必要があります。
言葉にとらわれていては、くもった目で見てしまいますからね。
最後に:「人それぞれ」をどう使っているかが問題


あくまでも前提の言葉
「人それぞれ」という言葉を、逃げの思考停止だと思われたり嫌われてしまうのは、結論として使っているからなんですね。
見てきた限り、結論目的で「人それぞれ」を使う人は、問題解決能力が低く、自分の意見をあまり出さない傾向に感じられました。
あくまでも「人それぞれ」という言葉は、意見の前提で使うものであり、結論の目的で使うものではありません。
「『人それぞれ』という言葉が嫌い」という人もまた、その気持ちは十分理解できるとはいえ、あたかも言葉狩りのように、表面的な文言を見て嫌うというのもよろしくありません。
「言葉ではなく本質で考える」は大切です。自分も未熟ではありますが、くもった目で見ないよう、自己研鑽(けんさん)していきたいものです。